第42話 『グレンと言う名のオバさん』3/3
「俺は、ホモじゃねぇ!!」
女装のまま抱き上げられた俺は、普通に怒っていた。
ジンさんも流石に冗談がすぎるんだが?
「待ってりゃ! りぇーじ!! いましゅぐそのホモを殺しゅっ!!」
呂律が回ってないのかなんなのか知らんが意味はまぁ通じる。
「やめ、ておけ竜子。お前はジンに勝てない、その剣をしまうんだ! お前は俺の勇者だ、勝手に死ぬのは許さない!!」
喉が焼けそうなくらいに声が出ない。
それでも大声で竜子に警戒しないといけない。
今の竜子は俺の心を読む余裕はない、何故なら魔力を使いすぎる剣を使っているからだ。
心を読む能力を犠牲にしてでも俺を取り戻そうとしている。
「うるさい! ホモちゅうの誘惑に負けたくせに!!! 勇者であるこの私が魔王の言うことなんて聞くもんか! そいつを殺してお前と自殺する!!」
発想が怖い。
めっっちゃ泣きながら顔真っ赤にして言うなよ。美人が台無しだ。
「落ち着け、今こいつは魅惑の魔術を使って途中で切った。や、やる気はなかったはずだ」
「ああ、コレは礼司に対する教育だ。少し自分が美味しそうに見えることを理解させるためのな? 今代の勇者、竜子よ。本来はお前が教えてやらないといけない事だ」
「な、なにをぉう!!」
ジンさん竜子を煽らないでください。
その子誤解して自分のしてる事が分かってないんです!
「竜子、お前が礼司に抱いている劣情にも劣る後ろ暗い衝動に私は気がついているぞ?」
「な、に?」
ん? 竜子の顔がまともに、まともに歪む。
何か確信をつかれた様な顔だ。
「勘違いをしないでほしいんだがな、私はお前を注意しようとは思わない。むしろ竜子、お前のその礼司に対する感情は間違っていない、勇者として正しいとも言える」
何の話だ?
竜子が変なのは当たり前のことだろう?
2人にだけわかる何かの話をされて俺は、ちょっと嫉妬しそうになる。
竜子の何を知ってると言うんだよ!
「お前が! 私の何を知ってると言うんだ! ジンとやら、お前の当てずっぽうなど聞いていられない!!」
「────竜子、お前は礼司に優しすぎる。その優しさは礼司を殺すぞ?」
「…………っっ!!」
竜子が、竜子が眉間に皺を寄せてジンの言葉に動揺している。
竜子が、俺以外の言葉に!!
ふざけるな。
「ふざけ、るな。竜子を虐めて良いのは俺だ、けだ!」
「ほう? まだ喋れるか? 結構強めに誘惑したはずだが? さすが今代の魔王、やはり若さには勝てぬな」
胸ぐらを掴もうとしたが鉄の様な鎧のため掴めない。
「竜子は優しい勇者なんだよ! 優しくて良いんだ! 俺の我儘を聞いてくれて俺だけの為にしたくもない事をしてくれる…………優しい、女の子なんだ!!」
ぐっ! 魅惑の魔術がまだ残ってるのかジンが切ない顔でこっちを見てる気がする!
このままだと本当にホモになっちまう!!
「分かるか竜子、コレが魔王だ。一切の悪意なく勇者を惑わし歪ませ狂わせる。恋に落とし、夢中にさせる、だが魔王はそれに気がつくことはない」
勝手に話を進めるな。
「お前が礼司を本当に守りたければ、礼司に嫌われてでも教えてやれ、それと、あまり礼司を虐めてやるな」
なんでそんな笑顔なんだよ?
その声は、泣きそうに聞こえた。
気のせいだったかもしれないが、何故か俺はその口元の表情を切なく、恋しく思えてしまった。
まだ俺は魔術で魅了されている様だ。
『泣かないで』と言いそうになる。
なんだろう? この感情は、まるで女みたいだ。
竜子が口を開く。
「ジン、貴様は勇者殺しなのだろう? 何故勇者である私に………勇者をそれ程までに知っているんだ?」
「簡単なお話だよ、私もかつて魔王を欲し、その結果勇者を殺した。故に私は誰よりも勇者を知っている、もちろん若い勇者のお前よりもな」
何を、言ってるんだ?
竜子はエクスカリバーを亜空間に収めた。
悔しそうな表情だったが一応何かを納得したかの様なそんな表情だった。
良かった。矛を収める事ができたんだな竜子、偉いぞ?
◆ ◆ ◆ ◆
「立てるかな? レディ礼司」
ジンに優しくレディーの様に扱われた俺は次第に苛立ちが頂点に達し始めていた。
「馬鹿にしてんのか? そうだよな?」
ぺしん!!
服の皺を伸ばそうとした所で俺はジンの手を払い除けてやった。
「ああ、すまない。似合うドレスを着ている人間を見るとちょっとした事に気を使ってしまうんだ、コレはリナリリの時からの癖でね?」
「知らない女の話など俺の前でするな! 冗談がすぎるぞ! あとお前はもう竜子と会話をするな! あんなにしょんぼりしたアイツは初めて見たぞ? ……あとでその手懐け方を教えろ!」
なんだかそっぽを向いて大人しくしている。
黙っていたらいたで不気味だ。
「手懐けたのではないよ、勇者を転がすのは魔王の役目じゃないか? アレは反論できなくて拗ねてるだけだ」
正論で打ち負かしたってことか? 話を聞かない竜子相手に?
なんだかイジメを嗜める優しいお兄さんみたいだ。この人本当に仲間になってくれないかなー?
「礼司、今の私は心を読んでるぞ?」
うへ! 読むなバカ!
「読む! しかし今は話を進める事に尽力しよう、そこにいる珍客は無視する。先ずはあの赤髪のショタコンおばさん、グレンの話をしよう」
「お、おう」
なんだ? いつもだったらさっきの出来事を蒸し返してバカなことし始めるのに。
「オバさんを力で屈服させる。心を折るのではなく、勝てないと言う事実を教える。それしかオバさんを止める方法はない」
「礼司、私は殺した方が早いと思うんだが? 何故グレンにだけ特別扱いする?」
む、なんか参謀っぽい事し始めたぞ?
「そりゃ特別だからさ、あの人は俺にとって2人目の育ての親みたいなもんだ。部下のハンターオッサン達も気のいい人たちばかりだ。でも意思を曲げられる様な人じゃない、だったら力で屈服させるしか方法が無いんだよ」
「だったら私に命令すれば良いだろ? なんでお前が戦うんだ?」
「それは、ホラお前間違って殺しちゃいそうだしさ?」
「だったらメイド達に命令すれば良い、アイツらの中には制圧作戦に長けた人材もいる。どちらにしろ王であるお前が出張る理由にならん」
「それは…………その」
メイド達はさっきからジンさんのオーラに当てられて全然動けないでいるが、それはジンさんが異次元に強すぎるだけで単純な能力ならおばさんより強いメイドはいっぱいいる。
竜子の目が、今までにないくらいに冷たい。
こちらの意図を理解して見抜いている様だ。
「お前に隠してても無意味だな。そうさ、コレは俺の我儘だ、あの人は、グレンと言う名のオバさんは俺の前に立ちはだかる壁なんだ」
「壁か。育ての親に使う言葉かそれ?」
「理屈じゃねぇんだよ。あの人は俺の目標だ、俺もあの人みたいになりたい」
背後を歩きたくなる様な。
そんな風に思われる魔王になりたいんだ。
「だから力で屈服させるのか? 矛盾しているな」
「当たり前だろ、俺は魔王だぞ? 魔王には魔王のやり方がある」
ただ真似するだけじゃ誰もついてきてくれない。
俺自身の欲を見せなきゃ、ハラワタを見せる覚悟を見せなきゃ誰も魔王を信じてはくれないんだ。
ジンさんが口を開く。
「なるほどな、グレンは私も知っている。あの女はお前にとっての魔王だと言う事か?」
あー、確かにそう言われると納得できるかも。
ジンさんは語彙力というか、なんでも知ってるなー。
「ぬぐぐ!!! 礼司がまたホモの魔の手にかかっている!! お前は私の礼司と会話をするな!!」
「断る。勇者に私と魔王の仲をどうこう言われたくはないな。そして私はホモではない」
ジンさんは語気を強めてハッキリ言った。
女装が板についてきた様です。
次回、第43話 『壁』
☆こんばんわ!オニキです。
面白ければブックマーク、評価加点していただけると励みになります。
よろしくお願いいたします。
※誤字など気になったところがあれば遠慮なく指摘願います。




