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第40話 『頭のイカれた幼馴染み』

 魔王としての威厳と自分のためにメイド達のセクハラを拒否りまくった。

 女のフェロモンでおしくらまんじゅう状態にされて危うくやられそうになったがなんとか自意識を保ってやったゼ!!


「竜子の役立たず」


「ぬ! 私は礼司のためを思ってだな!」


「俺は助けてと言ったんだ!!」


 四方八方をまだメイド達に囲まれている。顎を撫でられたり匂いを嗅がれたりしているが無視だ。

 段々とガキの頃を思い出してきた。


 いや正確にいうと覚えてはいたがあの時に可愛がられてたのは小さかったからだと思っていたんだが、まさか十七になって同じ扱いをされると思ってなかった。


「私達の褒賞は貴方とお母様、つまりその血です。魔法的契約の元貴方の下につく事で私たちは更なる力を得る。私たちはそれを知っています、だからこそずっと貴方の下僕で居させてください」


 その言葉で俺は決心したんだ。


「俺と貴女達に上も下もない、勘違いしないで欲しいんだが戦争が起きた際に実際に戦うのは竜子だけだ、貴女達の役目は情報収集、戦う事は専門じゃない。寧ろ貴女達は死んではいけない、死なないために俺たちの味方で居て欲しい。戦争で勝った後が貴女達の本当の戦いなのだから」


「…………やはり親子なのですね、貴方の正論には優しさが込められている」


「俺は優しくないよ、多分諜報活動は事によっては死ぬより辛い」


 それでも生きて欲しいと願うのはやはり俺が魔族になったからだろう。

 こんな化け物に、彼女達を巻き込んではいけない。


 戦争が起きてオヤジを殺しても、異世界にケリをつけなければならない。

 仇を討つことが終わりじゃない、寧ろまだ何も始まってすら居ない。


 あの男を殺して、やっと始められるんだ。


「…………でも、それでは私以外のメイド達に示しがつきません! そこで、もう一つ、私たちのわがままをお聞きいただきたいっ!!!」


「ええ……急になんだよ」


 語気を荒く、鼻息をまたしても荒くしている事から碌なことじゃないことは明らかだ。


「魔王を名乗られるならば! 王にあるべき姿であるべきです!! そのような厨二心丸出しの黒スーツではなく!! 私たちの用意したドレスをば!!」


「あー確かにこの服この城ができた時のついでに出来た服なんだよな、替えもないから昨日から着っぱなしで…………今ドレスって言わなかった?」


「はい❤︎ 貴方の好きだったメイドの1人『ポイズンピンクパイセン』の考案した『暗黒ドレスで殿下をわからせたる計画』は未だに継続中なのです!!」



 リーダーの黒髪メイドがそういうと複数人のメイド達が背負っていた服の収納棚をドスンと床に置いてズラッと無数の黒ドレスを見せつけた。


「ぬぎゃ!! ポイズンピンク! あの忌々しい名をまた聞くことになるとは!! なんと忌々しい計画を残してくれたものだ!!」


 死んだと聞かされた。

 俺のはじめての憧れ、俺の百合の素晴らしさを教えてくれた大師匠。


 しかし俺を執拗にいじめるので好きになることはなかった。


 ある日諜報活動でヘマをして死んだと聞かされた。

 母さんの時のように泣いた気がする。


 葬式をあげることすら許されず、ただ母さんの墓にその個体番号が刻まれるだけ。


 そんな悲しい存在、だったのに! 思い出と涙を返せ! ふざけんな!


 思えばあの黒ドレスを着て碌な目にあったことはない。

 着て、というより着させられて! 呪いか!

 姉貴は腐って腐女子になるし妹達にも影響するし悪いことしかない!


 つまりぜってぇ着ないぞ!!


「断るっ!!!」


「「「断る事を断る!!! 無理矢理着させます!!」」」


 めっちゃ息合うなお前ら!

 だからといって女装なんて絶対しないけどな。


 暑い。四方のメイド達の距離が近い。


「これは魔王としての義務です!」

 そんな義務があってたまるか!


「この日をこの数年待ち続けてきました!」

 待つな! ってかサイズ合わせも何もしてないから着れないよ!


「ご安心ください!ドレスは全サイズ用意しています! 今日着てもらってサイズの合う黒ドレスを量産します! 毎日新しい黒ドレスを着ましょうねぇ❤︎」

 悪魔的発想!! ダメだ今日という日を許してはいけない!



「竜子助けてっ!!」


「─────私にだって出来ないことくらいある!!」


 女勇者様は目を逸らしてそっぽを向いておられる。


「おいこっち見ろ絶対この状況楽しんでるだろお前!」


「でもまぁ良いんじゃないか? 守礼から聞いているけどすごく似合うんだろう? 私としても好きな人のドレス姿は見てみたいものだ。ホモだしな」


 お前はホモじゃないし、絶対楽しんでる。

 口を押さえて震えが止まらないようだ。


 ええい! やっぱり妹達に! 助けを…………え?


「兄貴一応男だからな、このミニスカ版はダメだ! 少し男っぽい足はお姫様の夢を覚まさせてしまう! 足を隠して女装にのめり込ませないと!」

 おい末妹!


「お兄ちゃんは少し肌が弱いのです! 素材には徹底的に拘り抜いて万が一にも肌荒れなど起こさせてはなりません!!」

 おい四女!


「男に勘違いさせて『男でした〜』という展開の後『それでも一向に構わん!!』という展開は燃えます!! 嗚呼婦女子である私を男に目覚めさせるお兄様は罪作りです!!」

 ちくしょう三女!!


「乱暴にやっちまってください! 間違いが起きても良いです!寧ろそっちの方が萌える!!!」

 次女は予定調和だ。


 母さんがいないだけでこの空間はあの頃の、みんなにおもちゃにされてた頃の再現だ。


「舐めるな!!」


 ドッ!!!


 メイド達を引き剥がす。


 今の俺はあの時のひ弱な俺じゃない。

 異能もあるし、魔族だし、魔王で男として上位の腕力もある。


 学生の中じゃ竜子の次に異能の力があったんだ。


「この俺はお前らが束になっても敵わんぞ? どうやって着せるつもりだ? グハハハ!やはり男である俺に敵うものなし!」



「こうやって着せる」



 その声は幼馴染みのものだ。

 俺より強く俺より気高く、俺より変態な幼馴染みの…………裏切りだ。


 しゅばん!!


 結果が先に、音が後からついてくる。

 音より早い、光の速度で黒い何かが俺に纏わされていく。


 ぽふ、もっふ。


 柔らかい絹の感触、少し肌に当たると冷たい布の感触が心地良い。

 もうわかった、これ確認するまでもなくドレスだ。


 黒いドレス、お母様によく似合いそうな袖通しの良いフカフカのひらひら。

 面白がって俺に着せた事を後悔させてやるくらいしか今の俺にしか出来ん。


 何故ならば。


「犯人はお前だ竜子」


「バレてしまったかー」


「光の速さで動けるお前以外に音速以上の速度で俺を女装させる変態はいない」


 状況証拠を突きつけるまでもなく自白する昔からの幼馴染み。


「嗚呼そうだ、あの黒ドレスのケースの中から今のお前に合うものを吟味し脱衣から着衣まで全て実行した! お前をすっぽんぽんにしたった!」


「わざわざ言うんじゃない!!」


 竜子には勝てない。

 だから、戦うのではなく抵抗する。


 コイツを面白がらせてはいけない。

 昔からそうだが嫌がると逆に嫌がらせを激化させる。

 逆にこっちがイジメをすれば全てを受け入れてしまう。


 だから絶対に思い通りになってはいけない。


 基本俺が嫌な事を好んでやる、つまり変態だ。


「あー、まぁ別に女装もはじめてじゃあないし、メイド達も親戚みたいなもんだしな。今更どうとも思わんさ」


 めっちゃ恥ずい。

 

「むふふ❤︎お前のそう言うところが大好きだよ」


 心が読めるコイツには無駄な抵抗だったようだ。

女の子だってホモりたい!!


次回、第41話 『味方』


☆こんばんわオニキです。

すみません、私用で投稿遅れます!

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よろしくお願いいたします。


※誤字など気になったところがあれば遠慮なく指摘願います。

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