第35話 『魔王城に来たがもう遅い』1/2
ことの顛末を全てジン様に話した。
別に隠す事もないとは思うが転生云々の話は伏せておいた。
ちなみに今私は推しキャラであるジン様に土下座中である。床冷てー。
「ふむ、つまり君はノリで異世界に来て、ノリで海賊をボコボコにして、ノリで魔王城にやってきたのか?」
「はい」
サイコパス!!
私凄くサイコパス!!!
「ごめんなさい」
「ふむ、まぁ殺意がないのは分かっていたからな、ただまさかここまで武器なしで徒手空拳で来るとは思わなかったが、しかもその服」
高校時代の制服できた。
ピンク色の上着に白いラインの入ったデザイン。紺色のスカート。
靴は流石に異世界で買った頑丈な冒険者用のものだけど、今の私には余計な装備は逆に邪魔になるし長居する気は無かったしね。
見た目は女子高生の19歳☆ 現在土下座中!
「ふふ、なるほど似てるな、お前は昔の私に似ている。見境無く力の限りに前に進み問題事を最速で片付けて終わらそうとする。実力がそのわがままに見合ってしまうためさらに狂う」
ん? アレ? 意外と好印象?
少し笑ってらっしゃる?
そういえば原作でもフランクに話しかけた方が好印象だったわね。
「それで? 弟と男である私を結婚させるとはどういう事だ?」
ひぃいいい!! 声が冷たい!! 怒ってるー!!
「わ、私の名前は芦崎守礼!! あちら側の王族の長女です! 先程は血迷った事を言ってしまい、す、す、すみませんでしたぁああああ!!」
前世の年齢を合わせれば30後半の私、床に額を擦り付ける本気の土下座である。
「…………芦崎、シュレー? いや待て、私はお前を知っているぞ? 10年以上前だが確かもっと丸々としてなかったか? 今のお前とは体格が全然違うし覇気もある、別人じゃないか」
「ダイエットして努力しました!! ステータスも努力値マックスの状態からレベルアップしました!!」
記憶が蘇る前まではガチでインキャ女だったからな、ぶちゃけ二次創作でも見かけたことのないモブキャラだ。
「レベルアップ??」
アレ? ジン様レベルの概念を知らない?
いや違うか、よく考えれば現実にレベルなんてあるわけないし原作にもなかった。
今考えると竜子ちゃんの言ってたステータスってのは人外のチカラの総称だったのかしら?
じゃあ私に見えるこのゲームの様なステータス表示とよくわからん数字は?
転生者にだけ許されたチカラ?
なーる…………チートって奴か。
「…………ちーと、そして知らない概念の実現化能力。成る程、芦崎守礼。貴様は転生者だな?」
え??!
どういう超理解? なんでわかったの?
「ポーカーゲームは上手くなさそうだな、顔に『なんでわかったの?』と書いてあるぞ?」
異世界にポーカーなんてあるの? まぁこちら側をよく知っているという牽制なんだろうけど。
「…………なんでわかったのよ?」
謙るのはやめよう、万が一ジン様が私に惚れる様な悪役令嬢的展開になったら嫌だったから、ジン様の嫌いな奴隷的態度をしていたけど、どうやらこの人は物語の流れに乗る様な人じゃないみたいだ。
「そうだな、まず貴様達の様な存在を私達は〈特異点〉と呼ぶ。自分たちの信じる物語の通りに世界を変質させようとする存在。まぁ自然現象のようなものだし特に害もないので無視している。どちらかと言うとアレを信仰している信者共の方が厄介だ、奴らは貴様らを〈道標〉と呼ぶ」
なんだそりゃ? 数千年? 全然心当たりがない。
「私以外にも転生者が?」
んー、まぁ想定内だが、面倒くさい。
異世界チートものの様に私にだけ特別な力があって無双するみたいな話の方が私は楽なのに。
まぁコレは現実なのだから仕方がない、都合よく楽にイケメンたちの薔薇の園を作ることはできんか。
「だがここ数十年、特異点に変化が現れ始めた。それまでは個性なくただの現象の様に存在していたソレは自分たちを〈ちーと〉と呼び暴れ始めたんだ。まぁ歯向かってきた奴は鏖殺したが」
流石公式チートス (※チートスレイヤーの意味)、チートだけじゃ勝てないのも原作再現バッチリか。
ん? これって結構まずい話の流れじゃないか?
私がジン様に暗殺される?
「私は!! …………私はただ弟の為に、このチートを使ったの。ソレ以外では使わない! お願い! 信じて!」
「信じるかどうかはまだなんとも言えんな、まだ出会ったばかりだろ?」
「あと弟と結婚してください!!」
固まった。 ん?
どうやら少し悩んでる様だなぁ、グヘッヘッヘッヘ❤︎ やっぱりホモじゃないか!!
「…………その様子だとどうやら何も知らない様だな。貴様はどれくらいの間こちら側に来ている?」
? えーと確かこちら側も同じ24時間だから、いちにぃ…………
「3ヶ月くらいかしら?」
「貴様は弟を分かっていない、あの子は、礼司は誰かの助けを必要なほど弱くない」
「え?」
アレ? 私礼司の名前言ったっけ?
嗚呼いや監視はしたって言ってたじゃないか、きっとそれだ。
「貴様が3ヶ月間こちら側にいた間、向こう側でも色々あったんだよ。あの子はあちら側で魔王になって今、私と同じ目線で戦っている。世界のために、仲間のために、部下のために、そして自分の矜持のためにこちらも手を抜けばやられてしまう、フフフ」
「バカな、早すぎる」
まだ時間があったはず。
確かに夏の出来事だったけどまだ一年はあったと記憶してる、裏からお姉ちゃんである私が弟を補佐してあげる計画だったのに。
物語の進行上竜子ちゃんの動きで魔族が動く、ヒロインの行動もスイッチが入った様に動く。
その連続で物語が始まる。そんなの原作者でもない限り出来ないわ。
ナニカよくわからない動きがあるのか??
「一年早いのだろう? 他の転生者も言っていたな、だから私も不思議だった。アレは本当に道標とかいう物語の再生なのか? だからあえて私は知っていた物語の私と同じ行動をして判断した、実際に礼司と会い、目で見て、その魂と心を試してみた。私は確信したよ、アレは転生者ではない、私の好きな今を見るこの世界の人間で、私の愛する魔王そのものだ」
なんですって?
なんですって??!
ぬぅわんですってっっっ?????!!!!!!!
愛してる?? あり得ない!!!
ジン様は何かしらの心に傷を負った愛を否定する御方!
あのクソ原作でもヒロインのあの子に魅了されなかった!
竜子ちゃんとも恋仲にならない!
永遠のツン! デレない事で私達腐女子の心を鷲掴みにした御方!!
なんて事だ!! この異世界転生での最大の難関、ジン様を礼司にメロメロにさせるという過程がすっ飛ばされてる!!!??
もう恋仲に??! やったぜ!!
「ぐへへへ❤︎ もしかして礼司とはもうおせっせ…………に、に、肉体関係にあるのですか?」
あ、またまた固まった。
なんかちょっと可愛い♡
「あー、違う。私が愛してると言ったのは『魔王』という立場の事だ、あの子は二代目魔王リナ・リル・リリンによく似ている。そして今代の勇者、そして貴様、そしてあの桃色の髪の少女、魔王に魅了された者たちはあの時代の勇者ともよく似ているよ、私も含めてな」
千年前、ジン様が目と力を奪ったという二代目女勇者に私たちが似ている?
そして、このお方はヒロインの正体にも気がついている。
想像以上に油断できない、さすが勇者殺し、そして魔神とまで言われた御方。
ジンさんは動揺を隠すのに精一杯です。




