火星地球の事情3/3
超ヤマトでの運搬の際、その中には人間だけでなく家畜である牛、豚、鳥、盲導犬、愛玩動物である猫など様々な動物を連れてきていた。
人間に備わった異能が別の形でそれらの動物にも変化を起こさせたのである。
移住の一世代目にその変化はなかったが二世代目から元の生物を模した別個体が生まれ始めそのどれもが体格が異常に大きく、牙を持ち、運動能力が高かった。
ただ魔獣の生まれる可能性は低く1%に満たない、更には魔獣同士では子を成しにくいことが確認できた為大きな問題にならないと思われた。
しかし、問題はその力の方だった。
まず魔獣の個体は例外なく寿命が長いと予想された、これは安定的に家畜を食い栄養状態が豊富だからである。
そして魔獣は全てにツノが生える、元からツノのある生物にも別の魔獣特有のツノが生える事でそれが動物と魔獣の区別とされた。
本来は群れて行動して獲物を狩るスタイルの犬も個体で行動するケースが多く、しかしそれでも生きていける位には強く更には魔獣同士では基本殺し合わない、両者共にタダでは済まないと理解できる程度の知能は残っている。
そして魔獣は異能に近い能力を持っている。
口から炎を吐く、翼での飛行速度を上げてかまいたちを作る、一定時間透明になる、などである。
ただその異能は人間のように個体差はさほどなく、種による違いで違う為ある程度の予想は可能である。
対策は可能で複数人の異能者に兵器を持たせて連携を組めば倒せると思いこれもまたそれほどの問題にならないと、考えられてきた。
しかし大問題が発生する。
〈キメラ〉の登場である。
キメラとは動物の肉体に別の動物の肉体を組み合わせる外法である。
よく別の生き物を交配させる事と混同されがちだがそれは異種交配で別の臓器を取り入れたキメラとは別である。
最初は魔獣の〈ユニーク個体〉と呼ばれ持っている異能、高度な知能を持つ滅多にいないものと思われた。
だがその予想は大きく外れた。
キメラは通常個体と違い他の魔獣を従わせ、交配し爆発的に魔獣を増やすことができるのである。
数年で魔獣の数が増えた事により人間側に緊急で対処する必要が出てきた、その事により猟友会の様なあくまで自己防衛的な組織だった彼らハンターとは別に、王族と大貴族が介入し〈冒険者制度〉が導入された。
世界に12人いる貴族の中の貴族〈大貴族〉彼らが冒険者を管理する〈ギルド〉を創設する。
成果報酬型であり、依頼報酬型であり、強制命令の場合もある。
高ランクの異能者、成功確率の高い冒険者を依頼者側がオークションで決める場合もある。
それほど火星の開発に大貴族たちは必死だった。
もちろんギルドには低ランクの異能者をチームとして動かし死亡率の低下も目的にある。
だがユニーク個体の存在の原因をいち早く知るにはこれしかなかった。
カネ。
これほどわかりやすく人の心を動かすものはない。
統計データがあるわけでもなく、また死因を調べることができた人間など少ない為正確な数字はわからなかったがおそらく人が最も死んだ原因はこのカネによるモノだろう。
異能を持たない者もそのカネ欲しさに自分で鍛造した武器で通常魔獣を狩り、異能者はユニーク個体を狩る事に集中できる形態が自然に出来上がっていったのだ。
そしてその甲斐もあり高ランク冒険者と異能者による複数のユニーク個体の綺麗な死体を回収することができた。
解剖をした所ユニーク個体の脳細胞が人間のモノと同じ事が分かった。
当初この情報は大貴族の中での機密とされた。
彼らは互いに互いを疑ったのだ『誰かがこの生物〈キメラ〉を作った』のだと。
だが更に複数体の解剖を繰り返していくたびどうやらこのキメラは手術で生まれた個体ではないと判明した。
キメラは人間を食った魔獣が変異した個体だった。
異能者の中にはトチって魔獣に殺され食われた奴もいた、その個体が脳細胞を変異させ人間の様な脳を獲得し、キメラとなったのだ。
不幸中の幸いとしてこのキメラは交配によって同じ種を産ませることは出来ず、通常の少し強い魔獣だけしか生まれなかった。
よってユニーク個体の名称はキメラとなりその生態は一般人に公開される事になった。
そうしないと愚かな冒険者が喰われに未開発区にいってキメラを生産する事になるからである。
この事実により〈冒険者ギルド〉の有用性は逆に上がった。
ギルドが管理する事により死ぬ冒険者が減るということはキメラの個体数減少に繋がるからだ。
魔獣、キメラは〈魔石〉と呼ばれるツノを生産する。
ツノを魔石と呼ぶにはその内包するエネルギーが莫大である事から来ている。
魔獣の個体差もあるが特に人間脳を会得したキメラはそのツノが大きく、エネルギーも濃縮している、更にその魔石を異能者が所持する事で異能を格段に向上させることも確認された。
初期はこれが暴動の種になると危惧されたが火薬や核爆弾の脅威に比べればキメラや魔獣を相手にしてまで取るモノではなく、あくまで加工品として売買されたり高ランクの冒険者に装備させるアイテムとしてしか扱われなかった。
まだ、この時は異世界に対する存在も知識もない。
この時はその魔石の価値はそれほど高いモノではなかったのである。
科学兵器や化学兵器が通用しない敵など想定外中の想定外だったのだ。
異世界の存在。
私たちの知ってる常識的法則が当てはまらない世界。
魔法が存在し、魔術を作り、魔族がいる世界。
意図的に互いの壁を作り一千年に一度大戦争を引き起こす思考の異端。
異世界の存在は火星がテラフォーミングされる以前から玲子と盾一の両者は知っており玲子は異世界からの転移者の末裔だった。
故に玲子の子供は火星に行っても母親と大差なく玲子自身も見た目が変わることはなかった。
王族である芦崎一家は盾一以外は魔法の一族、いわゆる魔族であり生まれた場所に左右される事はない。
そして火星にあった一本の剣。魔王の封印された異世界からの剣の存在。
彼ら異世界人は私たちより三千年も前に火星に来て居た、そしてその生物が住めない環境のはずの場所に魔王を封印し隠し場所にしたのだ。
その地を中心に王族領ができた意図、それら全て王族である芦崎家が隠してきた異世界のルールの有用性を知っていたからである。
盾一も知っていたが、彼に乗り移った転生者は盾一の記憶をそれ程読んでおらず、また科学に対する一般的な絶対信仰を持っていた為あまり重要視していなかった。
ただ言われたことをするだけの生活をしていた、推しの玲奈に対してゲスな感情をいだき、妻である玲子のことを『行き遅れのババァ』としてしか認識していない。
ハミィの格好の操り人形となっていた。
物語通りに動けば自分が死ぬ事はない、そういうふうに安易に考えていたのである。
その安易さは礼司の怒りを買う事になるのだがそれはまた別の話。
火星での王城門都市、後の〈学園都市〉の完成、そしてまだ支配されていない頃の盾一の火星独裁宣言、そして大貴族に生まれたとある新生児。
その子供が生まれた最初の年を記念して火星暦0年と制定した。
また火星での新生児は例外なく両親の元の見た目と違う。
そして全員が何かしらの異能を持っていた。
赤子が両親より腕力がある事は珍しくなくこの事によりその若さが激動の時代を作り出す。
キメラの説明でハル……なんとかさんはまだ生まれてないので省きました。
次回、その愚かなる地球にざまぁ!!
☆こんにちわオニキです。
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