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第01話 「異世界転生したけど思い出すパターンだった」

 火星歴20年8月9日


 学園都市上級異能者エリア 『学園都市』

 100億人いる火星の人間の中から異能を持つ人間だけが集められた都心、その異能の中で更に強い異能者をより集めた学生達の学園都市の特別区。


 学園都市の総人口1億人。


 20歳未満の人間は全て異能者というこの世界、異能者でない人間が少数派となりそうな時代である。


 そんな激動のクソみたいな時代に俺は生まれた。



 ギィイイイン!!!!


 頭の中に古い通信機の不協和音の様な気持ち悪い音が響く。


 俺は思い出した。

 俺の前世というべき男の記憶の断片、いじめられていた時の記憶、初恋の記憶とその後悔の全てを。



「ここは? 俺は?」


 更にあの子供、女神を名乗る不思議な少年とこの世界に転生するであろうという記憶。


 その全てが過去の記憶として、実感として、そして前世でこのクソ小説の世界を作っていた事を思い出した。


 今はいつだ?小説で言うどの段階だ?

 嗚呼そうか、コレは。




「思い出した」




 天気雲ひとつない快晴、夏真っ盛り。


 だが俺の目の前の景色は灰色だった。


 俺は目の前で起きた闘いを、()()()()()()()()




「コレはもう女勇者があの剣を引っこ抜いて魔王の封印を解いてしまった後だな、そして今。俺の目には見えない超高速の空中戦が繰り広げられている」




 今日までの記憶と前世の記憶が同期し始める、異世界転生は異世界転生でも、自分が成長してから思い出すと言うパターンだった。


 少し記憶が曖昧だ、自分の前世の方の名前…………ダメだ、全然覚えてない、いじめられてた記憶も誰にとか詳しい事を完全に忘れてる、前世の両親の顔も何もかもこっちの世界の記憶に変えられてるな、全然ダメだ。


 前世が何者なのかがわからない。


 まぁ覚えててもこっちの世界で得することないから良いけど。


 だけどこのクソみたいな世界の、あのクソ小説の中身は覚えてる。


 そうだ今この場はあのクソ小説の転換期だ。


 音速で動く両者の激闘を、魔王と勇者となる少女の戦いを学校の屋上で確認はできなかったが茫然と眺めて何が起きているのか知っている。


 自分の前世がクソ小説家である事。


 ここが俺の作ったクソ小説の世界で。


 この展開が来たって事はもう俺が()()()()()()()()だって事も分かっていた。



 ガキィン! キィイイン、キン、



 特殊な金属同士が音速を超えた速度でぶつかりあう、と言うシーンだが。


 ああ、やっと世界に色がつき始めた。


 見渡す限りの蒼天。


 雲ひとつなく空で魔王と勇者が見えない速度で戦っているなど判りはしない、音速での戦いなのだから。



 思い出してイメージしよう。


 ひとりの勇者。


 片白翼を持つ、空と同じ色の藍色の髪、黄金の瞳、俺が考えた最強の女勇者だ。


 ()()()()()()()()()()()()


 今対峙している魔王でもない。




 そう俺は現在闇堕ち予定の魔王予定。


 そうざまぁサレ役だ。

 なんか長いからざまぁ要因で良いか? いや呼び方なんてどうでも良いか。


 魔王にされ最終的に上空で飛びながら戦ってる勇者に殺される予定の残念イケメンという設定の男キャラだ。


 名前は…………流石に今までの人生をこの世界を生きてきたんだから普通に覚えてる、前世の名前はキッパリ忘れてるけど。



 今世(いま)の名前は芦崎(あしざき)礼司(れいじ)だ。



 眉目秀麗の超嫌味なイケメンで、俺が憎しみの限りに最悪な運命を背負わせたキャラクターだ。


 幼少の頃いじめっ子から女勇者を助けたけど、実は全部この礼司の差し金で、社会人になってその全てを明かして馬鹿にしようとした最低クズサイコパス野郎で、それを明かして恨まれるんだよな?


 ファンやアンチからの別名『即落ち魔王』

 絶対勝てる状態から毎回女勇者に逆転されてあっという間にやられるからだ、そうした方がスカッとするし…………ん?


 あれ? 俺詰みじゃね?

 だってこの小説の大原則。



『勇者には誰も敵わない』



 今のところ俺って勇者(アイツ)の信頼MAXのはずだけど、これが裏切りだとバレたら…………こ、殺される。


 ()()()()()()()()()()()


「やばい、どうしよう!」



 べキィイイン!!


 あ!決着だ!


 そう俺が判断すると見えていなかった二人が学校の上空に現れた。


 ここからじゃ聞こえないが言ってる事はわかる。だって俺が台詞作ったんだもの。


 黒い角と長い金髪の高身長(公式()設定190cm)の少し嫌味っぽい垂れ目のチャラい顔の男が初代魔王、カムイ。


 当たり作家の絵の話だけど。


 彼が勇者を指差しこう言うんだ。


『我が陣営に加われ、そうすれば女を返す』


 あ、女ってのはこの小説のヒロイン的存在で素朴な感じの美人、セミロングの黒髪少女 (俺セミロング好きすぎじゃね?)歌の異能を持つ最近勇者が惚れた転入生。


 本筋の物語なら魔界で長い間寝てしまう病気にかかるんだよな。

 え?女同士じゃんって?それの何が悪い。



 …………誰に説明してるんだ?俺は。



 というか唐突にスキルとか言っちゃったけど世界設定説明する話とこの世界の深掘り話数が100話くらい省略されてるっ!


 えーとこの世界は未来で、火星で、火星に移住したら人間にスキルが出来て、でも実はそれは魔術で、今異世界の魔王が攻めてきたって場面なんだ。



 ………なんか要所かいつまんだら俺の100話って薄いな。

 お婆ちゃん家のカルピスかな?



 びぎゅんっ!!



 二人の動きが止まった。

 空中で静止している。



 アレ確かこの後の展開って…………。


「エクスカリバー……村雨モード」


 女勇者が新しい武器を一瞬で生成する


「あ、アレって確かえーと。」


 日本刀を模した刃渡り1メートル弱の太くて厚みのある剣。

 アレは確か空間を切り裂く絶対切断の2()()()()エクスカリバーだ。


「あ、やばいこの展開は確か………。」


 ヴォン!!


 魔王との距離50メートル程度。

 青髪勇者が何もないところを斬るとその斬撃が通った軌跡を伸ばすように空間の断裂が魔王に襲いかかる。


「あがぁあぁあああっ!!」


 実はこの魔王それほど強くない。

 異世界に2000年居ない間にインフレ進んでて部下の誰よりも弱いって設定だったはずだ。

 最後は惨めに死ぬ、殺すのは勇者の師匠で魔王の実の兄で、えーと。


「…………脳がパンクしそうだ。」


 イケボでそう呟くのは俺だ。

 転生した俺の転生体だ。

 イケボって自分で言ってると嫌味でしかないな。


 って言うかどうしよう。


 俺このままだとあの子に殺される。

 すっげぇクソ野郎な俺が読者のざまぁで殺される。


 誰だこんな理不尽な運命を俺に押し付けたクソ小説家は。




 ってー、俺か。はははは。



「え?俺?」


 待てよ? 今までの理不尽の全ては俺が自分で不幸になったってことか?

 俺のせい、で母様が? 小説家として売れたいというだけの理由で? 



 母様を?


 あり得ない。


「俺が…………母さんを殺した? あ、うあ、あぁあああアアアア!!」



 俺は空にいる二人を無視して叫んだ。


 だってこれは作り物の世界じゃない、現実にそこにある世界で俺は今までこの世界で17年間生きてきた。


 そして仇だと思った父親も、母様の死の原因だと思っていた全てが全て自分で作った茶番だと知った。


 この絶望感は語ることのできない深さだ。例えようがない。


 前に進めない。

 とてもじゃないがノータイムで2度目の人生を楽しめとかそんな気になれない。


 本当に復讐すべきは自分自身だったのだから…………。


「死のう、俺は、俺は!」



 丁度屋上にいる、ここから落ちれば。

 持っている異能でフェンスをぶち破る事くらいはできる。


『強く生きて』


 無理だよ母様、母様を殺した俺を俺が許せるわけがない。




「死ぬな!!!!」





 誰かの声が聞こえた。


 それは血に濡れた刀を持った青髪ロングの少女。

 俺の幼馴染みで初恋の人。


 今にも泣きそうな顔をしたイケメン美少女だった。



 少年は死を受け入れる。

 何故ならもう彼は芦崎礼司だからだ。


 次回、第02話 「どうしよう」



☆こんにちはオニキです。

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※キンキン描写削除しました、要望あれば元に戻します。

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