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第52話『Alice in Wonderland』7/7

(この光、監視者には多分バレた。時間は残されていない)


 この場を監視する存在がいたとして結界の中であるのなら使い魔にだって幻惑を見せられる。

 そう思っていたが竜子の放つ超高度に届く光の刃はその幻惑の正体をバラすきっかけとなりうる。


 タイマンであればゆっくり幻惑の中で竜子を教育することも出来た。

 だがその選択肢は今なくなったのだ。


(短期決戦でわからせるしかない、魔王側の援軍が来るその時までに)


 そんなものは来ない。


 何故ならこれは完全にプライベートな事情で来ているから監視者などいるはずも無い。

 だがそんな予想はサクラは立てない。


 常に最悪の事態を想定し最速で問題を解決させる。



 それが今だ。




「全くおねちゃんの言うことはちゃんと聞いておくものだな」


 竜子は独り言のように何か呟く。

 ここで言うおねえちゃんとはおそらく…………。


(守礼の事か、全くあの女めなんて奴を作り出すのよ、元からあった才能を最大限に発揮できるアドバイスを重ねて、それとなく弟を守らせる様に扇動する、狡猾にして悪魔的戦略家、そして異常なまでの弟愛好家(ブラコン)。あいつこそ本当の女狐。手の届かない範囲にまで弟を護らせる、礼司の『誘惑』の魔術特性を強化させてるのもあの女)



 元は桃源郷(ホモパーティー)を作る為だとはサクラは思いもよらないだろう。


(私は竜子ちゃんと話をしてきた。この子は本質的には臆病な女の子、本当だったらこんな戦いの地にいてはいけない。でもそれを歪ませた奴が2人いる。元凶芦崎守礼と魔王の芦崎礼司の姉弟!! しかも私も魔王に籠絡されている)


 その自覚があっても逃れられない、玲子との繋がりが、(ROAD)の先が逃げる事を許さない。


「やった!! 竜子! 俺は信じてたぞ!」


(嘘つけ、さっきまで絶望してたくせに。嗚呼くっそ可愛いなぁ!!!)


 魔王からは逃げられない。



 グラ、


 足が一瞬ふらつく、それは先程の竜子の空を斬る様な攻撃が原因だ。

 直接的に食らったのではない、幻惑魔法の操作は行使者の精神力を使う。

 格闘ゲームとかで操ってるキャラが大ダメージを食らって声を出して反応してしまうアレだ。

 イメージと精神力の戦いでこれは致命的とまではいかないにしても不利だ。


 礼司には見られなかった


「…………全くなんて馬鹿げた、精神力、なのよ」


 時間が戻る。

 そして進む。


 全力で殺し合う戦いではない。


 相対する利害を潰す、相手を倒すための戦いだ。


 竜子の顔は回復されている為然程傷ついていない。

 礼司のエリアキュアーがまだ続いている。


 受けたダメージの総量は明らかに竜子の方がひどい。

 だが心では負けていない。


 それが最も重要。

 どんなにみっともなくても相手に負けない。


 それに比べて魔法少女は精神的疲弊が勇者を上回っている。

 好きな人を殴り、大好きな弟に邪魔をされ精神が折れそうだ。


(だけど絶対に認めない。そして許さない、弟に手を出した事、その歪んだ根性を叩く、叩いて伸ばして百合に強制してやる)



 竜子に対する執着には理由がある。

 魔法少女は原作者との繋がりはない、しかし原作者以上に原作を知る転生者。女狐である守礼の知識を叩き込まれている。


 だから魔法少女は知っている。

 弟を完全に守るためには竜子ちゃんを百合女に強制し礼司から興味を逸らせる。


 自分に興味を向けてでも弟を、守りたかった。


(もはや手段は問わない。誰でもいいからあてがってやる、フラタニアちゃんとかがいいかな? 嗚呼、それがいい、だから私は…………ははは)


「ぶっ潰す、クソ女め」


 言ってる事の本音と脳内での嘘に齟齬が生じ過ぎている。

 感情を制御する為の精神力がブレっブレだ。


「お? やっとお前の表情を見ることができたな? さっきの攻撃はそれ程驚異的だったか? なぁに心配するな全魔力を使ったが私の心臓は特別性、どんなに使っても魔力を再装填される、つまり全力疾走を何時間でも続けられるのだ、どうだ?恐ろしかろう?」


「ベラベラと自分の力をひけらかすのは死亡フラグって奴で負ける前兆よ?」


「安心しろよ、一切問題ない、私の能力はバレても対抗手段などない。ただ強いってだけだからなぁ? お前はどうなんだか、こんな力を使って魔力が底をつかないのかしら? なにせ私にここまで屈辱を与えてくれたんだからぁ、ねぇ? コラ」


 守礼姉ちゃん直伝のヤンキー言葉でガラの悪い顔で下から覗き込む。


「あー問題ないな。この魔法(ちから)は消費魔力はゼロだ、心配しなくてもこの拳で殴る力は衰えない」


 グッと拳を固めて魔法少女は歩く。

 そのまま地上へ自分を投げ出した。


 シュタッ!


 六階から軽く降り立ち目線を竜子と合わせて睨みながら近づく。


 女2人、いがみ合う。

 その光景に礼司は少し悲しい気持ちとなる。


 何故なら礼司は2人の女が百合展開になる物語を知っている。

 もう2人はそんな物語とは遠い関係となってしまった。


(こんなの間違ってる。間違ってるけど、俺はそれでも、これからも間違え続けるっ!! 俺は、絶対にこの世界の異能者達を幸せにする。異世界との界交を成功させる、そして誰も、誰も殺し殺される心配のない普通の世界を作るんだ!!)


 その為には竜子が異世界に行ってはいけない。


 その為には謎の魔法少女に負けるわけにはいかない。


「りゅぅうこぉぉお!! がんばれぇ!!」


 竜子は答えない。

 幻惑がまだ礼司の声も姿も見えていないからだ。


「はぁい♡ おねえちゃん頑張っちゃう」


 魔法少女が代わりにウィンクして答えた。



「お前じゃねぇ!! パイセンは負けちまえ!!」


 その容赦ないツッコミに魔法少女(パイセン)の精神力が回復の兆しを示す。


(ふっ、魅惑も回復古代魔術も欠点は出力操作が難解で敵すらも回復してしまうこと…………嗚呼そうか、この戦いは壊し合いですらない、肉体はいくら殴ってもクソガキが直してしまう、心もあの声でいくらでも頑張れてしまう、だったらこれは魂の潰し合いになる)


「悲しい事を言ってくれるわね、まぁ、()()()()()()()()覚悟して見てなさい魔王」


「泥、試合?」


 竜子と礼司にとっては殺し合い。

 だが魔法少女にとってコレは。


 意地を通すための、好きだった人を説得するための戦い。



「ふふふ、幻惑なのだろうが私と直接戦闘かぁ?だったらこれだ」


 両刃の西洋剣から初期のエクスカリバー片刃のバスターソードに変化する。

 このバスターソードは超速で質量と形状と重量を変える性質がある。


 そのかわり竜子の血を吸うが礼司の回復魔術のおかげで回復する、だから実質ゼロである。

 礼司と親和性の高い聖人系魔術は魔力消費が低い。


 そう、泥試合になる。


 礼司の魔力が尽きるのが先か女2人のどちらかが倒されるかのどちらかだ。



 今ここに魔王と勇者と魔法少女の三つ巴の潰し合いが始まった。



「がんばれぇえっっ!!」


 既に頑張ってる竜子に魔王は無責任な応援を続ける。



次回、第53話『CROSS×ROAD』


☆こんばんわ、オニキです。


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