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ショートショートの小宇宙

依存症

作者: 駿平堂

 エフ博士はとある装置を開発した。それは、煙草や酒、薬物などへの依存症を治療するための装置だ。見た目は一見すると大きめのブレスレットのようで、実際に手首にはめて使用するものだった。


 内部には注射器と成分分析装置が組み込まれており、定期的に手首に針が挿入され極微量の血液が採取される。そこで採取した血液は分析装置にかけられ、治療の対象となる成分が体内に存在しているかどうかチェックされる。そして一定期間その成分が確認されなければ、体内に快楽物質が注射されるという仕組みだ。


 最初は丸一日間対象の成分が確認されなければ快楽物質が注入され、その次は三日、その次は一週間という風に段々とスパンが長くなっていく。最終的には一カ月ごとに快楽物質が注射されるようになり、その後は医師の判断で装置を取り外すかどうかが決められる。


 この装置が革新的なのは、依存症の治療が患者にとって苦痛なことではなくなったという点だった。治療を続ければ続けるほど快楽が得られるのである。患者のモチベーションも高かった。


 当初は懐疑的な目を向ける者も少なくなかったが、実際にその有効性が確認されると、この装置は依存症治療で広く用いられるようになっていった。そしてそれに伴って、依存症の治療に苦しんだり、失敗したりする人はどんどん少なくなっていった。


 しかしそれとは反対に、この装置が出現してから依存症と診断される患者の数は右肩上がりに増えていた。それも、今まではそんなものに手を出したことの無いという患者がほとんどであった。


 その理由はすぐに明らかになった。新規の患者はみな、この装置から快楽を得るために、わざと依存症になっていたのである。


 この事態を受けて、エフ博士が開発した装置は使用が中止されることになった。結局あとに残されたのは、この装置の依存症になった無数の患者たちだけだった。

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