第6話
飼い殺しとか、怖すぎる。
なんとか逃げ出したい、と切に願う!
「だーかーらー。私から、お詫びに色々と付けさせてもらうわ」
「な、何をつけるっていうの?」
「あなたが、この世界で苦労しないですむようなものよ」
ニコニコと笑うアルム様だけど、なんかこういう場合、神様っていうのは極端に走るっていうのがパターンじゃない?
飼い殺しとは違う意味で怖いんだけど。
「えと、あの、ほどほどにしていただけると、助かるんですが」
「フフフ。それは起きてからのお楽しみね」
「あ、あははは」
こういうの断るに断れないのは、神様だからっていうだけじゃないだろう。
たぶん、自分も不安なのだ。
あの世界の人間が、病人の私のことを『皺皺の老女』と言うくらいだ。
自分がどういう扱いをされるのか、想像したくない。
「ああ、そうそう、忘れる所だったわ」
そう言うとアルム様は立上り、私の隣に立つと片手をヒラリと私に翳した。
すると、キラキラと光るものが降って来て、その美しさに目を瞠る。両手を広げてみたけれど、それはスーッと消えていく。
「これは?」
「せっかく、この世界に来てくれたのだもの、第二の人生、十分に謳歌してもらわなくちゃね」
バチリと大きな目でウィンクすると、今度は私の左手の手首を優しく撫でると、そこには、クリスタルの数珠のようなものが現れた。
「これは?」
「変化のリストよ」
「変化?」
「今の貴方の姿は、これ」
そう言って空中に突然現れた大きな鏡には、私のパジャマをダボッとした感じに着た若い女の子が映っている。
年のころは十二、三歳か。黒髪のショートカットに、少しつり目がちな二重の大きな黒い瞳。
私の子供の頃に、少しだけ似ている気がする。
思わず首を傾げると、鏡の女の子も同じように、首を傾げる。
「……まさか」
鏡の中の女の子の口の動きが、まんま自分のそれと重なって、目が大きく見開いた。
「あいつらに皺皺の老女だなんて、言わせないわよ」
「えぇぇぇぇぇっ!?」
満足げなアルム様の声に被せるように、私の叫び声が白い世界に響きわたる。
「あとは、細々とした加護もつけといたから。詳しいことは、加護の一つの『なびげーしょん』で確認してね? そろそろ起きるわよ。じゃ、頑張って!」
唖然とした私をしり目に、アルム様はチュッと投げキッスをすると、現れた時同様に、シュンッという音共に消えていった。
「えぇぇぇぇ……」
私は眉間を八の字にして、白い空間に一人残され、力ない声をもらすしかなかった。