第40話
街道の旅は順調だ。
天気も崩れることもなく、魔獣も襲って来ない。御者のおじさんや、冒険者のアンディさんとメロディさんも、不思議がっている。
三人とは休憩のたびに、少しずつ話をするようになって、冒険者の二人とは名前を教えてもらうくらいには親しくなった。二人の乗っている馬も何気にカワイイ。
聞いてみたところ、どうもこの時期のこの街道沿いは、天気が崩れやすく、低ランクながら魔獣もよく現れるのだという。それなのに護衛の冒険者二人って大丈夫なんだろうか、と思ったけど、今までもこの二人で護衛をやってきてたらしい。恋人同士ではないそうだ。残念。
まぁ、天気はわからないけど、低ランクの魔獣はたぶん私のせいだろう。襲われないにこしたことはないから、それはそれでいいんだと思う。警戒している冒険者にしてみれば肩透かしかもしれないけど。
領都を出て三日目、山の麓にある町にやってきた。
領都に比べればだいぶ小さいが、そこそこ活気がある。なぜなのかメロディさんに聞いてみると、この山には小規模ながらダンジョンが存在するらしい。そのおかげもあってか、小さいながらも冒険者ギルドもあるそうだ。
ファンタジーといえば『ダンジョン』が王道よねぇ! と勝手に一人でワクワクしてしまうのは、しょうがないと思う。残念ながら、逃亡中の私がそんなところに行けるわけもなく、そもそも、そんな力もない。いや、あるにはあるけど、実践が伴ってないから、話だけで満足するしかない。
ここのダンジョンは階層はそれほど深くはないそうだ。そんな中、魔物からドロップして得られるのは素材や魔石だけではなく、山だけに色々な鉱石などが多く得られるらしい。アンディさんたちも偶にお小遣い稼ぎをしに来るそうだ。
「それでは、出発は明朝六時の鐘ですんで。遅れないようにお願いします」
御者のおじさんの言葉に、乗客たちはそれぞれに解散していく。私は私でさっそく宿屋を探した。
さすがダンジョンが近くにある町らしく、宿屋がいくつかあった。前回の経験もあって、その中でも一番こじんまりした感じの宿屋が目についた。ドアのそばの花壇には様々な色合いの花が植わっていて、手がかけられてる、そんな感じがした。こういうとこに目がいく主人だったら、期待してもいいかな?
「ん?」
ドアに手を伸ばそうとした時、誰かに見られている感じがして、周囲を見回した。しかし、普通に活気のある通りであることに変わりはない。悪意のあるものだったら、スキルで感知するはずだし。
「気のせい?」
首を傾げながらも、私はドアを開けて宿屋の中へと入った。






