第3話
神様の言葉に、呆然とする。
「あいつらってば、せっかく、私が手に入れることが決まってた魂を、横取りしやがったのよっ!」
……ムキーッという叫びを、生で初めて見たかもしれない。
顔を真っ赤にして怒ってる神様が説明してくれるには。
神様は、正確には創造神という神様らしい。ご尊名をアルム様というそうである。
創造神は、いくつもの世界がある中、その世界ごとに一人だけ存在しているそうな。
で。このアルム様が管理する世界、所謂、私から見れば異世界は、私の生きていた地球のある世界からは、いくつもの世界を挟んで、大分離れたところにあるのだそう。
通常、輪廻転生はその世界内で完結するものなのだという。
稀に、他の世界から転生させることがあるらしい。
それだって、二つ、三つ隣くらいの距離で、文明レベルがそれほど違いがないらしい。
少し進んでいるところから転生した者がいたら、緩やかな進化が起こるらしい。
ただ、地球のある世界は、アルム様の世界よりも大分上位にあるらしく、人気があって抽選になるそうな。
そりゃそうだよね。一気に新しい技術や知識を持った転生者がいれば、その世界もグッと便利になったりしそうだもの。
ちょっとだけ、神様たちの間での抽選会とか想像してしまって、口元が緩んでしまう。
あみだくじなのかな、それとも、くじ引き? ガラポンとかだったら笑える。
そして今回、その抽選で地球のある世界からの転生者の機会を得たアルム様。
とっても、とーっても楽しみにしてたらしい。
まぁ、その対象が私だったというのだけど、こんなおばちゃんで、少し申し訳ない気がする。
期待してたからこそ、早めにマーキングをしていたそうなのだ。
マーキングって……旗でも立ててたんだろうか。
というか、死ぬ前から抽選してたんだー、と思ったら、ちょっと遠い目になってしまう。
死ぬこと前提って、あんなに縋りついてた夫を思い出すと、なんともいえない気持ちになった。
で、アルム様、せっかく転生者を譲っていただくんで、感謝も兼ねて地球の神様にご挨拶をしていたそうだ。
そうね、神様間でもコミュニケーションは大事なんでしょうね。
ちょっと話が盛り上がっちゃってる間に、タイミングよく、というか悪くというか、アルム様の世界の人間たちによって、『聖女召喚の儀』が行われたというのだ。
普通、人間たちの召喚というのは、その世界に近い位置の世界から人間が呼ばれるそうだ。
それなのに、創造神であるアルム様が私をマーキングしてたものだから、その世界に引っ張られやすくなってたのだろう。
すんごい距離があるにもかかわらず、容易に召喚出来てしまったというのだ。
……何てこったい。