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おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第27章 おばちゃん、行商人の手伝いをする

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第353話

 部屋を出て階段を降りたところで、ちょうど出先から戻ってきたヤコフくんが顔を青ざめさせて待ち構えていた。


「ミーシャ様っ!」

「あー、トマスさんから聞いてるよね? 悪いけど、ここまでで失礼するわ」

「いや、しかし、もう少ししたら日が落ちますし」

「大丈夫よ、イザーク兄様もいるし」

「でも」


 なんとか言い募って留まらせたいヤコフくん。気持ちはわからないでもない。

 私たちが離れるということは、今回の跡継ぎになるための研修での評価はマイナスになるだろう。彼の問題かと言われれば、どちらかといえば雇ったノドルドン商会の問題だと思うけど。それでも、冒険者たちを御せなかった、という時点で、上に立つ者としては駄目という評価がされそうだ。


「トマス殿、一応、これで足りるか」


 イザーク兄様がお金の入っている袋を渡そうとしたが、トマスさんは受け取ろうとしない。むしろ、商会側が慰謝料を渡さねばならないくらいだ、と固辞されてしまった。


「本当によいのですか?」


 ヤコフくん、泣きそうな顔。


「よいも何も、さすがにあの人達と一緒にはいたくないもの」

「……そう、ですよね……あ、あの精霊様は……」

「うふふ?」


 笑って誤魔化したら、余計に顔が青くなった……いや、青を通り越して真っ白だ。

 トマスさん、上手い事、落ち着かせてやってくれ。


 私たちは宿屋の入口のところで二人に見送られると、そのまま町の雑踏の中に紛れこみ、今日入ってきた門とは逆にある方の門へと進んでいく。


『美佐江、なんかついてきてる』


 しばらくしてから、ミニチュアの水の精霊王様が不機嫌そうに耳元で囁く。


「あー、もしかして猫野郎?」


 私たちの後をつけそうなのって、あいつしか思い浮かばない。

 比較的大柄な人が多いせいか、私は完全に埋没するけど、イザーク兄様はそれなりに目立つ。それに獣人は嗅覚も鋭いから、匂いでもついてきそうだと思った。


『そう』

「まったく……無知って怖いねぇ。精霊に喧嘩売ってるのに気付かないんだもの」

『美佐江、消してもいい?』

「いやいやいや、あれでもヤコフくんたちの護衛くらいはできるんでしょ? 兄様もいなくなっちゃったら、これからが大変でしょ?」


 そう。私がいなくなったら、魔物との遭遇率はかなり上がるはずだ。どれだけ違うかは、想像がつかないけど。


「だいたい、忙しくなれば、私らのことなんか構ってなんかいられないでしょ」

「ミーシャ」

「何? ……うおっ!?」


 不意に兄様に呼ばれてフッと見上げようとしたら、サッと抱き上げられた。

 他の荷物もあるのに、片手で子供抱きするとか! 私、そんなにチビじゃないっ……はず。


「日が落ちる前に出てしまおう」

「……ごめん。私の足の速度じゃ遅いね」

「すまんな……アレにも追いつかれる」


 イザーク兄様も気付いてたか。

 一気に早足になったら、門まではあっという間。どんだけ兄様の足が長いのか。

 なんか悔しい。


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2022年4月8日
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おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

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おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

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