表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第26章 おばちゃん、エルフの常識に困惑する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

368/420

第326話

 船旅は思った以上に快適だった。

 海は荒れないし、魔物も来ない。海賊の姿も見えない。その上、めんどくさい乗客もいなかった、と、くれば、もう、ただの豪華クルーズの旅だ。

 あちらでは一度も船旅、それも豪華客船になんか乗ったこともなかったのに、こっちに来てからは二回目だ。贅沢~。


 しかし、港町についてみれば、なんというか、なかなかな荒れ具合。

 なんか昭和なイメージというか、船乗りたちだけでなく、その住民も荒っぽい人が多そう。波止場で裕次郎さんが、ロープを繋げるヤツに片足のせていそうだわ。裕次郎世代ではないけどね。


 ……というか、なぜ、エルフの国に来たのに、肝心のエルフがいないのかっ!


 通りを歩いているのは、人族か獣人族。時々、ちょっと身体の小さいおっさんが歩いているのは……あれは、ドワーフか。ずいぶんと大きなマサカリ担いでる。エルフを見に来たのに、なぜだ。

 そんな街中を抜けてしばらく行くと、少しずつ街の様子も変わっていく。貴族街と言えそうな、立派な建物が増えてくる。

 そして目の前にしている宿は、貴族街の入口にあった。


「ミーシャ、今日はこの宿に泊まろうか」


 イザーク兄様が私の隣に立ちながら、にこやかにそう宣う。

 うん、結局、私の同行者はイザーク兄様だけになった。終始、紳士的だったイザーク兄様(何かあったら犯罪よ、犯罪。私が自力で抹殺してるわ)に、私の方も二人で行動するのに抵抗がなくなってしまった。

 最初は双子も行きたがってはいたものの、やはりダンジョンの魅力には敵わなかった模様。攻略したら追いかける! なんて、張り切っていたけれど、二人だけじゃ無理だと思うんだが。そこは、上手いこと、パーティメンバーでも集めて挑戦するのかもしれない。


「……イザーク兄様、こんな立派な宿、お金は大丈夫なんですか」


 思わず、あんぐりと口をあげて見上げる建物。

 逃亡中などは、それなりにいい宿に泊まらせていただいたが、双子たちとの旅では、そこまでお金をかけた宿には泊まっていなかった。久々のキラキラした豪華な宿に、目が点になる。


「すまんな、もう少し安い宿もあるにはあるんだが……」


 兄様が口ごもるのも、仕方がないかもしれない。通りすがりに見えた町の様子や宿のあんな荒っぽいところじゃ、落ち着いて休めそうもないし、むしろ危なそう。いろんな意味で、私よりも、兄様が。

 最悪、転移で森の家に行ってしまえばいい、とは言うものの、毎回それでは、旅の楽しみもあったものではない。


「いえ、予算が大丈夫ならいいんです」


 一応、今はイザーク兄様が金庫番なのだ。私もちゃんと自分のお金は持ってるけど、兄様曰く、兄としても、男としても、そこは譲れないらしい。おばちゃんは気にしないんだが、そこは年の功で、折れることにしている。

 木製の重そうなドアを開けると、広くて明るいフロアに、カウンターには、この大陸に来て初めてのエルフの姿があった。むしろ、他のスタッフはどこにいる?


「いらっしゃいませ」


 格好だけは執事っぽい感じだけど、客商売だというのに、無表情に出迎えたエルフ。いいのか、それで。

 エルフは最初、イザーク兄様に目を向けてから、次に私の方へと目を向ける。一瞬、何かに驚いたのか、目に動揺を浮かべたような気がするのは、気のせいだろうか?


「泊まりたいんだが、部屋は空いているか」

「……お二人ですか……一部屋でしたら、ご用意がございます」

「ミーシャ、いいかな」

「……うん、いいよ」


 色々思うところはあるが、何よりも、金銭的な心配を優先した私は、大人だと思う。

 イザーク兄様の嬉しそうな顔は、見なかったことにする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】
2022年4月8日
モンスターコミックスfより発売


おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

【書籍化】
ツギクルブックスより発売中

おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=791464659&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ