表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
閑話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

363/420

人を呪わば ーコークシス第三夫人の場合ー (2)

 ハロイ教の信者は、まだ実験段階なんですがね、と断りをいれながら、親指の爪ほどの大きさの茶色い種を、いくつか掌に載せる。


「この『魔物の種子』は、パッと見ただけでは、ただの木の実にしか見えません。味もそう悪くありません。ケーキやクッキーなどの菓子類にしてしまえば、簡単に口にすることができるでしょう。ただ食べるだけでは、特に問題はありません。少し、渋みがあるくらいでしょうか」


 そう言って、掌に置いていた種子を、目の前でカリッとかじって見せる。その渋みに、少しだけ顔をしかめる信者。第三夫人は、その様子に目を瞠る。


「肝心なのは、お茶の方です」


 信者が差し出したのは、金属製の銀色の茶筒のような入れ物。蓋の部分には細かな魔法陣のようなものが描かれている。その意味するものは、第三夫人にはわからない。


「この中に入っているのが、『魔物の葉』です」


 蓋を開けて中身を見ると、黒くチリチリになっている葉と思われる物がたくさん入っている。


「これを一つまみ、お茶の葉の中に混ぜて、一緒に淹れるのです。毒見で飲んでも、単独で飲むだけでは何もおきません。種子と茶葉、両方が揃わないと駄目なんです。簡単でしょう?」

「こんなことで、相手を呪うことができるのかえ?」

「ええ。ただし、混ぜる前、だいたい三か月くらいでしょうか。この葉に呪いをこめるために、こちらの小さな筒に入れ替えた物を肌身離さず、持っていないとなりません」


 信者は『魔物の葉』が入っていた物とは別の、掌サイズの物を差し出す。こちらの蓋にも同じ魔法陣が描かれている。

 第三夫人はその言葉に頷き、小さな茶筒を手にしげしげと眺めた。こんな物で本当に、相手を呪い殺すことができるなら、こんなに簡単なことはない、と思った。


「実例は三例ほど。今までの所、呪いと判明はされず、奇病としか言われておりません」


 その奇病とは、皮膚がどんどん古木のように枯れ果てていくものだとか。どんな薬をもってしても治すことが出来なかったのと、そのあまりにも醜い最期のため、発症した家の者たちは、そろって口を噤んでいるという。

 ……呪いとわからないのであれば、これを使わない手はない。


「……ふむ。面白い。これらを分けてもらう対価に、その方は何を望む?」

「はっ。では、この国でのハロイ教の布教と、その後見に夫人のお名前を」

「フフフ、なるほど……あい、わかった」


 互いに笑みを浮かべて、その場で契約をすると、第三夫人は種子と小さな茶筒を受け取った。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】
2022年4月8日
モンスターコミックスfより発売


おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

【書籍化】
ツギクルブックスより発売中

おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=791464659&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ