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おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第24章 おばちゃん、獣人の国へ行く

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第283話

 食事の手を止めた剣呑な雰囲気のイスタくんをよそに、双子たちはにこやかに答える。


「俺たちのすぐ上の兄だよ」

「私たちと違って、一応、騎士やってるけど」

「……ふーん」


 イスタくんの、その胡乱気な目、やめなさい。せっかく可愛いのに。


「うん? イザーク、イザーク……あぁ、お前らの兄貴って、前に帝国の武術大会に出てた……」

「そうそう」

「おじさん、有名な人なの?」

「そうだな。例えるなら……うちの、ガウス騎士隊長か」

「ガウス!?」


 彼らの国での有名人なのだろう。イスタくんの目の輝きが一気に変わった。しかも、『うちの』発言。双子の方に目を向けると、苦笑いが返ってきた。


「ヘリウス、ミーシャに言ってもいいのか」

「あ? いいもなにも、お前らの義妹なんだろ?」

「そうなんだが……お前、大雑把すぎないか?」

「そうか?」

「場所柄も考えろよ」

「別に気にするほどのことじゃねぇんだがなぁ……あ~、わかったよ」


 パメラ姉様がチラッとイスタくんへと目を向けたのに気付いたヘリウスが、自分の頭をガシガシっと掻く。そして、イスタくんの持っている小さなバッグの中を漁りだした。

 何を探しているのかと思ったら、大きさでいえばイスタくんの掌サイズくらいの、少し変わった形をした置物を取り出した。あれは犬? 狼? それが行儀よく座っている形だろうか。その背中に、黒っぽい艶のある石が嵌め込まれている。

 ヘリウスはその置物を掌にのせると、何やら、ブツブツと聞きなれない言葉を呟く。すると、黒っぽい石が一瞬だけ青く光った。


「これでいいだろ」


 そう言ってテーブルの真ん中に置物を置いた。私はキョロキョロ周囲を見てみるけど、あれで何が変わったのか、さっぱりわからない。

 そんな私に、イスタくんがこっそり教えてくれた。あれは、遮音の魔道具なのだそうだ。周りの音は聞こえるけど、このテーブルの範囲内くらいの会話は、聞こえないのだとか。私の結界の遮音みたいなものか。

 範囲はこのテーブルを囲む程度らしい。結界ではないから、同席したら、当然会話は聞こえてしまう。本来、密室での使用だったら便利なものなのだろうが、この中途半端な状況は、どうなのだ。


「本当、あんた、それでも王族なの?」


 今度はパメラ姉様が呆れたようにため息をついた。

 いや、姉様こそ、その王族に向かって言う言葉じゃないよね? 

 こっちが気にして聞かなかったのが馬鹿らしく感じるくらい、あっさりと彼らの身分を知ることが出来た。

 ウルトガ王国。それが彼らの国の名前だそうだ。その国の現国王の八番目の王子がヘリウスで、イスタくんは、なんとヘリウスの兄の王太子、それの三番目の子供なんだとか。めちゃくちゃ身分が高かった。

 なんで、そんな王子様たちが、こんなところにいるのかと思ったら、イスタくんは、成人の儀式前に世間を見に行くようにと、ヘリウスに託されたのだそうだ。あのボンボンと同じようなことなのだろう。しかしイスタくんの場合、ヘリウスの荷物持ちとしてなので、扱いが全然違う。護衛もなし。それでも、拗ねることなく、ちゃんとやってるんだから、偉いものだ。


「父上が、視野を広げてこい、と送り出してくれたんだ」

「俺に押し付けてきた最低なヤツだがな」

「……おじさん、ごめんなさい」


 へにょんとしたイスタくん。当然、私たちから白い目を向けられるヘリウス。


「いや、お、お前のせいじゃないからな」

「ヘリウスって、一言多いよね」

「王族のくせに」

「……お前ら、全然、王族と思ってないだろ」


 双子の容赦ない言葉に、イスタくんそっくりに、へにょんとしてみせたヘリウス。つい笑ってしまったのは、仕方がないと思う。

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【コミカライズ】
2022年4月8日
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おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

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おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

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