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おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第23章 おばちゃん、ダンジョンに挑戦する

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第279話

 子供の元気な返事の声に、固まる私たち。そして、現れたのは、身体中が泥だらけになっている、ヘリウスの子供と言われてもいいくらい、そっくりの獣人の子供。たぶん、私と同じくらいの背丈かもしれない。

 ……ちょっと、めちゃくちゃ可愛いんだけど!


「おしっ、よく生き残ったなっ」

「おじさんっ! 怖かった! 怖かったよぉ! うぉーん!」


 ヘリウスの顔を見たとたん、涙をボロボロ零し始めたチビちゃん。汚れたまんま、ヘリウスに抱きつく。さっき、せっかく『クリーン』をかけたのにっ!

 私は感動の再会の場面なのに、イラっとしながら、もう一度『クリーン』をかける。

 それにしても、あの激しい戦闘の最中、なんで、この子が生き残れたのか。すごい不思議だ。


「なんで……生きてる……」


 その言葉は、私の後ろにいたボンボンの口から発せられた。


「あいつは、『蟲集め』とともにいたのだぞ……なんで……」


 まさに幽霊でも見たかのように青ざめた顔で、呆然としながら呟くボンボンに、マイナス五十度くらいありそうな視線で睨みつけるヘリウス。チビちゃんも、怯えたようにヘリウスの背後に隠れる。


「ふんっ、こいつはポーターとしてついて来ていたが、万が一何があってもいいように、『護りの腕輪』をつけさせていたんだ。例え、クィーン・マンティスに潰されそうになったとしても、死なないさ」


 チビちゃんを抱き上げるヘリウス。まるで父親だな。


「なっ! 『護りの腕輪』だとっ!」


 ボンボンが唖然としている。その『護りの腕輪』っていうのは、有名なのか?

 彼のリアクション的にも高価なモノなのだろう。それにしたって、あの魔物にも潰されないとか、どんな強固な護りなの。ていうか、それって、このチビちゃん、実は身分のある人だったりするんじゃ、と思い至る私。

 ソロリと双子の方に目を向ける。案の定、苦笑い。これは、何か知っている、という顔だ。そして、ヘリウスに目を向けるけど、ここでは言うつもりはないのだろう。獣人二人は、ボンボンを置いて、さっさとその場から離れていく。


「……あー、こいつ、どうすんのよ」


 私は双子に目を向けるけど、二人とも、そっくりの格好で肩を竦めて見せるだけ。


「生き残った護衛にでも任せたら?」

「四十階の階段も、あと少しだろうし」


 二人ともが、すでに投げやり。いや、まぁ、そうなんだけど。別に、私たちの依頼主でもなんでもないしね。

 大きな溜息をつくと、私は双子の側へと向かう。ボンボンは、私に声をかける気力もないのか、呆然としたままだが、生き残った護衛らしき人が、足を引きずりながらやってきた。


「よかったら、これ、使ってください」


 私はさりげなく肩掛けバッグ(と見せかけてアイテムボックス)から、失敗作の初級ポーションを渡す。偶に、初級といいながら、効き目が良すぎるモノが出来てしまうことがある。それを持ち歩いてたので、ちょうどいい。これは在庫処分だ。


「す、すまん。助かる」


 体液まみれの中に聞こえてきた声が、思いの外、若かったので、気の毒になっておまけで『クリーン』もかけてあげた。


「あ、ありがとう!」


 泣きそうな顔で言われたお礼の言葉に、片手をあげて返事を返す。あんな主人に仕えなきゃいけない彼を気の毒に思いつつ、私は双子の元に駆け寄る。


「随分とお優しい」

「余らせてるヤツだしね」

「まぁ、私たちには、ミーシャの魔法があるしね」

「それよりも、あの子って」


 私の訝し気な顔に、双子は困ったような顔になる。そして、ニコラス兄様が、私の耳元で教えてくれた。


「たぶん、あの子、獣人の国の王子様……だと思う」


 ……なんですと!


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【コミカライズ】
2022年4月8日
モンスターコミックスfより発売


おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

【書籍化】
ツギクルブックスより発売中

おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

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