表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第22章 おばちゃん、海賊と遭遇する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

291/420

第256話

 所詮、よその夫婦の話だし、私たちがどうこう言う話でもないんだが、苦労している様子は、伝わってくる。私自身はあまり夫婦喧嘩みたいなのをしたことはなかったけれど、自分の親の、特に母親のヒステリーが酷かったのを思い出し、ご主人が亡き父と重なって、気の毒になった。

 私はこっそり、ニコラス兄様に耳打ちする。


『ちょっと森の家に行って、ヒステリーを抑える薬、取ってくる』


 びっくりした顔になるニコラス兄様。ゆっくりと振り向いて、声に出さずに『そんなのあるの?』と聞いてきた。私は小さく頷いた。

 正直、これが正解、というのがあるわけではないけれど、鎮静剤的なものならある。いわゆる更年期の苛々を抑えるヤツだ。街の薬屋で、地味に売れていた。それだけ苦労している人がいたってことだ。

 この世界、女性のそういうのには、かなり鈍感な感じで、専用の薬も特にない。さすがに私たちがこの旅行で使うとは思ってもいなかったので、当然、持ち歩いてなどいない。

 奥さんは、まだ更年期になるような年齢ではなさそうだったけど、若年性更年期障害なんていうのもあるくらいだ。薬がどのくらい効くかはわからないけれど、せめて、この航海の間だけでも、大人しくしてもらえるくらいに、効いてくれればいいんだが。


「あー、ドルントさん」

「は、はい、すみません、こんな愚痴をお聞かせしてしまって……」

「いえいえ……あのですね、よろしければ、うちの専属の薬師が、そのぉ、奥方のイライラを抑えるような薬を作ったことがありまして……」

「は? 薬師、ですか?」

「ええ、もしよろしければ、それをお分けしますが……ちょっと仕舞い込んでしまったので、探すのにお時間をいただければ」

「そ、そのような薬などございますので……?」


 訝し気に効くご主人に、ニコラス兄様も苦笑い。

 仕方がないので、兄様の後ろから少し前に出る。


「あの、女性の血の道のお薬みたいなものです」


 私の抑えた声に、ご主人は目を瞠る。


「ああ、なるほど」


 苦々しそうな顔になったところを見ると、生理中の奥さんの様子が、よっぽど酷いのかもしれない、と想像してしまう。




 ご主人が深々と頭を下げて部屋を出て行った後、双子が大きくため息をつく。私も久々に気を使って疲れた。


「ミーシャ、ところで森の家に戻るのはいいけど、この船室には戻って来られるの?」


 パメラ姉様が心配そうに聞いてくる。

 実は私の転移、移動中の場所には戻って来れない、という難点があったのだ。一度、馬車に乗って移動中に忘れ物を取りに行って戻ろうとしたら、森の中の一本道に取り残されるという目にあった。その後、ちゃんと止まった馬車の中で合流出来たけど。


「私の転移では無理でも、精霊王様の力でだったら大丈夫。ね?」

『ああ、任せろ』


 私の声に反応して現れたのは、ミニチュアタイプの風の精霊王様。泳げる、泳げないに関わらず、さすがに、海の上に落とされるのだけは避けたいもの。下手したら、大きな魚に食べられてしまう可能性だってある。


「すぐに戻るね」

「気を付けるんだよ」

「はーい」


 私は二人に手を振ってから、すぐに森の家へと転移した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】
2022年4月8日
モンスターコミックスfより発売


おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

【書籍化】
ツギクルブックスより発売中

おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=791464659&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ