第222話
直接王子たちの元へ飛べるかと思ったら、宮殿内の一室と思われるドアの前に出てしまったようだ。
「あれ?」
『おそらく、この部屋に結界が張られているのでしょう』
水の精霊王様の言葉に、なるほど、と思う。自分が結界を張ることはあっても、他の人が張ることがあるのを考えてもいなかった。反省、反省。単に入れないってだけで済んでよかったわ。いきなり飛んで激突、なんてことになったらいただけない。
「王子様たちが張ってるのかしら」
『いや、帝国の者たちだろう。イザークや美佐江との接触を絶つためではないか』
「うわ~、姑息~」
『ふん、この程度のもの、我には泡のようなものだ』
火の精霊王様、相変わらず、怒りのボルテージ高め。他の精霊王様たちも、お怒りモード。おかげで、私のほうは逆に冷静になってきてる。
どうするのかと思ったら、火の精霊王様は掌をドアに向けてギュッと握りしめた途端、バチンッと何かが割れる音がした。本当に泡が弾けたみたい。そんな単純なものなの!?
『ほらな』
ちょっと得意気な火の精霊王様に、他の精霊王様たちは呆れ顔。
『そんなの、我々だって出来たぞ』
『そうよ、そうよ』
『ふん、風のは両手がふさがっていて出来まいよ』
「まぁまぁまぁ。火の精霊王様、ありがとうございます」
うん、子供みたいだね。それでも私はニコリと笑いながら感謝の言葉を告げてから、ドアをノックする。ドア越しに、誰かが駆け寄る音が聞こえる。
「やっと開いた!」
勢いよくドアが開かれ、そう叫んだ男性は、レヴィエスタから共に来た近衛騎士の一人だ。そんなに放置されてたのか、と心配になる。
「皆様、ご無事ですか?」
「え!? ミーシャ殿? なぜここに……あ! イザーク殿! どうしたんですか!」
彼の視線に入ってなかったのか、私が声をかけると驚かれる。確かに、私がここに来るとは想像もしてなかっただろう。
そして、私の背後にいた風の精霊王様に抱えられたイザーク兄様に気付いたのだろう。近衛騎士が驚きの声をあげた。その声に反応してか、ドアに続々と護衛の方々が現れた。近衛騎士の中でも、副団長を務めるくらいに強い兄様が、抱きかかえられているのだ。部下たちが心配になる気持ちはわかる。しかし、兄様よりも細身の風の精霊王様に抱えられた姿を見られたのは、後々、からかわれるネタになりそう。
「すみません! 兄様のことが気になるのはわかりますが、中に入れていただいても?」
「ああ、すまん。しかし、そちらの方々は……」
「……私の護衛……みたいなものです」
苦笑いしながらそう答えると、精霊王様たちは満更でもない顔になった。え、護衛でいいの?
騎士たちは、あまりにも美しい精霊王様たちに、どぎまぎしてるようだけれど、私の言葉にしたがってすぐに中に入れてくれた。






