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おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第3章 おばちゃん、王都脱出を試みる

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第19話

 声をかけてきたのは、大きい通りからではなく、脇道の奥の方からで、現れたのは黒っぽいフード付きのローブを着たおばあちゃん。私よりも少し背が大きいせいか、手元のランタンの灯りで、若干赤くなった顔を見ることができた。うん、ちょっと怖い。


「まったく、人がほろ酔いのいい気分で帰ってきてみれば……ほれ、さっさとおどき」

「あ、す、すみません」


 酔っ払いっぽいせいか、不機嫌さが増してる気がする。これ以上、絡まれるのもマズイ。私はその場から離れようとしたのだけど。


「ん? なんだね、子供かい。駄目だろ、こんな時間にうろついちゃ」


 そう言っておばあさんは私の腕を掴んだ。その手が意外に力強くで、ビクともしない。


「あんたの家はどこだい」

「あ、いや……」

「なに、家出かい」

「いえ、そういう訳じゃ」

「じゃあ、孤児かい。 まったく、お上は何をやってるんだか……こうして子供がうろついてるんだってのに。王都にだって孤児院は必要だってのがわかってないんだ……ほら、うちにお入り」


 酔っ払いのせいなのか、ブツブツと文句を言いながら、まったく人の話を聞こうとしない。というか、子供とはいえ(実際には子供でもないけど)安易に部屋に上がらせていいのか、おばあちゃん!

 鍵を開けて店の中に入っていくおばあちゃん。店からは微かに枯れた植物のような匂いが漂ってきた。


「ライト」


 おばあちゃんは魔法で灯りをともすと、私をかなり強引に家に引っ張り込んだ。その勢いで、ローブがはだけて中が見えてしまう。


「あれま、そんな短い髪をしてるのに、あんた男の子じゃないのかい。それに、その格好! なんだい、なんだい、お前さん、どこかから逃げてきたのかい」


 おばあさんは私の格好を見て驚いた。まぁ、確かに、粗末な貫頭衣に素足の子供がいれば、そう判断されたって仕方がない。しかし、髪が短いだけで男の子と間違われるとは。もしかして、この世界って、女性は長い髪が必須なの?


「一気に酔いが覚めちまったよ。ほれクリーン」


 キラキラと何かが私の周りを舞っている。人から自分に魔法をかけてもらうのは初めてだから、新鮮だ。周囲を見回してみると、乾燥した植物がぶら下がっていたり、液体の入った小さな瓶やら手のひらサイズの壺が並べられている。

 んー、これはいわゆる薬局みたいなところなんだろうか。


「ところで、あんた、飯は食ったのかい」

「えと…」



 干し肉を夕飯と言っていいのか迷ってると、おばあちゃんは勝手に解釈したのか、店の奥へと入っていく。


「ほれ、入っておいで」


 このまま、逃げてしまってもよかったかもしれない。だけど、この世界にきてまともに会話をした人だっただけに、私は迷ってしまった。気を使ってもらえたことが、ちょっとだけ、嬉しかったから。

 私は溜息をつくと、そのまま、店の奥へと入っていった。

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【コミカライズ】
2022年4月8日
モンスターコミックスfより発売


おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

【書籍化】
ツギクルブックスより発売中

おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

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