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おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第3章 おばちゃん、王都脱出を試みる

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第17話

 案の定、食料倉庫の入り口にはドアはなかった。

 私にしてみれば、ありがたいことだけど、食べ物を扱うのに、これでいいんだろうか。他人事だけど、ちょっと心配になる。

 入ってみると、いろんな食料があちこちの棚にのっている。どれを持ち出すべきか悩ましかったけど、結局、目についた大きな麻袋を手当たり次第にアイテムボックスに突っ込んでいく。


「……あら、空っぽになっちゃったわ」


 勢いでやったとはいえ、けっこう、私も怒っていたみたい。でも、戻すつもりはない。

 城の人間がどうなろうと、知ったこっちゃないのだ。死にかけとはいえ、勝手に召喚とかしたんだから、ちょっとくらい困ればいい、と思うわけだ。

 とりあえず、これだけ食料があれば、しばらくはなんとかなるかな。


 今のうちにと、ナビゲーションの画面で地図を確認する。

 大きな広間に人が集まっている。そのせいなのか、通路を動く人の数がまばらだ。行くなら、今がいいかもしれない。食糧倉庫から顔を出し、人の姿がないのを確認すると、私は足早に通路を歩きだす。


 この時間でも使用人らしき人たち以外にも、お貴族様っぽい人や、地味な文官っぽい人たちがうろついている。何回か人とすれ違うことはあっても、誰も私のことに気付かない。隠蔽スキルすごい。

 いくつかの角を曲がった時、タイミングがいいことに、くたびれた感じのおじさんが一人、出口に向かって歩いているのが目に入った。

 私はこっそりと、その人の後ろをついていく。このままついていけば、何事もなく出ていけそうじゃない? ついでに街の中までいければ御の字だ。

 そう思ったけど、それは甘かったらしい。


「メディアス卿」


 少しばかり偉そうな声が、目の前のおじさんに向けられた模様。

 黒いローブを着た、なんだか不健康そうな若い男性だ。その男性が、おじさんの背後……まさに私のほうに訝し気な視線を向けてきた。

 ま、まさか、見えてるの?!

 私は、ピキンッと固まったまま、動けない。ここまで問題なかったのに。

 額に冷や汗が浮かぶ。


「あっ、ああ、マートル様……」


 上司か何かなんだろうか、おじさんが、そのマートルとかいう男性にへこへこと頭を下げている。

 その肝心のマートルの視線は、すぐに私からはずれて、おじさんへと向かい、話し始める。それからは一度も私の方へは目が向かない。


 ……だ、大丈夫ってことかな。

 ホッとした私は、ここにいても仕方がないので、おじさんを追い越して出口へと歩き出す。

 見えてない、見えてない。そう、自分に言い聞かせながら。

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おばちゃん聖女コミックス

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おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

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