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おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
閑話

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文官は手紙を書いて、墓穴を掘る

 ショーン・ワクメイは苛々していた。

 こんなド田舎で、学生時代、短期間とはいえ留学していた先で出会った、当時から勇猛果敢と有名なリンドベル辺境伯、その次男と再会するとは思ってもいなかったからだ。


 そもそも、留学とは言っても、欠員が出ての補欠扱い。同行した他の貴族の子息や令嬢たちからも、どこか蔑んだ目でみられ、居心地悪い思いをしながら行ったのは、せっかくの機会だからと、両親に強引に行かされたからだった。

 そこで出会ったのは、自国の英雄の息子。煌びやかな存在に、嫉妬を覚えるのも馬鹿馬鹿しいくらいだった。

 しかし、戻ってみれば、共に留学していた連中は、自分自身のことは顧みず、ショーンを引き合いに貶めるばかり。気が付けば、リンドベルに対して逆恨みのような状態になってしまっていたのは、仕方がないかもしれない。


 ショーンは自室に戻ると、長めの手紙を書く準備を始める。

 もともと、この辺境の砦に派遣されたのは、宰相中心の法衣貴族たちと軍務大臣中心の軍閥貴族という、王城内での派閥争いの一つの駒としてであった。エンロイド辺境伯の奥方の遠縁というのも、まったくの嘘、という訳ではないものの、かなり血縁関係は遠いもの。しかし、それを上手く使って、この砦に入りこんだ。


 ハリー・エンロイド辺境伯は、明確な立場を表してはいないものの、職務柄、軍閥派と目され、その動向が注視されている。そのエンロイド伯のところへ、元辺境伯、エドワルド・リンドベルが家族総出でやってきたのだ。特に、近衛騎士団の副団長であるイザークまで伴って、となると、何やらきな臭いと、ショーンは勝手に想像した。同行していた子供が、どういった存在なのか、やたらと可愛がられてはいたものの、最後まで部下たちには何の説明もされなかった。


「どんな些細なことでも、報告するように言われているしな」


 ぼそりと呟きながら、筆を進め、書き上げた手紙を小さく小さく折り畳む。報告先は学生時代の先輩にあたる、宰相補佐。彼のおかげで、今の自分があると、常々思っていた。


「俺なんかでは無理であっても、あの方だったら、上手く使うに違いない」


 ショーンの掌に、伝達の青い鳥が浮かび上がり、小さく折り畳んだ手紙をくわえると、ゆっくりと飛び立ち、スーッと消えていった。


              * * * * *


 何もない空間から、突然青い鳥が現れると、羽ばたきもせずにパタリと床に落ちた。ショーンが飛ばしたはずの青い鳥だ。

 ピクリとも動かない鳥を手にしたのは、ハリー・エンロイド辺境伯。

 ブツブツと何かを唱えると、青い鳥は白い煙となり、小さく折り畳まれた手紙が現れた。エンロイド伯は手紙を広げて目を通すと、渋い顔をしながら、手紙を握りしめる。


「まさか、ワクメイがな……」


 ミーシャの言葉に、裏切りの可能性を考えたエンロイド伯は、念のためにと伝達の魔法陣を遮断するように、部下の魔術師たちに密かに指示していたのだ。まさか、こんなにすぐに動くとは予想はしていなかった。

 こう見えてエンロイド伯、王都にいる奥方から貴族の情報を逐一報告を受けているおかげで、なかなかの情報通であったりする。(ちなみに、ショーンが奥方の遠縁というのも、裏をとっている)

 ショーンが連絡をとろうとした宰相補佐の母親は、シャトルワース王国の辺境伯の一人、マートル辺境伯の姪にあたり、イニエスタ・マートルの従姉でもあった。

 ハリー自身はイニエスタのことまでは知らなかったが、イザークが聖女らしき存在とともにシャトルワースを出国したことは、あちらの王都で話題になっていないとも限らない、と考えた。


「下手に伝わったら、シャトルワース側にも筒抜けになる可能性があるからな」


 エンロイド伯は厳しい顔つきになると、衛兵にショーン・ワクメイを連れてくるように申しつけた。情報漏洩をしたこの手紙を証拠に、クビを言い渡すために。

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