表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おばちゃん(?)聖女、我が道を行く~聖女として召喚されたけど、お城にはとどまりません~  作者: 実川えむ
第10章 おばちゃん、実家(仮)に向かう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/420

第90話

 ハリー様は深刻な顔をしてソファから立上ると、私の前まで来て、片膝をついた。まるで騎士が、忠誠を誓う姿のようだわ。目の前にいるのはドワーフだけど。


「聖女ミーシャ様、知らなかったこととはいえ、先程は誠に失礼いたしました。遠路はるばる、レヴィエスタ王国にお越しいただき、感謝の言葉もございません」

「あ、あの、お気になさらず……どうぞ、お立ちになってください」

「なんとお優しいお言葉を! 不肖、ハリー・エンロイド、感激で涙が溢れそうですぞ!」


 その言葉通り、いかついドワーフ顔のハリー様の大きな目には、涙が浮かんでる。

 な、なんで、そこまで、と思ったら。


「いわゆる『聖女』と呼ばれる方は、普通は市井になんて現れることなんてないんだよ。だいたいが教会か、どこかの王家に囲われてしまうものなのだ」

「ああ、なんとなくわかる気が」


 イザーク様の言葉に、実際、囚われて寝たきり状態だった場所自体、メイドさんと、なんか偉そうな男の人しか来なかったことを思い出す。


「確か、どこの国も百年単位で聖女召喚など行ったことなどなかったはずだがな。そもそも、召喚自体が必要なかろうに」

「ああ、今の時代、魔物自体も落ち着いている。極端な発生事例の報告もほとんどない」


 ハリー様が立上って席に戻りながら、鼻息荒く憤っている。その言葉に、エドワルド様も、苦々しく言葉にする。その言葉に、私の魂が、無駄な召喚に使われたっていう怒りに似た思いがヒシヒシと伝わってくる。

 ……うん、初孫のはずだったんだもんね。


 この砦周辺は魔の森の外縁からも少しだけ離れている。それでも、時折、魔物が現れることがあるのだとか。それでも大した回数ではなく、最近は、むしろ野生動物のほうが多いのだとか。うん、平和だよね。


「あ、でも、オムダルでオークの大規模集落が出来てましたよね」

「あれは、どう考えても、ギルドの怠慢だろ」

「そ、そうなんですね……」


 バッサリ切り捨てるエドワルド様に、パメラ様もうんうんと頷いている。


「こまめに間引いていれば、あそこまでの規模になるはずがないの……あれ以上放置してたら、スタンピードが起こっていたかもしれないけど」

「まぁ、おかげで旨いオーク肉を山ほど手に入れられたけどね」


 ニコラス様の少し気の抜けた発言で、場の空気が少し和む。


「とにかく、まずは無事に国に戻れたことは喜ばしいことだ。後は、できるだけ早く、ヘリオルドとジーナの元に、ミーシャを連れて帰るだけだ」

「おお、そうだな……であれば、うちのワイバーンたちを使ってくれ」

「いいのか」

「ああ、最近、あまり乗ってやれなくてな。訓練も兼ねて、乗ってやってくれんか」

「おじさま、そっちの方が本音でしょう?」


 パメラ様の揶揄うような声に、ガハハと笑うハリー様。他の皆も、優しい笑みを浮かべている。

 うん、なんか、いいね、こういう雰囲気。


 それなのに、外からは、正直、嫌~な気配が漂ってる。

 というか、自動で立上った地図に、真っ赤な点が一つ、ドアの前を落ち着きなくウロウロ動いてるのが見えて、逆に不愉快だわ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】
2022年4月8日
モンスターコミックスfより発売


おばちゃん聖女コミックス

ミキマサハル先生

【書籍化】
ツギクルブックスより発売中

おばちゃん聖女

イラストレーター:那流様

小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=791464659&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ