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迷宮日誌   作者: ケット・C・ニャンガード
迷宮日誌 〜招集編〜
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冒険の準備①

 数々の"喚ばれし者"を観察するうちに、装備を整える前に、まず自分の適性を知る必要があることに気がついた。


 体格の良い者は、やはり鉄製の防具や、長剣、ハンマーなどその筋力や重量を活かした装備をして、いかにも戦士風であったし、杖や本を持つもの(長身で耳長の人間も見かけた、あれがエルフって奴なんだろう。)は緩やかなローブやマントを身に纏っているものが多かった。魔術に集中する為か、もしくは重量のある装備を避けることで迷宮内での体力の温存を図るのか。亜人種は比較的軽装な印象だ。顔も全ては覆わず(口先が尖っていたりするからオーダーメイドでもないとなかなかないのかもしれない。)、ハチガネやサレットを頭部につけ、胸当てや肩当てなどで要所要所の守りを固めている。持ち前の爪や牙でもそこそこ戦えるということなのだろうか。俊敏性を損なわない為の工夫といったところか。


既に徒党を組んで歩いている一団もあれば、単独で行動している者も多い。これまでに何人くらい召喚されているのかは答えを得られなかったが、行き交う人それぞれ全員の顔と名前を一致させることができるような規模ではないことは大変良くわかった。


 剣道や柔道のひとつでも体得しておくべきだったか。いやそもそもこれから挑もうとしているものは護身とかそういう次元の問題じゃないしな…。


体格は普通だ。175cm程度で体重は65~70kgを行ったりきたり。30越えて油断すると贅肉がつくし、運動しようものなら疲れが遅れてじわじわやってくるようになった。


なぜ?なぜなんだ?なぜ"喚ばれた"のが33の時なんだよ?


20代ならきっともっと俺は凄かったのに…!となんの根拠もない言い訳を、すこし城下町を回るだけで脚が疲れはじめている自分に呟くのだった。



 かつての迷宮探索は、6人で構成される冒険者が組むのがセオリーであった。これは今でも変わらないらしい。


 迷宮には初代国王の魔術師討伐隊が苦労の末に建設に成功したエレベーターがある。その一部は今でも可動が確認できているらしい。その定員数が大体6名なのだ。その他にも転移の仕掛けや分かれ道、奇襲、罠、あらゆる境遇にそれぞれが高い対応力を持って行動しなければならない。そうして今まで導き出され守り続けられてきたのが6という数字なのだ。(独りで挑む狂人や、捕獲や救出を目的としてあえて5名以下で挑む一団ももちろんある。)


 さらにその冒険者達には「職業」と呼ばれる役割分担のような概念が存在した。武具の扱いに長け、一団の前衛を担う「戦士」、一団を奇跡によって補助したり、治療を行う「僧侶」、炎などで敵を一掃するだけでなく、中には転移呪文などによって一団の冒険を大きく支えたと言われる「魔術師」、仕掛けや罠をいちはやく察知し一団の危機を回避する「盗賊」といった具合である。


 職業に関しては現在は概念は薄れ、今では"喚ばれし者"同士の自己紹介というか、得意分野、特徴を要約した呼称といった程度で、戦士だからどーだとか、魔術師だからあーだとか、そういう制約はないのだそうだ。


概念は失われたものの、各訓練所は"喚ばれし者"による復興とともに再開。戦士としての技を磨いたり、魔術師としての知識や教養を学んだりはできるらしい。


実は凄い剣技が使えたり(ほら、日本人だし。侍の血を引いているかもしれないし。)、莫大な魔力を内に秘めたりしていることはないだろうか。


そんな淡い期待を抱きながら、訓練所のある区画へと足を運んでみることにした。

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