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迷宮日誌   作者: ケット・C・ニャンガード
迷宮日誌 〜招集編〜
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迷宮日誌

まず、日誌に近い手記は何度かこれまでに記してきたが、改めて私が時折つけているこの日誌に名前をつけたいと思った。


この日誌が日本語を読み解けるあなたの手に渡ることがあるとすれば、私はそのとき、どのような結末を迎えているのだろうか。


さて、日誌のタイトルについてだが私の世界で流行っていた異世界なんちゃらというタイトルでは現実味にやや欠けるし、ダンジョンという単語も響きがしっくり来なかったので、シンプルに迷宮日誌と名付けることにする。


この異世界での共通言語で記せば、より多くの者が読めるかもしれないが、そもそも日誌というのは自分の為に書いている。誇張や台詞っぽく、物語っぽく記したい気分の時もあるので、万一それを他の仲間に盗み見されようものなら良好と思えている関係性が崩壊しかねないという懸念もある。一冊の個人的な日誌が攻略の助けになるのは良しとしても、全滅を招くことだけは許されない。


この世界に来て一年あまりは過ぎただろうか。


未だに理不尽さのようなものは拭えぬが、抗おうという気もしなくなってきた。


いや、抗うといえば抗っているのかもしれない。


試行錯誤と、日々の挑戦と探索は欠かしたことがないのだから。


ある日よくわけもわからないうちにこの世界へやってきて、その世界が過去に自分がプレイしたRPGの世界観にそっくりだったとしたら。


夢でも観ているのではと思ったが、頬をつねっても痛いうえに聴覚も嗅覚も妙ではなく、はっきりとしている。


自身の体温、空腹、眠気、全ての生理的作用も普段のそれと変わらない。


そのような事がもしもあなたの身にも起こったのなら、私の書いているこの日誌にも、幾分か意味がでてくるのかもしれない。まぁ今後、この日誌を目にする者が私以外に果たしているのかどうか。


それに、正直なところ意味をもたそうと思ってやっているわけでもない。


元の世界で使っていた日本語が恋しくて、あるいは滅多にない機会だからと当時私の世界で流行っていた異世界転生系のライトノベルやアニメなどをよっぽど凌駕するネタになるんじゃないかなんて思いワクワクしていた瞬間もあったといえばあったが、すぐにこれが醒めるものではないとわかりその期待感や高揚はすっかりなくなってしまった。


幾度か血みどろの死闘を経て、決死の選択を幾度と迫られるうちに、楽観的な感性はすっかり失われてしまったようだ。


私がこれを記すのは、冒険と探索の合間のひとときを生きている実感を噛み締めながら振り替える、大切な趣味の時間のひとつであることも確かだが、探求の内容を書き留めて整理することであの忌々しい迷宮を攻略する糸口が見つかるかもしれないからである。





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