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第三十五話 聖王候補の庇護者

 五日後、モモンたちがヒイロを迎えに来た。

「ヒイロ。一緒にホムホムに来るっちゃ。サルモン王が待っているっちゃ」

「いいぜ。ビリビリ族のドドンの木を伐りたいから、直にお願いしよう」


 パオネッタと一緒に開拓の村を出る。

 道中でモモンに尋ねる。

「サルモン王は何で俺を呼んだんだ」


「サルモン王はヒイロの庇護者になるっちゃ」

「別に守って要らないぞ。俺はそんなに弱くないし」


 モモンは知的な顔で説明する。

「ヒイロは事態をよくわかっていないっちゃ。サルモン王が聖王候補の庇護者になれば我がボルベル族は、この大陸を()べる大義を得るっちゃ」


(ボルベル族って、プライドが高いのか、権力欲が強いのか、知らん。だが、好きだな大陸の支配者とか覇権とか)


 パオネッタが興味を示した顔で訊く。

「そんなに聖王って凄いの?」


 モモンは厳しい顔で決め付ける。

「当たり前だっちゃ。聖王に従わない部族は滅んで当然っちゃ」

「でも、俺は紋章を持つだけで、聖王ではないぞ」


「だから、今の内に庇護下に入れておくっちゃ。サルモン王の庇護の元でヒイロが聖王になれば、千年に亘る戦争も終結っちゃ」

(先行投資だな。サルモンは聖王の威光の元で、全ての部族を従えたいわけか)


 パオネッタが笑顔で不吉な内容を訊く。

「それで、どうすればヒイロは聖王になれるの? まさか、死ねとは命じたりしないでしょう」


 モモンは厳粛な態度で語る。

「古い言い伝えがあるっちゃ。紋章を持つ者が五十と七つの試練を終える時、聖地に聖王が降臨するっちゃ」


(聖王の紋章は、五十一個目の実績解除で得られた。人間の与えられる実績が百八個だから、聖王とは、全ての実績を解除した人間だな。百八個目の実績解除で貰える称号が聖王かもしれない)

「そうか。なら、俺は聖王になるかもしれないな。わからないけど」


 モモンは真摯な態度で頼んだ。

是非(ぜひ)、なってほしいちゃ。それで、大陸を平定してほしいっちゃ」


「でも、わからないぜ。俺は聖王ではない。たまたま出現した聖王候補だ。他に聖王候補が出て、別の部族の庇護下に入れば競争になる」


 モモンは聡明な顔で頷く。

「ヒイロの指摘は当っているっちゃ。だからこそ、聖王候補が出現してボルベル族の庇護下にいる事実を、早くに訴える必要があるっちゃよ」


「そこらへんは政治判断だから任せる。でも、俺の邪魔はしないでくれよ」

「無論だっちゃ。ヒイロは聖王も目指してくれれば、それでいいっちゃ」


 ホムホムに着くと沿道に人の列ができていた。

 立派な髭を生やし、赤い豪華な服を着たボルベル族が街の入口で待っていた。ボルベル族は王を象徴する赤い王笏を持っていた。


 モモンがヒイロに耳打ちする。

「サルモン王っちゃ。できれば、ヒイロから挨拶してほしいっちゃ」


(王様が自らお出迎えか、中々の高待遇だな)

 ヒイロから(ひざまず)いて挨拶をした。

「初めまして、サルモン王。聖王候補のヒイロです」


 ヒイロが名乗ると、群衆からどよめきが上がった。

 サルモン王は前に進んでヒイロの手を取る。


「立たれよ、聖王候補っちゃ。我がボルベル族はヒイロ殿が聖王に就任するまで、力をお貸しする所存っちゃ。共にこの大陸に繁栄させましょうっちゃ」


 ラッパが鳴ると、民衆が祝福の歓声を上げた。

 ヒイロとパオネッタは、そのあとサルモン王の先導で王宮までの道を歩く。


 サルモン王の態度は、とても誇らしげだった。

 ヒイロは笑顔を心掛けて手を振る。だが、心の中では冷静だった。


(現状ではサルモン王の政権は安定していない。聖王の庇護者の大義はサルモンが喉から手が出るほど欲しかった実績なり、称号なんだろうな)


 ヒイロの予想通りにホムホムに着いてから、三日は要人の顔合わせが続く。

 そんなヒイロの後ろには、いつもサルモン王がいた。


 さすがに、四日目には辟易(へきえき)してきた。

 夜にヒイロとパオネッタ、モモンだけになった時に相談する。

「モモン。そろそろ、ドドンの木を伐りに行きたいんだが、いいか?」


 モモンは控えめな態度で進言した。

「ドドンの木の件っちゃね。罪人に木を伐らせて、ヒイロは見ているだけじゃ駄目っちゃか」


「おいおい、それじゃあ、俺が木を伐った事実にならないだろう」

(実績の解除にもならんな)


 モモンは弱った顔で打ち明けた。

「できれば、ヒイロにはドドンの木を伐ってほしくないっちゃ」


 パオネッタが知的な顔で意見を述べる

「呪いの話? 紋章があれば関係ないって聞いたけど」


「呪いの件だけじゃないっちゃ。聖王候補がビリビリ族の御神木を伐ったとあれば、ビリビリ族の思いは複雑っちゃ」


 パオネッタの理解は早かった。

「ボルベル族のビリビリ統治に影響すると読んでいるのね?」

「ボルベル族がビリビリ族を支配している以上、ありそうな話だな」


 モモンは真面目な顔をして認めた。

「そうだっちゃ。大陸の正統な支配者がビリビリ族の護ってきた木を伐る。ビリビリ族にしたら、じゃあ何で木を護ってきた、となるっちゃ」


「下手をすればボルベル族が嘘を()いていると勘ぐられ、暴動が起きるか」

(正直に言えばビリビリ族の信仰はどうでもいい。だけど、ありのままを打ち明けると、揉めるな)


「なぜ、ビリビリ族が木を護ってきたか。それは、俺に伐られるためだよ。ビリビリ族は俺に試練を課すために、木を護ってきたんだよ」


モモンは懐疑的な顔を浮かべる。

「本当にっちゃか?」


「真実はわからん。だが、俺の考えだと説明が付く。だから、俺が聖王になるためには俺が木を伐らなければならない」


 モモンは首を傾げてやんわりと質問する。

「以前に、金のためって言ってなかったちゃか?」


「もちろん、金のためもある。でも、金のためだけではなかった。運命だったんだよ」

 パオネッタも口添えする。

「ここは、ヒイロを信じてもらえないかしら」


 モモンは渋々の態度で納得した。

「わかったちゃ試練が絡むとあれば、やってもらわないと困るっちゃ。ヒイロには聖王になってもらうっちゃ」


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