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第三十三話 戦後交渉

 昼過ぎに村に戻った。今まで一度として閉じられた過去がない村の門が閉じられていた。

 兵士の姿もあったので、村では厳戒態勢が敷かれていた。


 ヒイロは素知らぬ顔で見張り台の上にいる兵士に告げる。

「おーい、何があったんだ? 門を開けてくれー」


 兵士は警戒しながらも、門を開けて中に入れてくれた。

 白々しい態度で兵士に尋ねる。


「物々しいな。いったい何があったんだ?」

「ボルベル族だよ。ボルベル族が挙兵した、との情報が入ってきた。もしかしたら、ここが戦場になるかもしれない、とのトウリオ総督代行の判断だ」


「まさか、軍事演習とかだろう」

 兵士は浮かない顔で相槌を打つ。

「だと、いいんだがな」


 村の中は、今まさに攻めてこんとするボルベル族と戦うための準備で、おおわらわだった。

 ヒイロとパオネッタはそんな慌ただしく騒ぐ村の中を、余裕の態度で帰宅して休む。


 一夜が明けると、ボルベル族が軍を引いたのが知れた。村に落ち着いた空気が流れた。ただ、村からはボルベル族の商人が消えていた。


 昼過ぎにミランダ村長宅から、小間使いがやってくる。

「ミランダ村長からお話があるそうです。ヒイロさんとパオネッタさんは、昼過ぎに家に来てください」


 それとなく探りを入れる。

「何の用だろうな? 見当が付かないや」


 小間使いが困った顔で尋ねる。

「おそらく、今回のボルベル族の挙兵の件だと思います」

「そんなの相談されてもなあ、俺にできる仕事なんて何もないんだけどな」


 ヒイロはミランダ村長の家に行く前に、実績お婆さんの家に行く。

 実績お婆さんはヒイロを家に招き入れる。


 実績お婆さんは誰も話を聞いていないかをしっかり確認してから話し出す。

「見事に実績を三つ解除したようだね」

「秘密裏に上手く事を運びました」


「よし、なら、さっさと称号と褒賞を授与しよう」

 実績お婆さんが呪文を唱えると、頭が仄かに熱くなる。


「開戦の口実を得た者は、相手を威圧する時に有利に立てる称号だね。村の防衛者は指揮下にある人間の防御力を上げる称号だね。称号を装備していくかい?」


「称号は今のままでいいです。それより、王を討ちし者の実績が解除された時に授与される王の紋章って、何ですか?」


「そう急ぐんじゃないよ。王の紋章は持つ者に冒険を引き起こす印だね。印は掌に現れる。この紋章が新大陸での、さらなる冒険を呼び込むね」

「いいですね。ますます、実績解除が捗りそうだ。さっそく授与してください」


 実績お婆さんが呪文を唱えると、左の掌が熱くなった。

 左の掌を見ると、掌に王冠が描かれた黒い紋章が現れた。

「これが、王の紋章か」


 王の紋章を眺めていると、王の紋章は薄くなり、消えた。

「なに、心配ないよ。王の紋章は必要な時になればまた現れる」

「わかりました。それで、次なる実績のヒントは、ありますか?」


 実績お婆さんが微笑んで告げる。

「おや、もう次の実績を探すのかい? 気が早いね。ふむ、魔人が見えるね」


(ルドルフ関連の実績か。あとでルドルフに会いに行ってみるか)

「そうですか。なら気に留めておきますね」


 ヒイロはそれから少しの間実績お婆さんと世間話をしてから、ミランダ村長の家に向かった。

 ミランダ村長の家の前でパオネッタと合流して、家の中に入る。


 ミランダ村長は渋い顔をして待っていた。

「ボルベル族のボーモン王が、亡くなったそうよ」


 パオネッタが白々しい態度で尋ねる。

「それはまた急ですね。原因は何ですか?」


「何でも、野外での軍事演習中に事故に遭ったそうよ」

(武力衝突していないから、戦争の事実を隠してきたか。ただ、事故の扱いなのが、気に懸かる。サルモンが気を回したのならいいが)


 ヒイロは、それとなく尋ねた。

「どんな事故ですか? 気になりますね」


 ミランダ村長は弱った顔で歯切れも悪く告げた。

「流れ矢に当ったそうよ。それでね、その矢なんだけど、人間の作った矢なのよ」


 パオネッタが考え込む振りをして、もったいぶって語る。

「それは少し問題ですね。ボルベル族の使う矢と人間の使う矢は、違いますから」


「ボルベル族は人間も容疑者に入れて捜査しているんだけど、人間に容疑が懸かれば問題よ」

(戦争を隠すが、ボーモン王の死は隠さず、か。ボルベル族の誰かが死の真相に近づこうとしている。まずいな、サルモンと俺たちの謀議は秘密にしないと。謀議が明るみに出ると俺も困る)


 ヒイロは難しい顔を取り繕って、大袈裟に発言する。

「人間が狩猟中に放った矢がボーモン王に当って亡くなったのなら、大問題ですよ。でも、矢を放った人間は名乗り出ないでしょうね」


 ミランダ村長の眼が一瞬、険しくなる

「ヒイロさん、何か心当たりはない?」


(ミランダ村長は薄々と感づいているな。だが、正直に告白してほしいわけではないだろう。嘘を()くなら最後まで吐きとおしてほしいんだな)

「全く、心当たりがありませんね。でも、気には留めておきますよ」


 パオネッタもミランダ村長に協力的な態度を装って告げる。

「私にできることがあったら、仰ってください。協力は惜しみません」


ミランダ村長が頭の痛い表情を浮かべて頼んだ

「お願いするわ。ボーモン王の死は重大事件だけど、これ以上に厄介な展開にならないように祈るわ」


 家に帰ってからパオネッタと相談する。

「このまま、終わると思ったが、そうはいかないか」


 パオネッタは涼しい顔で淡々と語る。

「そうね、ボーモン王の息子を後継者に据えたいボルベル族が、黙っていなかったようね」

「放っておいても証拠は挙がらないだろう」


 パオネッタは冷たい顔で、当然の内容を口にする。

「でも、戦争の言いがかりには、できるわ」

「せっかく戦争を回避したんだから、しばらくは平穏でありたいものだ」


 パオネッタは少々困った顔をして、上を向いて発言する。

「誰かに身代わりになってもらう、なんて、できないしね」


(以前にモモンが魔人とボルベル族の関係は最悪だと言っていてな。なら、国王殺しの罪をルドルフに背負ってもらえないだろうな)

「いや。一人、候補がいる。交渉してみるか」


(実績の件もあるしな)

 ヒイロは支度を調えると、ルドルフの住み家に旅立った。


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