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第二十八話 二人目の総督

 翌日、港に大きな軍艦が二隻、やって来た。

 軍艦には兵士が大勢と乗っており、次々と開拓村の港に下りてくる。


 兵士たちに護衛されて、身分の高そうな赤い服の役人が下りてくる。

 役人は頭が禿げ上がった五十くらいの色黒の男だった。


 ミランダ村長が出迎えていたので、新しい総督だと思った。

 軍の到着を見ていた野次馬の男に訊く。


「新しい総督の赴任だな。名前は何て言うんだ?」

「ヴィルジニオ総督だ。噂じゃ、金の勘定が大の得意って話だぜ」

(財務畑から出世して総督になった男か。その頭脳が開拓村のために使われるといいんだけどな)


 港を見渡すと、ボルベル族の商人が見えた。

 新たな総督赴任のニュースは明後日にはボーモン王に伝わると見てよかった。

(さて、今度の総督はボルベル族と上手くやれるか、お手並み拝見だな)


 夜になると、酒場は久々の陸を満喫したい軍人で賑わった。

 バイソンのベーコンやソーセージが、これでもかと焼かる。

 酒樽も次々と空になっていった。


 軍人は新大陸の情報を知りたがったので、情報交換する。

 ヒイロはどんな軍人にも忠告する。


「マシュリカ酒には気を付けろ。あれは、絶対に飲んではいけない。マシュリカ酒は麻薬だ」

 大多数の軍人はわかってくれたようだった。されど、中には逆に興味を示す軍人もいたので不安だった。


 翌日、ミランダ村長から使いの少年がやって来る。

「今日の昼過ぎに、ヒイロさんとパオネッタさんはミランダ村長宅に来てください」


「いいけど、要件は何だい?」

 少年は表情を曇らせて答える。

「私の口からはっきり申し上げられませんが、おそらく課税の話かと」


 パオネッタがきょとんとした顔で訊く。

「税金って、この村にあったかしら?」


「私も今まで聞いた覚えがありません。ですが、昨日、ヴィルジニオ総督が村の倉庫を見て、いたく喜んでおりました。なので、税の話になるかと」


 ヒイロはヴィルジニオのやり方を不快に思った。

「決まりを急に後出しで主張して、人の金に手を付けようとするのか? 感心しない総督だな」


 少年も同情する顔で申し出た。

「私もヒイロさんに同意見です。でも、私は何ぶん、ただの小間使いですから、大きな口は利けません」


 小間使いが帰って行ったので、パオネッタに向き直る。

「どうする? 税金だって。いくらくらい吹っかけてくると思う?」


 パオネッタがさばさばした顔で、他人事のように提示する。

「ヴィルジニオ総督の性格によるけど、九割って命じたいところでしょうね」


「九割! 降って湧いた税金にしては高すぎだぜ」

「ヴィルジニオも、高額な税だと理解しているわ。だから、じゃあ負けて、五割でどうだってところでしょうね」


「それでも、まだ高い。実際、五割も課税されたら新大陸に人は来なくなると思うぜ」

「そこはそれ、累進(るいしん)課税にするって言い出すのよ。私たちには五割の課税になるように、調整するのよ」


(税金は高い。ヴィルジニオに負けるようで払うのは癪だ。だが、実績お婆さんがこんな事態を予言していたな。実績解除のためなら、支払いもあり、か)


「何か、納得がいかないな。でも、ヴィルジニオの懐に入るのではなく、村のためになる税なら、いいか。どうせ、俺が持っていても金を使わないし」


 金に固執しないパオネッタも、涼しい顔で同意した。

殊勝(しゅしょう)な心がけね。なら、私も五割課税を受け入れるわ。ただし、渡す品は納税者である私が決めさせてもらうわ」


「何か、欲しい物でもあるのか?」

「別に、冒険で役に立ちそうなマジック・アイテムを貰うのよ。マジック・アイテムって、買うと高いから」


「選定は妥協してもらうか」

 お昼にミランダ村長の家に行く。

 非常に申し訳なそうな顔をしたミランダ村長がいた。


「御免なさい。急に呼び立てして、実はヴィルジニオ総督がヒイロさんたちの持ち帰った財宝に課税したいって主張し出したのよ」


 パオネッタの顔を見ると「やっぱりね」の色が、ありありと出ていた。

 パオネッタが涼しい顔で意見する。


「そんな展開ではないかと思い、ヒイロと話し合いました。今回の稼ぎに関しては、税率が五割なら受け入れます」


 ミランダ村長の顔から苦痛の色が消えた。

「いいの。五割課税を受け入れてくれるの?」


 パオネッタが澄ました顔で宣言する。

「ただし、条件が二つ。一つ目は、税として納める品の選別はこちらでします」


 ミランダ村長は穏やかな顔で了承した。

「冒険に役立つ品は優先的に欲しいのね。いいわよ。金銭的価値で五割になれば」

「二つ目は、税金はきちんと村のために役立てください」


 ミランダ村長は、ほっとした顔で請け合った。

「それも約束するわ。ヴィルジニオ総督にしても、税は課すが懐に入れるつもりはないみたいだから」


「では、今回の課税、ヒイロと私は五割を承諾します」

「やあ、話がわかる人で、よかったわ」


 頭の中でファンファーレが鳴り響く。

「高額納税者の実績が解除されました。高額納税者の称号が授与されます。神殿で受け取ってください」


(これも、名誉称号が貰える実績だね。これで五十一個目。残り五十七個。課税も実績解除のためと思えば安い物か、金が必要ならまた稼げばいい)


 帰りにパオネッタと別れて、実績お婆さんの家に行く。

 実績お婆さんは、庭先に出した椅子の上で、昼寝をしていた。


 寝ていたので帰ろうとすると、実績お婆さんが寝言を漏らす。

「実績五十一個を解除する者が現れる。その時、聖王への道が開かれる」


(俺の実績が五十一個。モモンたちが口にしていた聖王と実績には、関係があるんだろうか?)

 ヒイロは、実績お婆さんがまだ何か呟かないか、待った。


 だが、実績お婆さんの口からは何も語られなかった。

 ヒイロは諦めて帰ろうとした。


 すると、実績お婆さんが目を覚ました。

「ヒイロだね。褒賞か称号を受け取りに来たのかい?」

「お忙しいようなら、また後日にしますよ」


 実績お婆さんは優しい顔で即断した。

「いや、忙しくなる前に、先に渡してしまおう」


 実績お婆さんが呪文を唱えると、頭が仄かに温かくなる。

「高額納税者の称号は、名誉称号だね。装備しても効果がないから、このままで行くかい? それにしても、よく決断したね」


「実績一個の値段なら、安いものですよ。称号はこのままで行きます」

 実績おばあさんがゆっくりと頷く。

「そうかい、感心だね。実績を追う者を、神は愛するのさ」


「お婆さん、聖王って、いったい何ですか?」

 実績お婆さんは面食らった表情で答える。

「何だい、聖王って? 私しゃ知らないね」


(寝言は無意識から出た言葉か。でも、気になる言葉だな)

「新しい称号の情報って、ありますか?」


 実績お婆さんは目を細める。

「実績の情報は見えないね。時間が経ったら、またおいで」

「わかりました。それでは、また」

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