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第二十五話 ルドルフの依頼

 開拓村でも夏の盛りが過ぎて涼しくなってきた。相変わらず開拓村は暇だった。

 開拓の村ではそう遠くない時機に新しい総督が軍を連れてやってくると、噂されていた。


 ヒイロは、新しい総督が赴任すれば新しい事件が起きると読んでいた。

 実績解除は遠からず来ると思ったので、無闇に動かず待っていた。


 ヒイロはその日、仲間と一緒にバイソンを狩ってきた。

 バイソンを酒場で解体していると、モモンたちを見かけた。

「どうだい、モモン。景気のほうは?」


 モモンは機嫌よく応える。

「いいっちゃよ。そうそう、ヒイロにちょっと聞きたい内容があるっちゃ」

「何だい? 俺にわかる内容なら教えてやるよ」


 モモンはにこにこ顔で質問してきた。

「背高族はいつ兵を送ってくるっちゃ? 今度はきちんとした歓迎の祝典をやりたいっちゃ。ミランダ村長に聞いても教えてくれないっちゃ」


(兵士がやってきたら、マシュリカ酒の虜にして次なる戦争に使う気だな。ミランダ村長も、ボーモン国王の狙いが読めるから教えなかったな)


 嘘を()いてもよかった。けれども、この手の嘘はすぐにばれるので、正直に答えた。

「そろそろって話だが、詳しい日取りは聞いてないな。何せ、海を越えてくるからな。予定通りとはいかないだろう」


 モモンがしょげた顔をする

「そうかっちゃ。日取りは不明っちゃか。ボーモン国王は、残念がるだっちゃ」

「到着すれば大きな船が港に見えるよ。毎日のようにボルベル族の商人が来ているんだ。商人に頼んでおけば、それほど間を置かずしてわかるよ」


 モモンが気を取り直して告げる。

「そうだっちゃねえ。待つしかないっちゃねえ」


(何だか、あまりよい気がしないな。ボルベル族の勢力拡大は本当に開拓村にとって利益になるんだろうか? 仮に人間の力で新大陸の統一が果たされたとして、人間とボルベル族は何を得るんだろう?)


 疑問はあるが、政治はミランダ村長の仕事だと、自分に言い聞かせる。

 家に帰ると、パオネッタとルドルフが話をしていた。


(ルドルフかデンホルム総督代行の一件依頼、村で見るな)

「今日はどんな用件だい? もっとも、用がなくてお茶を飲みに来ただけでも、歓迎するよ」


 ルドルフは素っ気ない態度で要求した

「今日は以前に売った薬の代価を回収にしに来た」

「何か、仕事を頼みたいって話だったな。どれ、用件を聞こうか」


「針葉樹林に入って、モンスターを倒して欲しい。または、モンスター退治の仕事を請け負ってくれる人間を紹介してほしい」


 針葉樹林と聞いて、インゴの一件が頭に浮かぶ。

「インゴなら、勘弁してほしいな。インゴの臭いは(ひど)すぎる。他のモンスターなら興味がある。ターゲットはどんな奴だ」


 ルドルフは、さらりと言ってのける。

「相手は死と病を振りまく黒い龍だ」


(来たね、伝説級の実績が絡みそうなモンスターが。これは他人に譲れない仕事だ。でも、気になる点もある)

「黒い龍って、あんたと一緒に海賊島を襲っていたよな。黒い龍は仲間だろう? 仲間を裏切るのか?」


 ルドルフは大して思い入れもない様子で、端的に語る。

「海賊島を襲った時か。もう、昔の話だ。海賊島を襲撃した時は互いの利害が一致していた。だから、協力して海賊に当った。だが、今は違う。利害が対立している」


 ルドルフが何を求め、何をしようとしているのかはわからなかった。だが、ボルベル族と違い、開拓村の不利益になるような研究をしているとは思えない。


 黒い龍についていえば、全く何を考えているかわからない。されど、おおよそ龍と人は相容れない存在である状況が多い。


 パオネッタの顔を見ると、パオネッタは真剣な顔で頷いた。

「ヒイロ一人に任せはしないわ。戦うなら私も協力するわよ」

「よし、わかった。黒い龍の件は俺とパオネッタで引き受ける」


 ルドルフが満足気に発言する。

「ヒイロがやってくれるのなら心強い。黒い龍の巣はここにある。あと、パオネッタはこのボウ・ガンを使うといいだろう。ボウ・ガンは使い捨てで。用が済んだら捨てて構わない」


 ルドルフは印のついた真新しい地図とボウ・ガンをくれた。

 さっそく、市場で旅に必要な道具や食料を調達する。


「それにしても、市場ができて便利になったな」

「そうね。今では欲しいものが、だいたい市場で揃うわ」


「俺は出掛ける前に、実績お婆さんのところに寄っていくから」

 ヒイロは季節の果物などを市場で購入して、実績お婆さんに会いに行く。


 実績お婆さんは庭に椅子を出して、日向ぼっこをしていた。

「お婆さん、今日は季節の果物を持ってまいりました」

「いつも、すまないね。どれ、実績に関する情報を見てあげよう」


 実績お婆さんが目を細める。

「おや、二件の情報があるね。一つ目は討伐に関する実績、二つ目は頭に由来する実績だね。どちらにも黒い龍の影が見えるよ」


(やはり、黒い龍の絡みで実績があるか)

「討伐系と交渉系の二つですか。解除される実績の名称とか、わかります?」


 実績お婆さんは残念そうな顔をして首を横に振った。

「私がさっき教えた以上の情報はないね」

「わかりました。では、また、実績が解除された時に来ます」


 ヒイロは帰り道すがら考える。

(討伐の実績解除はわかる。だが、実績お婆さんが見えた光景は黒い龍の影だ。ないとは思うが、黒い龍の討伐ではなく、関連する人物や別のモンスターなら、注意が必要だな。だが、もっと気になる情報は、頭に由来すると遠まわしに指摘された二つ目の実績だ)


 ヒイロは交渉系の話ならまだしも、謎解き系の実績解除は、得意ではなかった。

 頭を使う謎解きにはパオネッタの力を借りればいい。


 だが、パオネッタとて万能ではない。

(いいか、楽しんでこそ人生だ。頭を使う展開になったら、それはそれで楽しもう)


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