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第二十四話 会議が終わって

 ミランダ村長との会議は終わった。

 七日が経ったが、ボルベル族は普通に村に入ってきていた。


 一応、検問所らしき場所ができていた。

 マシュカリ酒がないのか役人がチェックはしていた。


 とはいっても、誰かがこっそり少量を持ち込む気になれば密輸は可能な態勢だった。

(結局、ボルベル族との交易を続ける判断をミランダ村長はしたか。政治判断だから何ともいえないが、良い気はしないな。また、麻薬は入ってくるぞ)


 さらに、三日が経過する。

 立派な赤い衣装を着たモモンがやってきた。モモンは三十人以上からなるボルベル族の人足を連れていた。人足は荷物を担いでいた。


 ミランダ村長とモモンが話し合っていた。モモンが、にこやかな顔で礼を述べる。

「ミランダ村長、この度は、我が部族のために出兵してくれてありがとうっちゃ。背高族が勇猛果敢に戦ってくれたおかげで、戦争に勝てたっちゃ」


 ミランダ村長は引き()った顔で、やんわりと否定する。

「戦争に勝てたのはいいですけど、私たちは戦争を支援した覚えは一切ありません」


 モモンは上機嫌で贈り物を申し出る。

謙遜(けんそん)しなくても、いいっちゃ。これは、共に戦ってくれた戦友の取り分だっちゃ。遠慮なく受け取るっちゃ」


 ミランダ村長は強張(こわば)った顔で拒絶した。

「そんな。戦利品なんて受け取ったら、戦争に加担したのが事実になります」

「何を遠慮しているっちゃ。背高族が目覚しい戦果を上げたのは、間違いないっちゃ」


 戦争に参加した褒賞を渡したいモモン。

 戦争に参加した事実を認めたくないミランダ村長。


 この二人の話は噛み合う展開がなかった。

 パオネッタがそっと感想を告げる。


「言葉は通じているのに、意志は通じていないみたいね」

「同感だね。あまりいい状況ではないね」


 話は噛み合わないが、戦利品を持って帰るわけにいかない。

 モモンたちは粘って戦利品を押し付けるように置いていく。

 後には困った顔のミランダ村長と役人が残った。


 ミランダ村長は村人の助けを借り、数々の品を村の倉庫へと運ぶ。

 ヒイロも運搬を手伝った。家に帰ると、モモンが待っていた。


 モモンが、にこにこ顔で挨拶をしてくる。

「久しぶりだっちゃ。この度は背高族に世話になったっちゃ」

「戦争の話か。正直に告白すると、俺は戦争を快く思っていない」


 パオネッタもヒイロの意見に同意する。

「皆で仲良く、なんて御託を並べるつもりはないけど、私も戦争には否定的よ」


 モモンは少し意外そうな顔をする。

「そうだっちゃか。戦争に協力してくれた背高族とは違うっちゃね」

「なあ、モモン。戦争はまだ続くのか?」


 モモンは気の良い顔で教えてくれた。

「今年はこれから夏本番と秋へと続くから、農繁期に入るっちゃ。だから、戦争は一休みっちゃ。それでも、奇襲作戦でビリビリ族に短期間で勝った成果は大きいっちゃ」


 パオネッタが冴えない表情で尋ねる。

「戦争をしないわけにはいかないの?」


 モモンは難しい顔をする。

「全ての部族がボルベル族こそが大陸の正統なる後継者と認めれば、争う必要がないっちゃ。認めないから戦争になるっちゃ」

「他の部族を武力制圧する以外に、戦争を止める方法はないのか?」


 モモンはあっさりとした顔で認めた。

「伝説によれば、あるっちゃ。聖地に聖王が君臨して、この大陸を治める時、全ての部族は聖王に従わなければならないと伝えられているっちゃ」


 パオネッタが興味を示して訊いた。

「その聖王が誕生する見通しはあるのかしら?」


 モモンは難しい顔で否定した。

「千年、大陸中の民は待ったっちゃ。でも、いまだ現れずっちゃ」

「そうか。なら、聖王誕生の可能性は薄いわね」


「いつ来るか全然わからない王様を待つなんて馬鹿らしい」

 そのあとも、モモンは人間の勇猛さを称えてから帰って行った


 ボルベル族との交易は活発になる。

 日用品が日々入ってくるのは便利だし、ボルベル族の作る品は価格も安かった。


 馬鹿豆を中心とした作物の売買の利益も村を豊かにする。最近では香料や香辛料も開拓村に持ち込まれる。寂しかった開拓村の食卓を豊かにし、市場が形成された。


 人は便利で快適な生活を望む。

 だが、ヒイロとパオネッタはマシュリカ酒問題が村に暗い影を落とす気がしてならなかった。


 夏盛りになり畑の雑草を抜いていると、ルドルフが家を訪ねてきた。

「何だ? ルドルフから会いに来るなんて珍しいな」


 ルドルフは軽い調子で語る。

「私だってたまには外出くらいする。ここに寄ったのはミランダ村長に会いに来たついでだ」


 ヒイロは気分もよかったので、家にルドルフを誘った。

「中に入っていくか? 茶ぐらい出すぞ」


 ルドルフは、やんわりと招きを拒否した。

「いや、ここでいい。ボルベル族のことだ。ボルベル族とは一度、関係を絶ったほうがいいぞ。今ならまだ間に合う」


(秋が終われば農閑期だ。また、戦争が始まる事態をルドルフは警戒しているのか)

「村の門戸を誰に開放するかについては、俺に権限がないんだ」


 ルドルフは辛辣(しんらつ)に評した。

「ボルベル族は狡猾(こうかつ)だ。おそらく、前回の戦争でボルベル族は味を占めた。今後も戦争のたびに、人間を派遣するように要請してくるだろう」


 ルドルフの顔は仮面で見えないが、きっと苦い顔をしているんだろうと思った。

「ボルベル族がマシュリカ酒を利用して近隣の部族を統一する気だ、とでも?」

「ヒイロの考えは、当っている。戦争は混乱を招くぞ」


「指摘されなくても、わかっているよ。でも、村の置かれた状況からして、簡単にはいかないんだ。もう、村はボルベル族との交易なしでは繁栄が難しくなっている」


「そうか、残念だ。ヒイロなら、わかってくれると思ったのだがな」

 ルドルフは寂しげに意見を伝えると帰って行った。


 その後は、平穏な日々が続いた。

 ヒイロは実績解除に絡む仕事をしたかった。けれども、事件らしい事件がないので、実績が解除できない。


 実績お婆さんのところにちょくちょくと顔を出しても、新たな情報はなかった。

 安全と思ったのか、頻繁に貿易船が来るようになった。大陸に商人は新大陸の珍しい品を買い、大陸からの品を売っていく。新大陸への入植と開拓は順調に見えた。


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