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第二十三話 隣人とどう付き合うか

 一日を掛けてルドルフの住み家へと急ぐ。

 ルドルフの住み家が見えてくる。


 何もない空間からルドルフが現れ、不機嫌に尋ねる。

「また、お前か。今度はどんな用件だ?」

「総督代行のデンホルムがマシュリカ酒中毒になった。治す方法はないのか?」


 ルドルフは呆れた口調で話す。

「マシュリカ酒を飲んで中毒になるとは、これまた不用意だな。治療薬ならあるぞ。ただし、この薬は用量が難しい。致死量は成人でも二百㎎だ。また、有料だがな」


「ルドルフの施設で、受け入れは可能か?」

「我々は隣人だが、友人ではない」


 ルドルフは頑とした口調で断ってきた。

「わかった。受け入れは望まない。有料でいいから薬を売ってくれ」


 ルドルフは一ℓ缶をよこしてきた。

「それで、百名分くらいの治療薬になる。代価は後払でいい。後で取りに行く」

「総督代行は一人だが、百人分の薬を売りつけるのか? また、価格がわからないのも怖いな」


「中毒患者が一人でも見つかったのなら、その背後に優に三十人は中毒患者がいるぞ。ならば、百人分くらい持っていかなければ不安だろう。対価は金貨ではない。やってほしい仕事を頼む」

(ルドルフからの依頼か、これ実績解除が絡みそうだな)


「いいだろう。ルドルフは開拓村から商品を買わないからな。金貨を貰っても意味がないしな」

「使い方は缶の表面に書いてある。用法用量を守って使え。あとは学習して慣れろ」


「わかった。ありがとう」

 ルドルフは忙しかったのか、すぐに消えた。


 家に帰ると、パオネッタが疲れた顔をしていた。

「大丈夫か、パオネッタ? 何かあったか?」


「マシュリカ酒を見つけてくるのが遅くなって、デンホルム総督代行の容態が急激に悪化したのよ。今、村の治療院に運んであるけど、なかなか厳しい状況よ」


「気付かなかったが、デンホルム総督代行はかなり重度の患者だったんだな」

「マシュリカ中毒はかなり厄介よ。薬が切れるとき、命も簡単に消えそうになるわ」


 ヒイロは村の治療院に薬を持っていった。治療術士に薬を渡す。

「ルドルフから買ったマシュリカ酒中毒患者の治療薬だ。用法と用量が厳しい薬だそうだが、気を付けて使ってくれ」

「ありがとうございます」と治療術士は礼を口にして薬を受け取った。


 三日後、朝食に摂りに起きて行く。

 焼きたてパンを買ってきたカルロッタが、朝食の準備をしながら教えてくれた。


「おはようございます。ヒイロさん。残念なニュースが二つあります」

「できれば明るいニュースを聞きたかったな。一応、聞く。教えてくれ」


「一つ目はデンホルム総督代行が亡くなりました」

「そうか、亡くなったか。用量を間違えたのかな」


「一向に快方に向かわないので、ほんの少し薬を増やしたら、あの世行きだそうです」

(戦争に兵を向かわせた首謀者が消えたか。デンホルムは総督代行なんて器じゃなかった。身に余る役職に就任した悲劇だな)


 カルロッタがパンを籠に盛り付けて語る。

「あと、ボルベル族とビリビリ族の戦争がいよいよ始まったそうです」

「なんだ、そっちも暗いニュースだな」


 カルロッタが曇った顔で考えを口にする。

「私も明るいニュースがほしいところですが、こればかりは何とも」

「同感だな」と食事を終えると、パオネッタが家に戻ってきた。


 パオネッタが穏やかな顔をして伝える

「ミランダ村長が呼んでいるわよ。話があるから、お昼に家に来てほしいって」

「何だろうな? ミランダ村長の用件って」


「村の今後の運営に関して、個別に村人に意見を聞いているそうよ」

「そうか。大した頭じゃないけど、協力するか」


 指定された通りに、パオネッタと一緒にミランダ村長の家を訪ねる。

 ミランダ村長の宅のリビングに通される。ミランダ村長は相変わらずの渋面だった。


「まずは、ヒイロさん、パオネッタさん、デンホルム総督代行の件は、ご苦労様でした。デンホルム総督代行は亡くなりましたが、ご協力に感謝します」


 パオネッタが優しい顔で慰める。

「終わった事件について、あれこれ悔いるより、教訓をどう生かすか、です」

「俺も同感です。それにデンホルム総督代行は身から出た錆の一面もあります」


 ミランダ村長は険しい顔で持論を語る。

「そうですね。でも、麻薬はまたいつ開拓村に入ってくるかわからない」


 パオネッタもマシュリカ酒の問題に関しては渋い顔をする。

「ボルベル族にすれば、酒を売っているだけの認識しかないようですしね」

「そうだな。でも、マシュリカ酒の問題は開拓村を崩壊させかねない」


 ミランダ村長は真剣な態度で尋ねてきた。

「そこで、相談です。ヒイロさん、パオネッタさんはボルベル族とどう付きあっていくべきだと思いますか?」


 パオネッタが理知的な顔で解決策を提示する。

「私は検問所を設置して酒類の持ち込みは一切を禁ずる。その上で、付き合っていく案を提唱します」


(検問所か。パオネッタらしい考えだが、それでは(なま)(ぬる)いだろう)

「俺は一度、付き合いを絶ったらどうかと思います」


 ミランダ村長の顔は晴れない。

「でも、ボルベル族との交易は、かなり活発になっています。今ではボルベル族の商人を村で見ない日は、ありません」


 ヒイロは危険だと思ったので心から忠告した。

「交易の利益は惜しいでしょう。ですが、村が立ち行かなくなるほどの危険を冒すべきではない。ここは一度、関係を絶つべきです」


 ミランダ村長は苦しげな顔で議論を終える。

「ヒイロさんとパオネッタさんの意見はわかりました。今後の村の運営の参考とさせていただきます」


 気になったのでヒイロは尋ねる。

「ボルベル族とビリビリ族の戦争はどうなんですか」


「ボルベル族が優勢だと、連絡が入っています。情報提供者はボルベル族の商人なので、信憑性には疑いがありますが」


 パオネッタが晴れない顔で見解を述べる。

「戦争も頭の痛い話ですね。開拓村の兵士がボルベル族側で戦った以上、ビリビリ族は仲間と見るでしょうね」

「ボルベル族が勝てばまだいいが、負けたら、ここも戦地になるかもしれないなあ」


 ミランダ村長は苦しそうに顔を歪めた。

「そうなのよねえ、あったま痛いわー」


 ミランダ村長の意見聴取が終わった。

 パオネッタと別れて、実績おばあさんの家に行く。


「実績解除時の称号を受け取りに来ました」

 実績おばあさんは出かける直前だった。


「これからミランダ村長の家に行くところだよ。時間はあまりないけど、称号の授与だけかい? それなら、すぐに済ませられるけどどうする」


「なら、お願いします。情報が欲しい時は、また時を改めてきます」

 実績おばあさんが手を翳して呪文を唱える。


 頭が仄かに温かくなった。

「麻薬取締り官の称号は装備すると、麻薬系の薬物全般に耐性が付く称号だね。称号を装備していくかい」


「とりあえず、称号はこのままでいいです」

「そうかい。なら、私は出掛けるよ。またね」


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