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第十八話 初代総督赴任

 開拓村が魔人と付き合っていくと決めてから五日後、村に六十m級の軍艦が二隻やってきた。

 桟橋は一つしかないので、交互に停泊して水と食糧を補給する。


 赤い軍服に身を包んだ軍人が、村でも良く見られるようになった。軍人はトウモロコシから造った酒や、バイソンの肉を、良く買っていった。


 軍艦から降ろされる資材を見てぼんやりと思う。

「だんだん、開拓も本格的になってきたな。この開拓の村も、もう一段大きくするところに来たのかもしれない。ミランダ村長の手柄だな」


 艦を観察していると、赤い軍服を着て勲章を下げた一際(ひときわ)立派な軍人が、艦から下りてきた。

 立派な軍人の歳は五十くらい。背が高く、髭を生やしており、いかにも海の男といった風体だった。


 立派な軍人はミランダ村長に迎えられ、村長宅に胸を張って歩いていった。

「今のお偉いさんは、誰だい?」と近くにいた船乗りに訊く。


 船乗りは肩を(すく)めて教えてくれた。

「エイブラム艦長だな。もっとも、もうすぐ肩書きはエイブラム総督になるらしいがな」

「あまり、評判が良くないのか」


「滅多な言葉は、口にするものじゃないぜ。文字通り、首が飛ぶぜ」

(何だ。結構、恐れられているんだな。総督の赴任か。これで村の空気も変わるかもな。俺の実績解除に影響が出ないといいんだけど)


 ヒイロは気になったので、夜になると、ミランダ村長の家の床下に忍び込んだ。

 リビングの真下に来ると、ミランダ村長とエイブラムの話し声が聞こえてきた。


 ミランダ村長が一通り、村の置かれた状況を説明する。

 すると、エイブラムの声が聞こえた。

「よし、その魔人のルドルフを倒そう。倒して、その砦だか研究施設をいただく。そこを軍の拠点にしよう。素材も研究成果も我らのものだ」


 エイブラムの声は残酷な内容と違い、とても穏やかだった。

 ミランダ村長の声が強張る。

「そんな。ルドルフさんとは仲良くやっていくと決めて使者を送ったばかりです」


 エイブラムはいたって簡単に言ってのける。

「事情が変わったのだ。気にすることはない。あと、ボルベル族だが、これはもっと兵を本国から呼んで首都まで攻め上ろう」


 対照的にミランダ村長の声は固い。

「打ち破って、どうする気ですか?」

「財宝は根こそぎ頂く。あと、生き残った奴らは奴隷にして、この新大陸を切り開くのに使おう。使えるようなら、西大陸に連れて行って使用人にすればいい」


 ミランダ村長は頑とした態度で、反対の意見を述べる。

「でも、それだと、今までの村の方針と真逆になります」


 エイブラムは表面的には優しい口調で告げた

「ミランダ村長。今まではミランダ村長の方針で良かった。だが、これからは違う。私が総督だ。総督の意向には、従ってもらう」

(これはまた、鷹派の総督が赴任してきたね)

 

 全てと敵対して武力で大陸を開発していくやり方は、上手くいかない気がした。

 エイブラムが失敗して失脚するだけなら、いい。だが、開拓村を失う展開は惜しい。


 開拓村があればこそ、実績解除に精を出せる。

 気になったので翌日、実績お婆さんの元を訪ねて訊く。

「一つ質問です。新しく赴任した総督に関連して解除可能な実績って、ありますか?」


 実績おばあさんがヒイロを見つめて、飄々(ひょうひょう)とした顔で告げる。

「おや、あるね。実績名も明らかになっている。その名も〝影で糸を引く者〟だね」

(やはり、出てきたか。良い具合だね)


「実績名からすると、陰謀系かな?」

(果たしてエイブラムを操って、新大陸から略奪するのがいいのか。それとも、エイブラムの野望を潰すのがいいのか? どっちだろう)


 正解はわからない。だが、実績が絡む以上は、何か手を打たねばならない。

 エイブラムの野望を潰すほうが心理的にやりたかった。成功して実績が解除されなければ、次の総督が来た時に態度を変えればいいだけの話だった。


 もし、万一、エイブラムと敵対しても、エイブラムの方針なら、ボルベル族と組めそうだった。

 それに、西大陸では解除可能な実績は終えている。取り零しが後でわかったら、密入国でも何でもしてやれる自信があった。


 実績お婆さんが素っ気ない態度で、釘を刺す。

「私は、ちょっと面倒臭い展開になりそうだから、これ以上は詳しく話さないでおくよ」

「わかりました。お互い、余計な詮索は無用にしましょう」


 実績おばあさんの家を出ると、ミランダ村長と、ばったり会った。

(ミランダ村長も実績お婆さんに相談かな? 実績お婆さんは、賢者的役割をしているからな)


 ヒイロは素知らぬ顔をして、ミランダ村長に訊く。

「どうしました、ミランダ村長? お顔の色が良くないようですが?」


 ミランダの表情はヒイロの言葉通りに良くなかった。

「いえ、頭の痛い話が降って湧いてね」

「総督と意見が対立したんですか?」


 ミランダ村長は弱音を吐いた。

「有態に言うなら、そうよ。エイブラム総督とは、上手くやれないかもしれない。でも、上手くやらないと、本国から支援が得られないし」

「村は小さくて、自立してやっていくのは難しいですか?」


「ボルベル族との交易が続いているけど、まだ必要な品を、本国からの輸入に頼っているからね」

「なら、うまくエイブラム総督と上手くやるかしか、ありませんね」


 ミランダ村長は苦しげな表情で息を吐き出すように話す。

「そうなんだけど、あったま痛いわー」


 ヒイロはミランダ村長にそっと近づき、ミランダ村長にしか聞こえない声で提案する。

「何なら、俺が総督を交代させる工作を手伝いましょうか。魔人とボルベル族に酷い仕打ちするのが嫌なんでしょう」


 ミランダ村長の顔が強張る。だが、数秒後には決意の籠もった顔で、そっと指示してきた。

「わかったわ。もし、頼むと決めたら、七面鳥の肉を贈るわ」


 ヒイロがミランダ村長の決断を待っていると、三日後に七面鳥の丸焼きが届いた。

(よし、方針は決まった。エイブラムの排斥(はいせき)だな)

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