教団
遅くなりました。再開します
コツコツと廊下に足音が響く
コンコンとノックの音が聞こえた
「開いていますよ」
「失礼します。教祖様準備が整いました」
そうですか。と教祖様と言われた全身真っ黒なローブを着た男が席を立つ。
「生贄の方はどうですか?」
「はっ!まだ数は足りておりませんが、それも時間の問題だと思われます。ただ…」
「どうしましたか?」
「いえ、先日大量に奴隷を買った男がいまして…ここら辺では生娘が足りなくなったので遠くから運ぶ為に時間がかかっているようです」
「生娘が足りなくなる程?」
「はい。他の国の諜報員にバレないように少数づつ買っていたのが仇になったようです。」
「変な話しですね。一人や二人なら買う事はあるのは分かりますが大量となると…誰なんですか?その人は」
「いえ、見た事もない者だそうです。しかも何十人も引き連れていて忽然と消えたそうです。」
「忽然と?転移のスキルでもあるのでしょうか?でもアレはなかなかお目にかかれないスキルですよ?まさか我々の邪魔をする者達の仕業ですか?」
「かもしれません…現在、影達に行方を探させています。」
「そうですか…邪魔をする者は早目に始末しなくてはいけませんね。もし蒼穹の者達だとしたら私が出なくてはいけませんね」
「教祖様が!?いえ、あんなロートル達は私達で充分です。この命に替えても必ず首をはねます!」
「ふふふ。そんなに張り切らなくても大丈夫ですよ。向こうは八矢の内四本は折れています。しかもこっちには一本が人質になってますからね。実質向こうは二本です。とは言え、この儀式さえ上手くいけば、他の五傑は我が手に落ちますからね。国が落ちるのも間もなくですよ」
話していと、いつのまにか目的地に着いてしまった。
「ふふふ。つい夢中で話してしまいましたか。では行きましょう」
目の前の扉を見る。扉の奥からは女性の叫び声が聞こえる。いつもの事だ。
暫くすると声も聞こえなくなった為、中に入る。
教主と呼ばれた男と同じ黒いローブを着た多くの集団が中にいた。大きく目深に被ったフードによって顔が分からない。集団は左右に別れ、一本の道を作る。
「おおお!教祖様だ!」
「教祖様がおいでになられたぞ!」
熱狂的なまでの熱気によって先程より一層活気が出た。一歩、また一歩と進むにつれ先にある魔法陣が見えてくる。
魔法陣の上には裸の女性が大の字になっていた。魔法陣の外側の杭に巻きついた布に両手両足を縛り付けられていた女性は絶望の表情をしながら
「お、お願いです。お願いですから助けてください。わ、わたし何も悪い事など…」
涙ながらにそう叫び続けていた
「貴方は運がいい。その命をもってヴォーロス様の糧となるのですよ?こんなに素晴らしい事はないでしょう」
女性はもう助からないなと悟り涙を流しながら
(お父さんお母さん先に逝く事をお許しください)
と心の中で謝罪を口にした
そして教主は杭を女性の胸に突き刺す。最初はビクッビクッとしていた女性の体は次第に動かなくなり血が魔法陣に吸い込まれていく。
「無事吸い込まれたようですね。」
そして教主は両手を広げ
「間もなくです。間もなくヴォーロス様が現世に降臨されるでしょう!あと少しの辛抱です。祈りを捧げ、この後に待ち構えている聖戦に、打ち勝つのです!」
うおおおおお!と、より一層大きな歓声が上がるのであった
……
…
「リュウ話がある」
突然イルマに呼び止められる。珍しい。ルナも横にいないで1人で声を掛けてくるとは…
「どうした?」
「実はの…手を貸してほしい」
はい。と手を差し出す
「ばっかもん!そういう事ではないわ!ワシのこの深刻そうな雰囲気がわからんのか?」
見た目子供だからな。何か悪い事をして叱られに来た子供みたいな雰囲気だし…
「いや、わからないけど、それで?」
「お主軽いな…いやまぁいいか。邪神が復活する」
「へー邪神ねー……おい!やっべーじゃねぇかそれ!」
「だから深刻な雰囲気と言ったじゃろうが!」
「おいどうしよう。どうすりゃあいいんだ!やばいぞやばい!邪神なんて復活したら火の海だぞ!」
オロオロするが…
「でも邪神って何なの?」
こけるイルマ
「知らないで慌ておったのか…」
「いやー邪神って聞くとヤバイってのはわかるから、つい雰囲気でオロオロしてしまった。」
「緊張のかけらもないヤツめ。まぁよい。その前に神聖アイドゥン皇国の話からせねばな…元々あの国はワシを国神として祀っておってな」
「えっ?本当に神様だったの?」
「お主本当は信じておらなかったな?」
いや、だってなー。威厳もないし、子供の見た目だしなー
「お主…今失礼な事考えておったろ。まぁいいわい。とは言っても空の神だから、雨が降らない事が続けば雨乞い。自分や周りに不幸があると空に向かって拝むといった神頼みが主だったの」
日本と一緒か…中には必死に毎日神社とかに御参りとかしている人はいるが、大多数は特別な事がない限り何も拝んだりしないからな
「中にはワシの事をしらない者も多くてな。でもワシ自体、空の神じゃろ?水の神や雷の神じゃないから雨なんて降らせられないし、出来る事と言えば見てるだけしかなくてな」
「えっ?っていうかイルマってぶっちゃけ何ができんの?」
顔を逸らす空の神
「……バリア」
「えっ?」
「………バリア」
まじかよ!こいつ全然役に立たない神様じゃんか!
「うるさい!神もそれぞれなのじゃ!バリアだってドラゴンすら寄せ付けないバリアなのじゃぞ」
確かにバリアは凄いかもしれないけどさぁーもっとこう神様的な理不尽な強さってないものかねぇ?
「おほん!でだ。話しを戻すぞ。ワシ自体そんなにあの国の絶対神とかに興味がなくての。宗教戦争も興味ないし、他の神が頑張ってくれればいいやと思ってたんじゃよ」
「えっ?そうなの?でも信仰してた人達いたんでしょ?その人達の為に力を貸したりしないの?」
「元々は初めに住んだ者達がワシを信仰してただけじゃよ。それにワシを熱烈に信仰してた者達は温厚じゃ。戦争に参加せんかったわい。だから各地に祠を建てて祈る事をしてたんじゃな。」
なるほどね。カボの村の人達って温厚そうだもんな
「しかし宗教戦争に勝った者達が信仰してるのはな紛い物の神じゃ。それがさっき言った邪神じゃ。本当の土の神は他の国にいるんじゃよ。」
「えっと…何で今までほったらかしにしてたの?」
「それはな、ヤツらの信仰してた神の像自体何の効力もないただの石の像だったからじゃ。いうならその辺に落ちている石に、これ神様宿ってるからと言ってるようなもんじゃ。滑稽じゃろ?だから危険視もしないし、好きにやってくれと思って、まぁ今まで通りバリアぐらい貼ってやろうと過ごしてたんじゃ」
そりゃあ気にしないか…
「ただ問題が発生したんじゃ。ある者が黒魔術で禁忌を犯しよった。生娘の血を媒介に魔法陣で魔界の悪魔を呼び出そうとしておる。」
「まじで!?悪魔いんの?」
「うむ。おるにはおるが、儀式等をしなければ普通はでてこん。しかし、何が出てくるかわからんのが怖い所じゃ。大物に出て来られたら勝ち目はない。その前に魔法陣ごと潰さなければならんのじゃ!」
「っていうか何でイルマは、それ知ってんの?」
「わしは他の土地神とも知り合いじゃ。その土地神達が騒いでおってな。『この地が穢される』とな。だから詳しく聞いたら判明したのじゃ」
何か凄い事になってきた。
「でもさ、そんな悪魔を呼び出す連中に俺達でなんとかなるの?」
「それは、わからん…じゃが他に頼る者もおらんし頼む!この通りじゃ!」
イルマがおじぎをしてきた
「しょうがねぇなー。とりあえず全員呼んで作戦を練るか?」
そして全員が集まった所でイルマの話しを伝える
「という事だ。もしヤバかったらすぐ転移で戻るけど、いいか?」
「仕方ないのじゃ。死なれたらこまるしの。」
そして俺達は神聖アイドゥン皇国に向かうのだった
40人くらい名前を付けたんですけど、文字数的に今回は出て来れませんでした。次こそは…次こそは…




