肉。それは恐ろしい誘惑
翌日37階に転移して来た
タナロスがまだまだ足りないので、全員で狩る事にした。連日の修行によって掠る事もない。キヨシ除いて…とは言えキヨシは後衛なので、魔銃で攻撃をしていた。
「ちょっと行ってくるわい」
とセキエイがふと言い出した。
ひょいひょい山の方に登りだし岩山に掌をあてて何かをしている。
何ヶ所も何ヶ所も同じ動作で何かをしている。
「ふむ。ここじゃな。セイ!」
と言い出すと岩山の表面が弾け飛び、オレンジ色の石が見えた。
「いい物が見つかったのぉ」
なんだなんだ?と全員が近寄ると
「これ見てみい。灯篭石じゃぞ。これで夜も村が明るくなる」
そこには光り輝く石があった。
これは灯篭石と言う物で、魔力を込めると光り輝き、込めた魔力が切れると光らなくなる。許容量がある為、込めすぎる事も無く8時間は光ってくれるのだとか。
これはいいんじゃないかと、村から採掘用にオーガを連れてきてツルハシでどんどん掘らせた
そして丸一日タナロスと灯篭石を集めまくる。また鍛冶師には負担を掛けてしまうが、雰囲気造りの為に街灯を作製して貰う。イメージはロンドンのガス灯である。
翌日37階の火山地帯に来た。今日の目当てはサラマンドラである。この魔物は火耐性があるので、防具作製の為に大量に欲しかった。村からベルラビットと剥ぎ取り要員を呼び寄せた。
どんどん積み上がるサラマンドラ。剥ぎ取りが間に合っていないので、600体程狩ってから一旦村に送った。
すまん。後は村で頑張ってくれ
ダンジョンに戻った後は38階を目指した。ちなみに下へ行く階段は俺達が狩りをしてる最中、ずっとワイバーンに空から偵察をさせている。
マッピングはいつもの探索組3PTがやってくれている。
いつもすまんねー
38階
とうとうアイツがいた。
ミノタロウスだ。ずっと探してたのに中々いなかったのだ。3mはあるそれは強者の雰囲気を醸し出していた。
もう~探してたんだぞ!どこをほっつき歩いてたのよ~ぷんぷん
とぶりっ子っぽく言いたくもなる。コイツの目当ては余す所がない素材である。
しかしここにいるのは以前ボスとして戦ったミノタロウスではない。数段上の実力者としてこの階にいる。
しかもこの階のミノタロウスは斧を持っておらず大剣を背負っていた。小枝の様に振るう大剣。かなり手強そうだ
遠距離からサンダースピアを2本時間差で投げ込む。それを簡単に弾くミノ。前衛4人が詰め寄り攻撃するもののウルシの刺突ではこの大きな体のミノには相性が悪かった。
セキエイの打撃もそうである。セキエイの攻撃の最大の特徴は内部破壊にある。これはいくら防御力のある防具を着込んでても全く意味をなさない。だからこそのセキエイの強さなのだが、ミノに対しては悪手だ。なんてたって
肉がズタボロになっちゃうじゃんか!
そう。ミノタロウス肉は極上のお肉なのだ。だからこそセキエイは内部破壊が出来ずにいた。
とは言って内部がダメだから戦えないという事はない。
「瞬雷牙」
貫手による一撃が右腕の根元から切り離され吹き飛ぶ。同じくグレイの刀が左腕の根元を断ち切る。そして最後に俺が首を切断する。
「さて、じゃあやりますか?」
イルマのアイテムボックスからバーベキューセットを取り出し鮮度のいいミノタロウスを焼いていく。サシがいい感じで入っている。
焼いた肉を食べると、みんなの手が止まった
「これはまずい事態ですね」
「どうしようかの?」
「あぁコイツは大変な事になったな」
「「「うますぎる!」」」
そう。美味すぎたのである。これはまずい…村で提供したら、ちょっとした騒ぎになりそうである。
「これ村で食べるとしたら一日ステーキ1枚って制約しないと大変な事になるな」
「そうじゃの。暴動が起きるぞい」
「他国へは特別料金で出そう。あまり安いと人を破滅に導く恐ろしい兵器になるぞ。金貨1枚の特別メニューにしよう。」
「そうじゃな。貴族ぐらいしか買えないような金額にした方がいいじゃろ」
そんな事を言ってると横ではグレイが酒とステーキを交互に飲食し
「かー!うめぇ!酒が進むわー」
「これ塩だけど焼肉のタレをつけたらヤバいな…」
あまりの美味さに何も考えずにボソッと言ってしまった
「「「「何だ?焼肉のタレって!」」」」
いやいや怖い怖い。何で聞いてるかなぁ?
「近い近い!わかった。わかったから離れて!」
みんなの目つきが怖い
「いやね。今作ってる調味料があってね。それを何種類かの調味料と合わせるとめちゃくちゃうまくなるのよ」
「今よりか?」
「いや、ステーキは塩と胡椒がいいんだろうけど…いや、これを1口サイズでもいいのか…まぁうまくなるね」
「絶対食わせろよ!」
ナタリーが強い口調で言ってくる
「じゃあ2日くらい狩るか?」
おい。ナタリーそれはやりすぎじゃないか?
「そうじゃな」
「それがいいですね」
「やったー!美味しいお肉がたくさん食べれるのー」
他のみんなも頷いている
まじか!試験的に干し肉も作って売るかな?赤身が多い所あるのかなあ?
ちなみにミノタロウスはツノや武器の大剣も素材としては優秀だ。ツノは硬く、金属とは違って錆びないので剥ぎ取り用のナイフや矢じりに使える。武器はそのまま研ぎ直せば使える。身長に合わせて打ち直ししても使える素材だ。
ミノもそうだが、リザードマンの2本のロングソードも武器としては優秀だ。
基本マジックアイテムとは違って武器は消耗品だし壊れる。
それを直す鍛冶師は冒険者に比べて数は遥かに少ない。
剣を1本作るにしても時間はかかるし、そもそも未熟な見習い鍛冶師の方が圧倒的に多いのである。
こういった研ぎ直せばいいだけの武器は重宝される。
「じゃあリュウ殿は最後に仕留めて下さい」
「わかった」
現在俺のテイムは進化をしている。以前は一撃で仕留めなくてはいけなかったが、今は留めをさせばテイムできるようになった。
勿論自分より弱い相手に限るけどね
でもさっきのミノがテイム出来なかったという事はまだ格上なのだろう。
その後もみんなの執念?でミノタロウスを狩りまくる。
そして106体目を倒した所で、
「おおお!きたーー!」
倒した筈のミノタロウスが起き上がったのだ!
「主。これからよろしく頼む。」
やったぜ!強力な大剣使いが来た。
ウルシが200体はテイムしましょうと言い出した。まじかよー。それってその後も肉の為に倒すんだろ?
何体倒すんだよ…
結局2日とか言ってたのに1週間も倒し続けた。多分600体位は倒したのか?
案の定村では大変な事になったらしい。もっと食べたい!もっと食べたい!と大騒ぎ。
各国でも大変な事になっている。たまたまケーキを買いに来た貴族の家族連れがいた。母と娘がカフェでケーキを食べている間、甘い物が苦手な主人が食堂でステーキを食べたらしい。
その日以降貴族連中が毎日押しかけたとの事。中には主人をこんな食堂で食べさせる訳にはいかないから肉を売ってくれと店員に詰め寄ってきた
「私共のオーナーはこの店以外で焼く事を禁止しています。もし食べたいのであれば焼いた物を持ち帰りでお願いします」
と話したらしい。いいよいいよ。しっかり教育ができてるじゃないか。
「じゃあそのオーナーはどこにいる?直接言いにいくから」
「私共はどこにいるかわかりません。何せ各国をまわっているので…」
しっかりと奴隷紋は発動しているらしい。俺や村の事は一切話せないようになっているからな。もし拉致や切りつけられる事になっても絶対に口を割らないだろう。でもそうなったら困る。誰1人死んで欲しくない。
焼肉のタレって絶対ヤバイよな…
一応、試験的に食堂の店先で砂糖醤油を塗ったイカを焼こうと思うんだけど、こっちも考え直した方がいいか?
今は貴族連中が食べに来てて席になかなか座れない状態が、どこも続いているみたいなので、早めに土地を買って貰って新店舗を作らないとやばいな
各国から奴隷の手配が出来たとの連絡も来ている。とりあえずボスまで倒したら向かう事にした
39階はイモムシだったのでスルーした。
うまみが全然感じられないし、なんか切ったら変な液とか飛んで来そうじゃない?
そして40階…そこにいたのは…
ガス灯もどきは3m以上有りますが下に土台の筒があって、ガス灯のポールを差し込むタイプにしました。なので魔力を込める際はそのポールを引っこ抜いて直接灯篭石に魔力を込めるイメージです




