破壊力すごい!
カポ村に戻ってきた。
村人達はルナちゃんを見ると無事でよかったよかったと泣いていた
安堵したのか、ルナちゃんのお腹が鳴った。
ルナちゃんは顔が赤くなり「恥ずかしいの」と下を向いた。
ナディアを見ると気まずそうにしてる。
しょうがねえな。馬車から食糧を持ってくる。それを村人に振る舞うと
「こんな食事いつぶりかの?」
「数年振りだな」
と言っていた。パンと肉入りシチューだけなのに...
どんだけ貧しいんだよ!
「冒険者というのは儲かるんですか?」
突然ナディアが聞いてきた
「人それぞれですかね?ナディアさんは教会にいた時とか冒険者や貴族と会った事はないんですか?」
「いえ、私は田舎の孤児院で暮らしていた孤児でして。シスターデビューがここなんです」
成程。貧乏な暮らしは慣れているからここでも頑張れたのか
「あの...」
ナディアが思い詰めた表情で言おうか言わまいか悩んでる
「どうかしましたか?」
「急にこんな話ししても迷惑かもしれませんが...もしよろしければ、この子達をどこかの大きな街の孤児院に預けてもらえませんか?」
「どうしてですか?ここまで頑張ったのに」
「正直もう限界だったのです。今日までなんとか食べていけたのでさえ奇跡だったのです。さっきルナがお腹減らした時でさえ、食べさせてあげる食糧は何も無かったのです。口減らしになるのが嫌で今日まで頑張れましたが、さっきこの子達の笑顔で食べる姿を見たら、私は何て力がないのだろう。この子達に充分な食事もマトモに食べさせて上げれないと情けなくなってしまいました」
「それは...この環境なら仕方がないのでは?」
「私も最初はそう思いました。しかし、そう思っても現実は残酷です。嘆いてもお腹を満たす事はできません。でしたら孤児院の方が遥かに恵まれています。貧しくともお腹は満たされます。この国は農業大国ですからね。食糧は配給されるのです」
「えっ?ここは教会から支援がないんですか?」
「残念ながら...多分見捨てられているんですよ...」
まじかよ!あの神父この現状を知ってて俺達に投げたな。金貨1枚はやりすぎたか?
「ただ見捨てられたからと言って子供達なら孤児院へ行けるとして、老人達はどこにもいけません。長距離の移動に体が付いて行けないのです。ですから私はここを見捨てる事ができないのです。最後の1人になるまで頑張るつもりです」
まじかよ...こんな事聞いたら...
(なぁ?さすがにこんな事聞いたら、じゃあさようならなんて帰れないよな?)
(そうじゃの?ワシも老人だから他人事じゃないぞ)
(おじいちゃんおばあちゃん可哀想。このままならすぐに死んじゃうよ?)
「シスター。実は冒険者っていうのは嘘なんだ。あ、いやまるっきり嘘じゃないんだけど、本当は村長をやってるんだ。でだ、さすがにここの現状を見て何もせずに帰るなんてできない。良かったらウチに来ないか?」
「えっ?村長ですか!あ、でも先程言った通り老人達には移動できないですよ?」
「特別な方法があるんだ。それなら問題ない。ただし、ウチの村は特殊だ。色々秘密がある。それを守る事が大前提になる。特別な契約書で縛る事になるが大丈夫か?ちなみに働く者には給料もでる。給料を出さないかわりに衣食住を補償する事も可能だ」
「条件にもよりますけど...それにしても何ですかその待遇のいい村は?」
「まぁ俺がやりたくて始めた村ですからね。本当はシスターをスカウトしに来たんですよ」
「私をですか?」
「はい。村には僧侶がいるんですけど、専門の冒険者組に入れてて休みの時しか村人の治療ができなくて困ったんですよ。なので、村で村人専属の治療師が欲しかったんです」
「そういう事ですか。でも私は大きな怪我を治せる力はないですよ?精々骨折ぐらいまでです」
いや、充分すぎるだろ!
「いやいや、それだけ出来れば充分ですよ」
「それに...」
ナディアがルナちゃんを見る
「ルナこちらに来なさい」
「はいなのー」
「この子は、私とは比べようもない程の才能が溢れています。多分成人になる頃には欠損部位なら簡単に治せるでしょうね。今でも私と同様の力は持っています」
まじかよ...こんな小さな頃からって恐ろしいな
「ですので、この子も働かせて欲しいのです。必ず村で役に立つはずです。そしてこの子には、稼いだお金で世界を見て欲しいのです。なんせ滅んだ村とここしか知らないのですから...」
「わかりました。しかし、あなたは村に行く事を教会に届けないといけないですよね?そうなると契約書を交わすとウチの村の事は話せないので困りますよね?」
「いえ、大丈夫です。私もさすがにもう教会から脱退する事にしました。何せ殆ど見捨てられてますからね。勝手にいなくなっても大丈夫でしょう。昔お世話になった孤児院には手紙で旅に出るとだけ送ればいいですから」
「分かりました。では...」
そして条件を伝え契約書を作製する。字が書けない人が多いので、血判で押してもらった。1枚で複数人できるから助かる。
村での待遇面も話した。みな一様に驚き、そんな夢みたいな事があるのだろうか?と嬉し泣きをしてた。
いやいや、ココ過酷すぎんでしょ?
身の回りの準備をしてもらう
馬車には帰ってもらった。ナディアの手紙を渡して。
そんな中、ルナちゃんが村から離れていく。
「ルナちゃんどうした?」
「うんとねー。これから神様にお別れの挨拶をするのー」
土の神かな?危ないかもしれないので、ついて行く
森の入口に小さな祠がある
何ともまぁボロボロだな
「ここ?」
「そうなの。私、ここに毎日来てるの」
よく見ると花が供えられていた
「かみさまー。ごめんなさい。私これから遠くに行かなくちゃ行けなくなったの。もう毎日遊びに来れなくなっちゃったけど許してね」
グスグスと泣いている
その時、急に祠が光る。
うおっ!
急に光ったので目をやられたが、少しすると見えだす。
そして目の前の光景に驚く
そこには身長30cmくらいの翼を生やした女の子がいた。
「嫌じゃ嫌じゃワシも行く!」
地団駄を踏んでいる。カワイイ
「あ、神様だー」
とルナちゃんが神様と言われた女の子に抱きつく
「ルナよ。ずっと一緒じゃ」
「うん。私も神様と一緒がいい」
そうじゃろそうじゃろと首を縦に振る
えっ?どういう事?
「お主ワシを誰だと思っておる。空の神イルマじゃぞ!頭がたかーい!と言いたい所だが、お主の中からスイーニーの気配がするぞ?」
スイーニー?...あぁあの獣神のやつか?
それにしても本当に神様なのだろうか?小さすぎて威厳がないな。
「スイーニーの奴も古い仲間だし、アイツが認めているならワシも認めてやろう」
ワッハッハーと、ない胸を張っている
何なんだこのお子様は
「イルちゃんのお家どうしようかー?」
「あぁそれならこうすればよい」
急に祠がイルマの中に入っていった
「イルちゃんすっごーい」
「そうじゃろそうじゃろ?これはなアイテムボックスというスキルじゃよ?」
な、な、なんだとー!
「か、神様?それどうやったら覚えるんですか?」
「なんじゃお主これを使いたいのか?」
「はい。ぜひ使いたいです」
「でもお主さっきワシを何だこのちびっ子は?って目で見ておったじゃろ?」
「いやだなーそんな事あるわけないじゃないですか?」
「ワシの気のせいか?まぁいいわい。でもどうしようかなー?まぁやらんでもない」
「本当ですか?ありがとうございます」
やったぜー!これで色々便利になるぞ!ひゃっほーい
「なんちゃって!うっそぴょーん」
てめぇ!血の色は何色だ!
ひでぇひどすぎる。純粋な心を弄びやがって!
「イルちゃん。お兄ちゃんをイジメちゃダメ!ダメダメ!」
「ルナよすまんすまん。でもな、このスキルは、あげたりする事ができんのよ。自分で手に入れるしかないのぉ」
くっそー!知っててわざとやりやがって!
...でもやっぱ無理かぁ。
まぁしゃーないよな。
村に帰ったら、とりあえず服を着させよう。まだ裸だしな
2人を連れカポの村に戻るとみんなが驚いていた。
一応神なんだってと説明すると、一応じゃない!イルちゃんはれっきとした神様なんだ!
と怒っていたが自分の事をイルちゃんと言ってる辺り信用はされてないだろう。
そして準備出来た村人を1箇所に集め黒鉄村に転移する
転移すると老人は腰が抜け、子供達は配下に怯えていた。全員をオープンカフェになっている所へ連れて行きケーキを配る。
恐る恐る食べるが、口に入れた瞬間表情が変わった。
今日は奢りだ!なんでも好きな物を食べなさいと話すと子供達は店の中へ入っていきキラキラした目で、どれを食べようかと相談している。
「ホントすみません。こんなよくして貰って」
「いえいえ、流石にあのまま置いて帰れませんからね。それより村のシスターの件お願いしますね」
「はい。それはお任せ下さい」
「分からない事があれば秘書のシルヴィアに聞いて下さい」
そして俺は家の手配、食事の手配、服の手配をしに回った。
まぁ少しづつ慣れてくれればいいな
数日後
ルナがイルマを連れて来た。
「お兄ちゃん。聞いて欲しい事があるのー」
「お?どうした?もう村になれたか?」
椅子から降りルナと同じ視線になるように屈む
「うん。大分慣れたのー。それでね。ここ魔物も住んでるでしょ?でねイルちゃんとも相談したんだけど、私の秘密を打ち明けようと思って...」
なんか深刻な話か?
「うん。どうした?」
「驚かないでね?私本当はね亜人なの」
「そうなの?お兄ちゃんも亜人の友達がいるぞ」
あいつらは友達というか狂信奉者だけどな...あぁ思い出したら「解放者様ー」って声が聞こえる...
「ほんと?じゃあ大丈夫だね」
と言うとバサン!と翼が生えた。と同時に体が大きくなり服がバツンと大きく破けた。
イヤンとルナが恥ずかしがってるが、物凄い破壊力だった。体を両手で隠し恥ずかしがってる。俺だって恥ずかしい
「チェストー!」
イルマの目潰しがヒットした
「がああああ!目が目がぁぁぁぁ!」
ごろんごろん転がる俺に
「ルナの裸をジロジロ見るからじゃ!」
てめぇこの野郎!ちびっ子がぁぁぁ!
落ち着きを取り戻しルナには人前で変身しないように伝えた。
縫製工場に向かい、工場長に相談した
「こんな事があってさー。ルナが大人になっても大丈夫なようにマジックアイテムみたいので、大きくなっても大丈夫みたいの作れない?」
「それだったらこの前探索組の人に相談された件がありますね。どうも性能はいいんだけど、可愛らしい格好みたいで、デザインを変えてくれって。それに私達ではマジックアイテムなんて作れませんよ?」
それだ!すぐに探索組に連絡してかっぱらった。
「翼も生えているしもっと可愛くしましょう!イルマちゃんもお揃いで作りましょうか?」
あいつら仲良しだから作ってもらおうか?
2人に話すと大興奮していた。
「もうワシこれしか着ぬ」
と感動していた。
いや、洗濯はしてくれよ?
ルナのはマジックアイテムだから汚れないし、大人バージョンでも子供バージョンでも着れるけどさー
それにしても大人バージョンは色っぽかったな。
しかも魔力も上がるんだろ?今後戦闘になっても大丈夫そうだ。
イルマは一緒についてきそうだし、神様ってぐらいだから基本的に強いんだろ?
そして数日後、北の国いた商人から連絡があった
「村長!村長!ありましたー!」
待望の一報は呆気ないものだった。
森に自生していた小豆が転がっていたのだった。
一日中小豆を探しにPT全員で山狩りを行い、大量の小豆をゲットした。
頼む!発芽してくれと祈りながら田吾作さんに渡したのだった。
これには、やっさんも狂喜乱舞し変な踊りを踊っていた。
よかったね。やっさんこれで和菓子の幅が広がるね




