老人と孫
俺とウルシは残りのアジト3ヶ所を捜索した。
アジトには、まだ手下達が少数残っていたが気配察知がある為、隠れてもバレバレだった。見つけ次第、無力化していく。
そんな事をしていると地下に人の反応があった。
まだ隠れているのかと思い地下に入ると牢屋があり人が何人も入っていた。
近づくと、奥に逃げ怯えている
「あなた達はこんな所でどうしたんですか?」
「えっ?もしかして助けが来たのか?」
「アジト捜索してるだけなので、別に助けに来た訳じゃないです」
「そんな事言わずに!お願いです。助けて下さい」
どうやら元々道場にいた人達らしい。手下達に家族を人質を取られしょうがなく先生を裏切ってしまったとの事。今では悔やんでも悔やみきれないと涙を流していた。
「とりあえず、敵は全部倒して衛兵に預けました。今仲間が解毒剤を持って道場主の毒を治しに向かってる最中ですよ」
「本当ですか!ありがとうございます」
また泣き出してしまった。
「とりあえずまだ1ヶ所アジトが残っているので、道場には後で向かいますね。」
そう元門下生に告げ、残りのアジトに向かった。
そして全てのアジトを捜索したのだが、色々と問題ある成果だった。
道場に居た手下達もそうだが、アジトにも大量の武器があった。
いくらチンピラ達でもこの量はおかしいだろう。裏で誰かが支援しなければ働いてない者達が日々の生活費に武器購入費用は賄えない。
村を経営している分、実感ができる。
「これは......麻から採れる薬物で、ウチの国では禁止されている薬物ですね。」
まじか!これって関わっちゃいけないやつじゃない?
「これ俺達では手に余るから伯爵に投げちゃうか?」
「そうですね。国の貴族が関わってるみたいですから...」
とアジトにあった資料や手紙をパラパラ捲っている
「男爵のようですので、伯爵様に任せれば宜しいかと思います。それになぜ道場を狙ってたかやっとわかりましたよ」
ウルシによると、道場の裏山で薬物の原料を栽培しようとしていたらしい。
まさか街で栽培してるなんて思わないだろうからと。その為には道場が邪魔になり道場自体を乗っ取る事にしたみたいだ。道場を隠れ蓑に裏山へ入る人を監視する意図もあったようだ。
灯台もと暗しだな。
とりあえず証拠の資料を集めさせた。
それにしても幅広く犯罪行為が行われていた。薬物に窃盗恐喝、地方の村から子供を誘拐し奴隷として売買。
ふと誘拐と聞いて考えてしまった。うちの村には子供達が大勢いる。もしかしたら何人かは誘拐されて売られたのかもしれない。大人もそうだが、故郷に帰りたくはないのだろうか?
買われたから故郷に帰るのを諦めたのかもしれない。今度みんなと話しをして帰省したい人は一時帰省できる計画を立てようか?
特に子供達は親に会いたいだろう。奴隷を買う際には毎回俺と村の情報は漏らさない事に設定しているから一時帰省しても問題ないだろう。
向こうの村や街の人達が、ウチに来たいと言ってきたら困るけど...まぁ無理な話しだな
そういやぁ忘れてたけどキヨシはしっかり探してるかな?
ナタリー視点
道場に戻ってきた
「ほれじいさん。解毒剤持ってきたぞ」
「本当か!ありがたい。何とお礼を言えばいいのか...本当にありがとうなのじゃ」
「ナタリーさんありがとうございます」
エマもお礼を言ったきた。
「おじいちゃんこれでまた道場を開けるね!」
「そうじゃの...」
解毒剤を飲んだ老人は言葉を一旦止め考え事をした。そして意を決して
「あのなエマ。ワシは引退をしようと思っておる」
「えっ?でもおじいちゃんこれが生き甲斐だから死ぬまで道場を続けるって言ってたじゃない」
「ワシだけならいい。ただ今回の事があってから気づいたんじゃ。エマまで危険に晒してしまった事を。今回の様な事がまた起きてしまうと考えると天国に行ったばあさんに申し訳なくてな」
「そっか...でもこれからどうするの?」
それなんだがなとエマに言いナタリーを見る
「アジトに向かう前に来ていた村長さんにお願いしたい事があるのじゃ。ワシ達2人を村に住まわせてもらえんかの?あまり役に立てないかもしれんが自分達の食い扶持の分は何とかするから住まわせて欲しいのじゃ」
「まぁ私は別にいいけど、うちに来るとなると条件があるみたいだぜ。なんせ特殊な村だからな」
「何と!ちなみに条件とは何じゃ?」
「まぁアイツに直接聞いてみなよ。それより戦おうぜ!」
「申し訳ないが、まだ完全には体調が戻ってなくての。もし村に住まわして貰えれば、いくらでも戦っていいのじゃがな」
「まじか!じゃあ説得してみるわ!」
ナタリーは気づいてないかもしれない。老人に言葉で誘導されている事に。例えわかっていても強い奴と戦えればいいので、特には住むのは問題なかった。なんせ面倒事はリュウに押し付ければいいだけだから...
そうこうしていると見慣れない男達が近づいてきた。また新しい奴が来たのかとナタリーは木刀を手にする
「アイツらは門下生じゃ。どうしたんじゃろか?」
男達は老人に近寄ると
「先生!今まで申し訳ありませんでした!今までの恩を仇で返すような事をしてしまい。しまいには毒まで盛ってしまい...いかなる処分も甘んじて受ける覚悟です。もしここで自害しろ!と言われれば今すぐにでも!」
「待て待て焦るでない。事情は何となくわかっておる。弱みでも握られておったんじゃろ?それにワシらは許可が下りればこの街を離れようと思っておる。道場は置いて行く。ワシに申し訳ないと思っておるならここを守って行って欲しい」
門下生は「申し訳ありません」と泣き出した。そして少しづつ落ち着き出すと
「先生がそうおっしゃるなら必ずここを守って行く事を誓います。ですが、先生がいなくなると寂しくなります...」
「いや、何。村に行くのじゃ。会おうと思えば、いつでも会えるじゃろ?」
ナタリーは思った。転移がなければ、多分何ヶ月も来るのには掛かるんじゃないかと...まぁ知らない方が幸せだと思い言わないでおいた
そして3時間程するとリュウとウルシがやって来た。あいつら何してたんだ?大分時間が掛かってるぞ?
時間がかかったが、道場にやって来た。それもそのはず。まずはアジトに残ってた残党を衛兵に預けてきた。その後はアジトに纏めていた武器類を馬車を呼び運び込んだ。他にも様々な戦利品。魔道具や金品も押収したので、他の国で売る事にする。
食糧は食べれるかわからなかったので、そのままにした。衛生的なのかわからないからね。
そんな事をしていたら遅くなった。キヨシはもう戻っていたみたいで、頼んでいた物が1つ見つかったそうだ。後の楽しみにと、詳しい報告を帰ったらしてもらう。
道場に戻るとナタリーが、どうやら解毒剤は効いたみたいぜと報告してきた。
よかったー!フラグ立てちゃったから、もしかしたら効かないかと心配してたんだよね。
来たら薬師がいて「これは...特殊な毒ですね。毒を治すには向こうの山に満月の夜だけ咲くと言われているムーンドロップという薬草を煎じた物しかダメでしょう。ですが、山に咲いているというだけで場所までは...」とか言われて夜中にずっと山を歩き続けるとかなくてホントよかったよ。やっぱ薬草に精通してる薬師とか村に欲しいな
「この度は助けて頂き誠にありがとうございます。まだ自己紹介が済んでおりませんでしたな。ワシの名前は”セキエイ”と申しますじゃ」
「こちらこそ遅くなりました。黒鉄村の村長をしてるリュウと言います。後ろにいるのはウルシと言います。」
ウルシが綺麗なお辞儀をしている
「毒が抜けてよかったです。これで道場を直せば再開できそうですね」
と話すと
「その事で今ナタリー殿や孫のエマとも話していたのじゃが、ワシら2人を村に住まわせて頂きたい。勿論自分達の食い扶持は自分達でなんとかするつもりじゃ。ナタリー殿が言うには条件があるようじゃが、聞いてもよろしいかな?」
う~ん。参ったなどうしようかな?
「条件はありますが、その前になぜうちの村で暮らしたいと?」
「ワシは今回の事で、つくづく思ったのじゃ。毒に体を蝕まれる前はワシがいればどうにかする自信はあった。しかし体が、言うことをきいてくれなくなりエマを危険に晒してしまったのじゃ。自分が不甲斐なかった...エマを守るとばあさんに誓ったのに...本当はエマだけをお願いするつもりじゃったが...」
と話した後、ワシが寂しくて子離れ出来なそうだからのーと笑っていた
「という理由でお願いしたいのじゃ」
「なぁリュウ。いいじゃんか。悪い奴らじゃないぜ?バラすような事はしないと思う」
「理由は分かりました。では条件というのは、うちの村と俺の秘密をバラさない事です。村人以外には絶対話してはいけないと約束できるなら許可しましょう」
「それぐらいなら大丈夫じゃが、なんだお主達後ろめたい事でもしとるのか?」
「いえ、犯罪行為ではないですが、変わった街でしてね。バレたら大騒ぎになるんですよ」
「分かった。もし心配なら特殊な契約書でも交わそうか?それがあったら確実にバラさないぞ?」
なんでも特殊な魔法陣で書かれた物で双方の同意で契約できるとの事。王都の教会で買えるらしいが高いらしく金貨1枚する。奴隷の契約に似たようなものに近いらしい
便利なので後で10枚程買う事にした
数日この街に滞在する事になる事を伝え契約は出発前日にすると話をし道場を後にした
前に書いた人の物は盗まない設定ですが、今回はグレーゾーンで!w




