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モルドの剣  作者: 馬の被り物
食材を探そう
46/67

会話多めです

 春になった。まだ少し寒いが、雪が溶け草木の芽が顔を出し、だんだんと春の訪れを告げる

 

「さぁそろそろ行くぞ!」

 

 旅の支度を済ませみんなに告げる

 

 今回の旅のお供はナタリー、キヨシ、ウルシの3人だ。ウルシはシルヴィアの執事だが冷静な判断、圧倒的な武力を持っているのに村に置いていくには勿体ない。

 同行をお願いした。

 

 それでも不安はある。それが戦闘スタイルだ。

 ないとは思うが強大な敵に遭遇した時、前衛をナタリーとウルシに任せても後衛は俺とキヨシだ。

 

 その事を事前に話したら

 

「「回復がいない!」」

 

 となったのは必然だった。

 大怪我をしない前提の戦闘スタイル...不安しかない

 奴隷商に新たに補充を頼もうかと思ったが、ナタリーとウルシが苦戦するような敵なら奴隷商の所にいるレベルの僧侶じゃ焼け石に水である。

 

 諦める事にして着いた国でスカウトできたらしようという事になった。

 はぁ借金してどうしようもない程に困った高レベルの僧侶なんていないかなぁ?

 

 そんな都合のいい僧侶なんているはずがない

 

 

 

 さて準備が出来たようなので、記念すべき1ヶ国目に行きますか

 するとナタリーが

 

「ところでどこに行くんだ?」

 

「商人に話しを聞いたら海を渡ったこの世界で1番遠い国だってさ」

 

「海かークラーケンみたいな敵がいれば戦いたかったぜ!」

 

 やめて!なんで、わざわざそんな危険な旅をしたいの?

 

 

 

 

 

 

 

 

【アニチ連邦政府】

 この国は、大小様々な国が集まった集合体の国家だ。

 

 基本1つの国がトップになり、他の国を支配しているというのが現状だ。そして実力がすべて。数年毎に開かれる武闘会で1番を取った国が数年間支配権を得るのだ。実力第一主義の為至る所に王都があるが、ここ20年現在いる国が実質トップを守り続けている。

 

 守り続けているからこそ、この国は国力が安定しており、富が集中し人材がしっかりと育っている。

 まだまだ安泰だろう。

 

「じゃあ2人は街でこれらを探しといてね」

 

 ナタリーとキヨシに紙を渡し別れた。

 その紙は以前やっさんに頼んどいた欲しい物リストの絵だ。

 何か1つでも見つかって欲しい

 俺とウルシは、うちの商人の馬車の中に隠れ街から出た。

 馬車で3時間。この国の王都に着いた。

 なぜ王都かと言うと、街で人気の出たうちの商品を気に入り、代表とぜひ会いたいと伯爵だという人物から王都に招待されたからだ。

 

 なぜウルシも同行しているかと言うと、やはり執事がいるいないとじゃ見た目が全然違うからというのが理由。

 ウルシの佇まいなら、相手に馬鹿にされないし、商談にしても相手から下に見られないだろうと思う。後は俺の実力か...

 商談とかした事ないから正直不安だ。

 格好もそれなりに正装を持ってきた。青と白を基調としたなかなかいい仕上がりだ。とは言え城のパーティに着ていく程の派手さはない。少し金を掛けてるぐらいの仕上がりになっている。コートは商人に預けた。なくさないでくれよ?

 

 呼ばれたのはローゼンハイム伯爵の屋敷

 馬車から出ると執事が近寄ってくる。

 

「リュウ様でございますか?」

 

 招待状を手渡す

 

「本日は当家にお越し頂き誠にありがとうございます。」

 

 ではご案内致します。と言われたので、後について行く。

 

「こちらでお待ち下さい。直に当主も参ります」

 

 通されたのは、黒と茶色に統一された家具がある部屋だった。派手さはないが、大人の雰囲気のする部屋だった。

 ビンテージ家具と言えばいいのかな?長く使ってる感じがする

 少しすると、コツコツと歩いてくる音がする

 扉が開き

 

「お待たせしましたかな?私が当主のエリオット・ローゼンハイムだ」

 

 ニコッと握手をしてくる。

 なんだか優しそうだ。金髪をオールバックにした50代くらいの男。しかし体は引き締まっており服の上からでも筋肉が主張をしている。さすが実力第一の国である。

 

「あまり豪華な部屋でなくてすまない。客間は大体こんな感じでな」

 

「いえいえ、私もあまり派手派手なものは好きではないので、むしろこういう長年使っている、ビンテージ物の家具の方が落ち着きますよ」

 

「おおそうか!そう言って貰えると助かる。食事も用意してあるので我が家だと思って寛いでほしい」

 

 くつろげるはずがねぇ!

 本当に寛いだら本当の馬鹿である。もしかしてそういう所も見て俺の評価をつけるのだろうか?

 

「ありがとうございます。私はこの国に初めて来たので、どんな料理があるのか楽しみですよ」

 

「なんと!初めてであったか」

 

「はい。私共は世界中で商売をしておりまして、数ヶ月前に先行して店を開かせたのでございます。ですので、なかなか来れなく申し訳ございませんでした」

 

 まぁ冬は寒いから来たくなかっただけなんだけどね

 

「なるほど、これで理由が判明した。あのショートケーキという物は初めて食べたが家内と娘がいたく気に入ってな」

 

 正直に話すがと断りを入れ

 

「ぜひレシピを教えて欲しいのだ」

 

「申し訳ないのですが、それはできません」

 

「なぜだ?金なら欲しいだけ出そう」

 

 いや、金なら今後充分に手に入るから要らないんだけどね

 

「落ち着いてください。言葉が足りませんでしたね。実は特別な乳を使ってまして普通の牛からでは手に入らないのです。しかも採るのにはえらい苦労をします」

 

 普通ならね。だって雷くらうし...ホントテイムできて良かったよ

 

「しかも私はレシピをしりません。抱えている職人のアイデアですので」

 

「ではその職人からレシピをもらえないだろうか?」

 

「レシピがあってもしょうがないと思います。火加減とか実際やってみないとわからないものですから」

 

「ではこちらの職人を派遣しよう」

 

 いやダメだろ...やっさんを人目に出したら騒動になるぞ。アンコウだからな

 

「すみません。その職人は人前に出るのを極端に嫌がりますので...というより、もし伯爵様に教えてしまったら私共の最大の利点である秘密が世に出てしまいます。これでは商人としては失格でございます。それに金という話しではないのでございます」

 

 その言葉を待っていたと言わんばかりに伯爵は

 

「何が欲しいのだ」

 

 ニヤリと口角を上げた

 やっとここまで来れたな。

 

「直接指導する事は出来ませんが、レシピをお渡ししましょう。その代わり、ここに描かれている内のいくつか、それも苗を含んだ物が欲しいので御座います。加えて伯爵様の後ろ盾が欲しいですね」

 

 まぁケーキのレシピぐらいならいいか。探してる物さえあれば色々な物が作れるしな

 

「少し対価にしてはでかくないか?」

 

「私共は商人で御座います。なるべく多くの利を得たいと思うのが普通でございます」

 

 満面の笑みを伯爵に向ける

 

「ではこうしましょう。もし捜し物を3つでも手に入れたら、重要な乳は必要な時に販売いたしましょう。加えて新作が出来たら1番にお持ちしますよ。それがあれば奥様やお嬢様の機嫌や他の貴族方の印象も...」

 

「確かにそれは魅力的だな。分かった!何とか手に入れよう」

 

 

「ちなみに2つなら乳の件はなしで、伯爵様の後ろ盾は貰いますからね。乳の秘密を頑張って暴いて下さいね」

 

「それはズルいぞ!」

 

 伯爵が呆れていた

 

「伯爵様の御機嫌取りにこちらはどうです?新作ですよ?」

 

 ウルシに渡しといた箱を伯爵の前に出す

 

「そういう事は口に出さないものだぞ。...これは?」

 

「いえいえこれからもお付き合いさせて頂くので多少は損得勘定ばかりの人間とは思われたくありませんからね。実際は正直な人間ですよ?これはチーズケーキという物でございます」

 

 伯爵にはチーズケーキと言ったがベイクドチーズケーキである。

 

「これは!おい!これもレシピを教えろ」

 

「できません。手札は多く持ってないといけませんからねぇ」

 

 ふっふっふと笑う。手網はこちらで握らないとな

 

「それにしてもおしいな。うちで雇われないか?」

 

「ありがたい話しではございますが、それは御遠慮させて頂きます。それよりそんなに食べてもよろしいんですか?奥方様やお嬢様に残さなくても?」

 

「しまった!」

 

 半分は食べたな。そうかそうか伯爵は甘党か。これはチョロいな

 

「では食事にするか?」

 

 伯爵は横にいる執事に「おい」と一声掛け食事の用意をさせた

 

「あ、これ美味しいですね」

 

「魚は初めてか?」

 

「いえ、ありますが味付けが懐かしい感じがします」

 

 中華っぽいな。そういえば来た時の王都の風景がカンフー映画みたいな感じがしたんだよね。

 

「1つ聞きたい。悪いが色々と調べさせて貰った。あの店で売られている商品は見た事が無いものばかりだった。もしや召喚された者が関わってないか?」

 

 スゲー核心ついてくるな。

 

「いえ、違いますよ。」

 

「そうか?なに、先程の話しの職人が人前に出たくないと言ってたので、召喚された者と思ってな」

 

 召喚者はどこの国にもいそうだな。それだと不味いな...カカオとかの絵を見たら1発でバレるぞ

 

「さて腹を満たした事だし、散歩等はどうかな?最近腹が出始めてな、家内から動くように言われてるのだよ」

 

 わっはっはと笑う伯爵。全然出てるように見えないけどな

 

「2人で歩かんか?共に護衛なしで気兼ねなく話をしながら歩きたい」

 

(もし危なくなったらすぐお呼びください)

 耳元でウルシが伝えてくる

 

 護衛達から充分に離れた所で

 

「リュウ殿あなたは召喚者だな?」

 

 ドキッとした

 

「いや、取ってくうつもりはないからな。それに手元の配下には召喚者がいるのでな。私は味方だ。」

 

「なぜわかったのですか?」

 

「普通召喚者と言われたら”召喚”と言う言葉自体に疑問を持つものだよ?それなのにその言葉を受け入れている」

 

 マジかーやられたわ

 

「そうですね。私は召喚されました。ただし平穏に暮らしたいので、王都から遠く離れて元の国の知識で金を稼ぎながら早めに隠居しようと思ってます」

 

「はぁそうなのだ。召喚者の殆どが平穏に暮らそうと考える。一部の者はそうではないが、権力を欲しようとしないのだよ。圧倒的な力を手に入れる素質を持って召喚されると言うのに勿体ない」

 

「まぁあの国の気質なのでしょうね」

 

「うちの召喚者も、まぁ逃げている所を保護したのだが、平穏に暮らしたい。米とか言う物を作りたいからと言い出してうちの領土に篭ってしまってな。困ったものだよ」

 

 まじか!米農家きた!落ち着け!焦るんじゃない!ここはゆっくり交渉するんだ!

 

「あぁわかります。この国には米が全然ないですし、元の国の人間なら食べたくなりますね」

 

「そんなに美味いものなのか?」

 

「人によりますね。パンを主食にしている人には嫌いな人もいますからね。それより逃げた人を匿ってるのはこの国では問題にはならないのですか?」

 

「あまりよくないな。いくら戦う意思がないと言っても人間の心だ。バレたら他の貴族は戦力として匿ってると思うからな。何せ召喚者は鍛えれば簡単に強くなるからな」

 

 えっ?マジ?全然実感ないんだけど?俺もしかして召喚者の中でも落ちこぼれの部類に入る?

 

「・・・」

 

「まぁ落ち込むな。人それぞれだ。でもこのままでもまずいしどうしたもんかと思案していた所なのだよ」

 

「良ければ私が保護しましょうか?」

 

「じゃあ作り方教えろな?」

 

 ニヤっと笑う伯爵

 

 ああああああああぁぁぁしまったあああああああ我慢出来なかった!くっそ!くっそ!

 

「いつ言ってくるか待ってたぞ。焦ったな」

 

「へいへいわかりましたよ」

 

「おっ本性が出たな?でもそっちの話し方の方がいいぞ。さっきまでの話し方だと堅苦しくてな」

 

「わかりましたよ。普通にしますね。まぁでも教えてもいいですけど、こっちだって商売ですからね。商品として売り出さないと誓えるならいいですよ。」

 

「わかったわかった。ちなみにその職人ももしかして召喚者か?」

 

「えぇそうです。ただ何故かその職人は顔が魚の半魚人になってしまったので、その弟子を派遣でいいですか?」

 

「わっはっは!なんだその残念なヤツは。何かの呪いか?かわいそうだな」

 

「じゃあ探してるのも頼みますよ?じゃあ何日か商店の街に滞在しますので、その召喚者の方の手配よろしくお願いします」

 

「わかったわかった。じゃあその時に職人もよろしくな」

 

 

 諸々契約書を交わし街へと戻る

 

 

 はぁ疲れた。まぁ後ろ盾も手に入った事だし良しとしよう。

 

 アイツらちゃんと探してるかなぁ?

 

1話目に村の戦力とかを書きました。良かったら見てください

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