驚きの進化
翌日、キヨシの体調が戻った為、新天地に向かった。
向かってる最中にキヨシにスキルの事を聞いてみる。
どうやらスキルは魔法とは違い魔力を使わない為魔力切れを起こす事はないそうだ。ただ余りに強力なスキルは一日の回数制限があったり斬撃みたいなスキルは体を動かすので体力や気力を使い切って動けなくなる恐れがある。キヨシが村にいた頃は年寄りに最低限の余力は残すように散々言われたらしい。
そうだよな。ゲームみたいにテイムの上限があったりで無制限に増やせるとは思えないし増えすぎても維持が大変だしなぁ
なんて話しをしながら拠点に着くと空が茜色に染まり出した。火を付ける木を探しに森へ入る事にした。キヨシには馬車の側で待機して貰い、事前に笛を渡しといた。もし何か問題が起きてもすぐに向かう事ができるようにである。
森にくるとすでに薄暗くなっており奥に行くと危険な為、入口付近で木を集める事にした。山肌を伝い10m程進むと茂みがあり、掻き分けながら進むと洞窟を見つける。
......
...
すぐにキヨシを呼びに行き、洞窟まで案内をする。
「なぁキヨシ?これってアレだよな?」
「た、多分間違いないないとお、思うんだなぁ。」
ダンジョンが目の前にあった。なんでわかるかって?
【ようこそダンジョンへ!】
と木の立て看板に書いてあった。
最初ダンジョンっていう名前のお店かな?とは思ったが薄暗いし、こんな所へ誰も来るハズがない。
それにしてもラッキーだ。もしテイムが成功すれば人海戦術ならぬ魔物戦術で魔石だったり宝を手に入れる事が出来るかもしれない。近場で誰も入ってないダンジョンがあるのは期待が膨らむし、将来俺が入らなくても弱い魔物しかいない階層なら魔石だけでも集めまくればいい小遣いになるぞ。
とは言っても全てはテイム次第なんだよね...
ここは後回しとして馬車が心配だから、とりあえず戻ろう。
翌日キヨシには伐採用の斧を持って森に入ってもらい10cm~30cmの丸太をできるだけ沢山持ってきてもらう事にした。重くて持って来れないものに関しては二人で馬車に乗せた。
伐採してもらってる間に直径30cm深さ50cm程の穴をスコップで等間隔に掘っていく。大体10m四方にし、木の枝等を取った丸太を穴に差し込み、地上より高さ2mくらいになるようにした。細い丸太は紐でがっしりと束にする。
昼には3分の1位丸太を差し込めたのでこのまま行けば夜までには終わるなと思いながら昼食をとってるとキヨシがおもむろにゴブリンの討伐部位である鼻と魔石を渡してきた。
「えっ?どうしたのコレ?」
「き、昨日の夜番の時とさ、さっきの伐採の時に退治したんだなぁ」
「なんで呼ばねえんだ!テイムできたかもしれないじゃないか!」
「!!!」
ダメだ...キヨシは考える事はできそうにないから、とりあえず用件だけ伝えて動いてもらえるようにしよう。
はぁとため息をしながら残りの作業に取り掛かる。
何とか夕方までに柵を完成させる事ができた。
と言っても素人が作ったものだから多くの魔物が来たら壊されるかもしれなく交代で夜番に着いた。
翌日起きるとキヨシが辛さそうに朝食を作っていた。さすがに交代とはいえ数日夜番をしていれば辛いよな。それも今日まで。もし今日うまく行かなければ全部計画の見直しをしないと行けなくなる。
朝食後、ある程度の魔物のいる方角がわかるらしいキヨシの後ろについて行き、はぐれたゴブリンに狙いを定め背後からマーキングを行う。マーキングをした瞬間ゴブリンがこちらに気づき、凄い速さで向き直してくる。
驚きすぎて動けなくなった俺にゴブリンが迫ってきた。横からキヨシの矢が飛んできて事なきを得た。
あっぶねー!
これからは遠くからマーキングしよう。
......
...
次のターゲットに狙いを定め遠距離からマーキングをする。すぐに隠れ様子を見るとゴブリンが左右を警戒している。
背後ががら空きになったのを見計らいゴブリン目掛けて一気に距離を詰めて剣を振るうものの一撃で倒せなかった。
その後何匹も相手をし少しレベルが上がったのか、やっと一撃で倒す事ができるようになった。そしてテイムが完了し、なんとなく繋がりを感じるようになった。
その後は早く、魔物戦術で偵察を行い、一匹でいるゴブリンを探してもらった。繋がりというか念話?みたいのができるようになり
「頭ぁ!こっちにいますぜ!」
繋がってるせいか、どこに配下のゴブリンがいるのかわかるようになったが、何故かゴブリン達は俺の事を、お頭や頭ぁとか言うようになった。なんか盗賊にでもなった気分だ......
そして21匹のゴブリンのテイムに成功した。もしかしたら20匹で終わりと思ったけどまだ行けそうだ。とりあえず人手というかゴブリン手は手に入った。夕方全てのゴブリン達に拠点に戻ってくるように言うと、なんだか様子がおかしい。普通ゴブリンは60cmくらいしかないものが個体によっては1m位の大きさになっていた。同時に筋力も上がっていた。
「お頭ーおかげさまで強くなりましたぜ!」
テイムが21匹までになった後、3匹×7グループに分け2グループは拠点の防衛。他の5グループはゴブリンの鼻や魔石等の素材集めに回ってもらった。3匹いれば敵のゴブリン1匹なら簡単に倒せる計算だからだ。剥ぎ取りも1匹がやって残り2匹が周囲の警戒ができる。そして帰ってきたらこんな事になっていた......
魔物は夜眠らないという事で、夜の内に木の伐採をしてもらった。強くなったゴブリン達なら斧を持っても振るう事は大丈夫だろう...
......
...
翌日、久しぶりにゆっくり眠れたので、疲労が完全に取れていた。馬車から出ると目の前には200本近くの丸太が転がっていた...
筋肉をアピールしてくるゴブリン軍団。
ははは...これすでに俺より強いんじゃない?集団で襲われたら一瞬でやられるでしょ?大丈夫だよね?テイム生きてるよね?
キヨシが隅でガタガタ震えてる。ゴブリン達は俺と繋がってるから会話もできるし大丈夫だけど、キヨシからしたらゴブリン達はゴフゴフ言ってるだけみたいだし...
朝食後、今後の事を考えて拠点の拡張を始めた。今回は50m四方にしよう。
指示をするとテキパキと動き始める...
あれ?ちょっと知恵がつきすぎじゃない?君達ゴブリンだよね?
手持ち無沙汰のゴブリンに対しては昨日拠点防衛していたゴブリン中心にしてレベル上げをお願いした。戦力の底上げは重要だしな!(特に俺のために
かなりの速さで拡張は進み、少しづつ森へ行くゴブリンが増えてくる。昼食後森から血まみれで出てくるゴブリンがいた。
すぐさま駆け寄り怪我の状態を確認する。
どういう事だ?傷自体は浅く、殆どが返り血だった。よく見ると、オークがボコボコになって討伐されていた。棍棒で滅多打ちされたんだろう...
頭が、ぺちゃんこになってた
「頭ぁオークをボコボコにしてきやしたぜ!」
うん...君達ゴブリンなのにオークに勝てるんだ...
なんでも2チームでヒット&アウェイで倒したらしい。え?戦術もできるの?
恐ろしい。こいつらどこまで行くんだろう...
折角倒してきたんだし夜は
オーク肉を使おうか...
その夜、塩のみで焼肉をしたオークを食べてみた。
......うぉぉぉ!何コレ!めっちゃうまいじゃん!王都で食べたのより全然美味いぞ!
キヨシも一口食べると
「お、美味しいんだなぁ!」
と何回もおかわりするもんだから、それを見ていたゴブリン達が興味津々でねだってきた。
口に入れると口々にうまいうまいと叫び出し結局丸々1頭全部がなくなってしまった。
翌朝起きると、目の前には解体されたオークが5頭並んでいた...
ゴブリン達が目を輝かせている。
これ全部焼く事になるのかー...と憂鬱になってるといい事を思い出した。これって別に俺が焼かなくてもいいんじゃね?かなり先の話しだった計画を前倒しにしよう
「あー悪いけどこれ全部今から街に売りに行くから」
と言うと
「そりゃあねぇっすよ頭!」
「俺達の苦労が水の泡じゃねぇっすか!」
大ブーイングが起きる。中には木の板で作った看板を掲げている。肉の独占反対!とか魔石だけじゃもう食っていけねぇ!とかもうゴブリンとは思えないような進化をしている。
まぁ待て待て最後まで聞きなさいな。と落ち着かせる
「今からこのお肉とかを売って金にして俺より料理のうまい料理人を連れてきたり、様々な調味料や鍋とか買いに行ってくるんだよ」
というと
「やっぱり頭だ!そうじゃないかと思ったんだよ。うんうん」
「俺は信じてたよ。なんていったって俺達のお頭だもんな!」
「やっぱりお頭は優しいぜ!一生ついていきやすぜ!」
ものすごい手のひら返しである
全員が、ぐふふふふと笑ってるがゴブリンだから邪悪な笑みにしか見えない
まぁ今回の事がなくてもそろそろ行かないとなとは思っていた。ゴブリン達が頑張りすぎて溜まってきた討伐部位や魔石に薬草も大量にある。
準備をし、街に向かう。2~3日で戻る事を伝えて出発する。
無事に夕方には街に着き、ギルドへ向かう。まずは薬草の束を渡す。大量にあった為、すぐに二人共ランクアップが完了した。
次に討伐部位である。大量にある為、ギルドの裏の倉庫に回るように言われた。専門の職員に今度からはこまめに持ってくるようにと怒られた。
なんでこんなに大量に持ってるんだ?と突っ込まれたが、チームでやってて溜まったから売りに来たと誤魔化したが、まぁバレたらバレたでしょうがないし、実際チームでやってるようなもんだしな。いつかはバレるんだし...最悪バレたらゴブリン達はダンジョンに避難させよう。
オーク肉は滅多打ちにされていた為、ブロック肉があまりとれずステーキ肉とかは難しいとの事。なので多少の値引きは目をつぶるしかない。
かなり時間が掛かったが皮袋には金貨銀貨がギッシリと詰まっておりかなり懐が暖かくなった。
ギルドランクもEまで上がった。
査定中に宿屋にキヨシを向かわせていたので前回泊まった宿に向かう。




