使徒としての宿命
鬼は唯一生き残ったエルフに永遠の命を与えた。醜い老人の姿と引き換えに。名はアゼル。今はなきエルフ村の村長の息子であった。鬼は彼を使徒と呼び「5つの”負の言葉”」を探してこいと命じた。
それから1000年、アゼルは鬼の呪いから解放されるべく「5つの”負の言葉”」を捜し続けて旅を続けている。彼は涙のように真っ青な空を眺めながら、頭の中で地図を描く。
昔、タイヘイヨウと呼ばれた大海は、古代詩呪術の影響で枯れ、砂漠となっていた。そのほぼ中央部にある、モーレピアという王国だけは、不思議と綺麗な水の湧き続ける噴水があり、人々の生活を支えていた。
その西側にあるティアマト共和国は、資源が足りず、絶えず紛争が起こり、大勢の人が命を落としている。東側のドルエンという国は、モーレピアと提携して商業都市として栄え「お金」を中心として成り立っていた。
北にある極寒の地アズールは、人狼や化鳥など、人外の生物が多く生息している。
そんな広い世界から「5つの”負の言葉”」を捜せというのである。アゼルは深い溜息をついた。
「今度こそ、終わらせてくれ……」
しわくちゃな手を太陽に向けて掲げた。U字型の月の紋章だ。突然紋章が光りだし、一直線に、ある方向を指した。
「うむ。アズール地方か。老体にはちと応えるのぅ」
そう言うと、アゼルはワープの魔法を使って、アズールへと向かった。