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追い書き
この手記、もとい伝奇は、私の生きた証である。
私の人生には、そこには記せないほどの沢山の言葉と、多くの犠牲があった。
そして、やっと人の心がわかった頃には寿命が来る。惜しい話だ。
先生、むこうではトーマスに逢えましたか。あの異母姉妹のように喜びの抱擁を交わしていることを願います。
私は死ぬのが怖くありません。なぜなら、愛しているあなたに逢えるからです。このような老体になってしまいましたが、あの世ではどうか私を眼中に入れてください。そしてまた、あの穏やかな声と顔を見せてください。
あの世に書物があるのかわかりませんが、あなたたちがいれば、私の意識しなかった“孤独”も晴れるでしょう。先生に逢えることを思うと、不思議と口角が上がるのです。これが“笑む”ということなのでしょう。
私に感情をくれた先生。ありがとうございます。
もうじき私もそちらへと向かいます。
――ニコラ――
最後までお付き合いありがとうございます。あとは外伝をお楽しみください。