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解ける糸1

 無事に王城の通用門に戻った。そこでアンは、待ち構えていた兵士に説教をされ、ディアドラからもやんわりと注意を受けた。

すると、目に見えてしょんぼりとしたアンにディアドラは慌てた。


「だって、危ないでしょう? 私のために来てくれたのは嬉しいけれど、アンが怪我をしたら私は自分を責めてしまうと思うのよ。だから今回みたいな無茶は止めてほしいと思うの」


 その言葉に喜んだアンは、自重する事を二つ返事で約束した。


 ジョンの先導で人気の少ない通路を通り、ゲストルームに辿り着く。

 扉を開けて滑り込むように四人が室内に入ると、留守を言いつかっていた侍女がディアドラの姿に安堵した表情を浮かべた。


「ごめんなさいね? 私、迷子になってしまったようなの」

「…迷子……ですか?」


 子供の頃から出入りしてかくれんぼや鬼ごっこをしていた王城で、ディアドラは迷子になっていたと恥ずかしそうに言った。


「そうなの。王城の隅々まで知っている気でいたら、変な所に迷い込んでしまったみたなのよ。お蔭でドレスを埃だらけにしてしまったわ。恥ずかしいから、この事は内緒にしてくれるわね?」


 そう言ってディアドラは指輪を外して侍女に握らせた。


「お部屋を片付けてくれたのね。ありがとう。直ぐに着替えると言いたいところなんだけれど、少し疲れちゃったの」

「お茶をお入れいたしますか?」

「気が利くのね、お願いするわ。ウィルとジョンもお茶を飲んで行くでしょう?」

「朝の鍛錬の服装のままなんだが……」

「私だって埃だらけのままよ。良いでしょう? 今日は特別」

「いただこう」


 ウィルフレッドがソファーに腰掛けるとジョンも同じように腰掛けた。

 ディアドラは紅茶を飲むと、その暖かさと香りに心が解れて行くのを感じた。


「美味しいわ。ありがとう」


 侍女を下がらせると、ディアドラはぐったりとソファーに沈み込んだ。少々行儀が悪いが、今回は構わないだとうと思ったのだ。


「本当に……疲れたわ。一体何だったのかしら?」

「その事何だが、奴らは目的を言っていたのか?」

「良くわからないのよね? 洋服を交換していたせいで、アンと勘違いをしたと言っていたわ。ドーラと呼ばれていたけれど、本人はディアドラが名前だと言っていたわ。アンに色々嫌がらせをしていたと言っていたのだけど、砂糖壺を塩に変えたり、とか。そんな事があったの?」


 問いかけられたアンは困惑した様子だった。


「あまり紅茶に砂糖は入れないので……」

「……」


 どうやら不発だったようだ。

 アンは、合わせていた手をにぎゅっと力を入れて握り込んだ。


「私に間違えられて攫われてしまったんですね……」

「アンのせいじゃないわ。そんな事を言ったら、私のせいでアンが嫌がらせにあっていた事になってしまうわ」

「ディア様のせいじゃありません」

「そう言ってくれると思っていたわ。一緒の事よね?」


「何でもディアドラが王妃になるべきで、邪魔者には嫌がらせをしていたのですって。でも、アンは全然堪えなかったらしくて、強硬な手段に出たらしいのだけど……あの人、同じ名前のせいで、私と自分の区別がついていないようだったわ。ディアドラの名前で、アンに嫌がらせをするようにと王城の人達に言って回っていたようなのよ。その辺は、ちゃんと調べて訂正しておいて?」

「わかった。調査して訂正する」


 ウィルフレッドは頷いて調査を請け負った。


「そもそも、私は侯爵家の人間よ? 何で王城の使用人が私の名前で言う事を聞いちゃうの? 教育が成っていないわよ」

「面目無い……」


 ディアドラは眉間に見た事が無いほど深い皺を寄せて苦言を呈した。ウィルフレッドはただ素直に謝り再教育を約束した。


「あの、王城の皆さんがディア様の名前で言う事を聞いてしまったのは、ディア様がウィルフレッド王子と結婚するんじゃないかという噂があったからなのでは……」


 アンの控えめな指摘に、ディアドラはため息をついた。


「あの噂ね……都合が良かったから放置していたのだけれど、こんな事になるなんて思わなかったわ」

「あの噂はディアのせいだったのか!」

「私のせいじゃないわよ? ただ、その噂を放置しただけよ。どれだけ見合いの申し込みがあるか知っている? 噂一つで数が減ってとても楽になったのよね」


 本当に大変だったのだから不可抗力だとディアドラは訴えた。


「確認ですが、本当にただの噂なんですね?」

「だから、ジョン。そう言っているでしょう?」

「お二人に将来の意思は無いと」

「そう言っているわよね?」

「すいません、確かめたかっただけです」

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