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切れた糸2

 ディアドラを攫った者達は手早くロープで縛り上げられた。特にわめいて抵抗していた女は布で口を塞がれ、気が付くと周りはすっかり制圧されていた。


 気持ちを落ち付けたジョンは、改めてディアドアの様子を見た。

 ドレスはヨレヨレの埃だらけだが、背中がぱっくりと開いている以外に切れたり破れたりとしている所は見当たらなかった。

 少しだけ安心したジョンは、隠し持っていた抜き身の短剣を鞘にしまうと、上着を脱いでディアドラに差し出した。


「どうぞ、着て下さい」


 ディアドラは、着やすいようにとジョンによって広げられたジャケットに袖を通した。長い袖を折ろうとしたが、刺繍の施された厚手の袖だったので諦めた。

促されるまま、建物から外へ出た。

 眩しさに目が眩んだ。

 徐々に光に慣れ、視界に色が戻る。

深い木々に周囲をぐるりと囲まれていた。どうやらディアドラが居たのは、森の中の小屋だったらしい。


「ディア様」


 声のした方向を見ると、木陰からアンが飛び出して来ようとして、ウィルフレッドに止められている所だった。


「アン。どうしたの!?」


 ディアドラは、ジョンにエスコートされ足早にアンの元に歩いてゆく。

 ディアドラが建物から十分に離れたと思ったウィルフレッドは、掴んでいたアンの腕を離した。

 アンは、真っ直ぐにディアドラの元に走り寄って抱きついた。


「ディア様。心配したのですよ。ご無事で良かった」


 アンにぎゅうぎゅうと抱きしめられ突然の事に驚いたディアドラだったが、ふわりと嬉しそうに抱きしめ返した。


「心配してくれたの?ありがとう。この通り無事よ」


 二人が嬉しそうに再会を喜んでいる脇で、その二人を見つめていたジョンの脇をウィルフレッドが肘でつついた。


「羨ましいか?」

「……微笑ましいなと思って見ていただけですが?」

「ほう?」


 ジョンの言葉をウィルフレッドは全く信じていない顔で聞いていた。


「ディア、アン嬢。今回の事は伏せてあるからな。後は兵に任せて、感づかれない内に戻るぞ」


 半数の兵が残り捕えた者を見張り、他の半数がウィルフレッド達を護衛しつつ王城へ戻り応援の兵を連れて戻るという事になった。


「え? お一人で馬に乗って来たの? これ、女性用の鞍じゃないわよ」


 繋がれた馬を前にディアドラは驚きを隠せなかった。

 どれも大きな軍馬で、乗せられている鞍も横向きに乗る女性用の鞍では無く、跨って乗る鞍だったのだ。


「ディア様が心配で居ても立っても居られず、お願いして付いてきたのです。急いでいましたので、そのまま乗って来てしまいました。幸い、領地ではこの普通の鞍にも乗っていたので問題はありませんでした」


 アンの中で、乗っていた兵士を蹴落として馬を奪った事は無かった事になったようで、耳にした兵士達はこっそり蹴落とされた兵士に幸せになれよと念を送った。

 ディアドラはというと、純粋に驚いた様子だった。


「ドレスで? 跨って来たの? まぁ」

「大丈夫です。スカート部分が翻らないよう慎重に、こう……」


 実践しようとしたアンは、ウィルフレッドとジョンと兵士達に、来る時は緊急事態であったが、帰りはさすがに目のやり場に困るからと止められた。


 ディアドラはジョンの馬に同乗する形で、アンは兵士の一人の馬に同乗する形になった。


「……そんな顔しないで下さい。仕方ないでしょう。万が一誰かが見ていたら、アン嬢の立場がまた悪くなるんですよ」

「色んな女性を乗せれば良いのか?」

「プレイボーイになるつもりなのですか? お止めになった方が良いと思いますけど……アン嬢からの心象が悪くなる気がします」

「くっ」

「だから、根回しが大切だと言っているじゃありませんか」


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