テンプレをテンプレと誰が決めた??
何とか1話仕上がりました!
次の話は少し長めになるので、投稿に時間がかかるかも知れないです。
冒険者ギルドに登録するために、俺は大通りを歩いていた。そこで目にするものは、日本では見ることの出来ないものばかりだ。
…こうして現実を突きつけられると、納得するしかないよな。それに、本当にゲームの中に入ったみたいで、興奮しないって言ったら嘘になるし。
怪しくない程度に辺りを見回しながら歩く。ただでさえ不審者のような格好をしているのだ。その上挙動不審だったら、職質されても文句は言えない。
「───しっかし、本当にファンタジーだな。見るもの全部が珍しいや」
例えば、街の中なのに道が舗装されていなかったり、大通りを馬車が走っていたりする。
他にも鎧を着て剣を背負っているものがいれば、ローブを着て杖を持っている者もいた。さらにはいかにも魔法使いといった格好をしている者もいる。おそらく彼らが冒険者なのだろう。
あんな格好をして街中を普通に歩けるなんて、さすが異世界だな。
見るもの一つ一つに内心興奮しながら歩いていると、
「───おっ!ついに見えたか…」
周りの景色に夢中になっている間に、 ゲーム内でよく見た紋章─── 自由の象徴である翼と、武力の象徴である剣を合わせたもの が入った建物が見えてきた。
…とうとうたどり着いたみたいだな。もし入ったら、テンプレ通り絡まれたりすんんかな?まぁ、絡まれたいとは思わないけどな。
ほぉ〜。と感心しながら近付いていくと、ギルドの木製の扉は開け放たれており、中から強烈な酒の匂いが漂ってきた。
…どうやらゲームと同じで、酒場が併設されているようだ。
正直に言うと酔っぱらいがケンカをしまくるので、酒場を作らないで欲しい。しかし酒場は、冒険者同士の出合い・情報交換の場として重宝する。
それに加えて、仕事終わりの冒険者がよく酒を飲むので、ギルドとしても儲かるのだろう。
「はぁ…。ここで止まっていてもしょうがないし、さっさと入るか」
ようやく覚悟を決めて、ギルドの中へと足を踏み入れる。
ギルドのなかは1フロアぶち抜きになっていて、左側がクエストボードや窓口になっていた。右側は酒場で、かなりの広さが確保されている。
オボロが入ってきたことで視線を向けてくる者はいたが、絡まれることは無かった。
その事に内心ホッとしながら、窓口の方へと歩いていく。
窓口は、受付・買い取り・鑑定がセットになっており、それが3つ並んでいた。
そして窓口に向かうオボロを見つけて、一番近い受付嬢が声をかけてきた。
「ようこそ、冒険者ギルドへ! 本日はどのような用件でしょうか?」
オボロに話しかけてきた女性は、受付嬢を任されるだけあって美人だった。その事に、特に関心も示さず
「冒険者として登録をしたい」
と、ぶっきらぼうにいい放つオボロだが、受付嬢は笑顔を絶やさずに対応していた。
「登録で得したら、ギルドカードの発行料に5万エルのお支払いと、こちらの登録用紙にご記入下さい」
差し出された登録用紙に、必要事項を書いていく。書くと言っても名前・職業・スキル・魔法ぐらいのものであった。他の記入欄もあったが、必須ではなかったため省略した。そしてこの世界の言語が日本語だったため、問題なく記入を終えた紙を受付嬢に渡す。
「はい、ありがとうございます。え~と、確認しますね。お名前がオボロ様、職業がシーフで、スキルが≪短剣術≫ ≪投鏑≫ ≪気配探知≫、魔法が≪治癒魔法≫ ≪雷魔法≫ですね。間違いはございましたか?」
「いや、問題ない。続けてくれ」
「はい!では続いてギルドの規則についての説明ですが、この冊子を確認してください。もし説明が必要なら、今させて頂きます」
あくまでも笑顔を崩さない受付嬢だが、あまりにも反応が薄いオボロに冷や汗が止まらない。横柄な態度には慣れているが、こういった反応をされることは少なく、内心焦りが止まらないのだ。しかし、プロ根性で表には出さないでいる。
「冊子だけでいい。説明はいらない」
受付嬢の内心をまったく知らないオボロは、早く終わらせようと最低限の受け答えしかし無かった。
「わかりました。では、こちらがオボロ様のギルドカードになります。もし紛失された場合は、再発行に10万エルいただくのでご注意下さい。最後に、ギルドカードに血を垂らしてください。そうすれば、オボロ様が持ち主として登録されます」
受付嬢から受け取ったカードに、腕に針を指して血を垂らす。オボロの血がギルドカードに触れる瞬間、カードが蒼白く光り登録が完了した。それを確認したオボロは、登録料の5万エルを支払った。
「確かに受けとりました。なにか困ったことがあったら、遠慮なく聞いてください。お役にたてると思うので」
料金を確認した後、受付嬢が軽くお辞儀をした。確かにお世話になったので、オボロも軽く会釈をする。
「ありがとう。何かあったら、頼らせてもらうよ」
そうぶっきらぼうにお礼を言って、さっさとギルドを出ていってしまった。受付嬢はそれを少し驚いた顔で見送っていたが、オボロが気がつく事は無い。
ギルドの登録が終わったオボロは、今日停まるための宿を探していた。そして大通りに良さそうな店を見つけたので、中に入っていった。
「ようこそ、安らぎ亭へ!本日はお泊まりですか?」
受付にいたのは12歳くらいの少女で、帳簿から顔をあげこちらを見ていた。
安らぎ亭は建物事態は普通の作りだが、隅々まで掃除が行き届いており、清潔感があった。
「1週間泊まりたいんだが、1人部屋は空いてるか?」
「はい!空いてますよ!1週間分の料金ですと、一泊が5000エルなので…35000エルになります!食事は1食600エルで、2食宿でとられるなら1000エルになります。後、体を拭くためのお湯は200エルです」
「じゃあ1週間分の宿泊に、毎日2食つけてくれ。ちなみにお湯は要らない」
「わかりました!えっと、料金は合計で…42000エルになります」
今のオボロの所持金が、ほとんど無くなってしまうがしょうがない。少し名残惜しそうに、カウンターに銀貨5枚を置いた。
「50000エルのお預かりで、8000エルのお返しです。お客さんの部屋は、階段をあがってすぐの部屋です。食事の時間は、朝夕6〜8時の間に済ませるようにしてください」
「分かった。遅れないようにするよ」
「はい!ありがとうございます。あと、最後にお名前を聞いてもよろしいですか?」
「…オボロだ。今日から冒険者になった」
「オボロさんですね、私はアリンと言います。何かあったら、遠慮なく言ってください!」
「…わかった。1週間よろしく頼む」
軽く会釈し、1週間分の食券と部屋の鍵を受け取り、腹が減っていたので食堂へと向かう。
宿の食堂は、どちらかと言うと学食のように感じられた。食事は元々できていて、それを食券と交換するシステムのようだ。
カウンターで食券と料理を交換し、空いている席に座った。
目の前の料理から漂ってくる香ばしい匂いに、思わず唾を飲み込む。
今日のメニューは、肉と野菜の煮込みに、パンとスープだった。
「いただきます」
パン。と手を合わせてから食べたじめた。
まずはメインの肉から手を付けてみる。なんの肉かはわからないが、口に入れた瞬間肉汁が広がる。予想以上の美味しさに、食べるてを休めることはなかった。
スープも何でだしを取っているのか分からなかったが、これも美味しかった。
しかし、黒パンだけはぼそばそしていて、あまり美味しくはなかった。
「ごちそうさまでした。黒パン以外は美味しかったな。食事が美味しいとなると、この世界でも生きていける気がする」
なかなか満足のいく食事ができた事で、心の奥底に汚泥の様に溜まっていた不安が和らいだようだ。ほう…と息が溢れ、リラックスする。
あまり食堂で長居するのは気がひけるので、食べ終わった食器をカウンターに返して自分の部屋に入って行く。
ギィ。と木製のドアを開けて入ると、中はベッドがひとつあるだけであまり広くはなかった。
とりあえずベットに座るが、かなり固くて寝心地は悪そう…。だが食事が美味しかったからか、あまり気にならなかい。
「今日は疲れたし、さっさと寝ることにしよう」
ステータスウィンドウをだし、装備変更を行うと、一瞬で部屋着に着替えることができた。
そして生活魔法の《クリーン》を使い、体についた汗や埃を綺麗にする。これはゲーム開始時から使える魔法で、頭で念じるだけで使える優れものだ。
…魔法と言ってもスキルに近いもので、他の攻撃魔法を使えるかはまだ分からないのが残念だ。
「魔法って、まじで便利だな~」
そんな懸念はともかく使い勝手がいい事は確かなので、今は目の前の誘惑を優先することにしよう。
ベットに身を預けると沈むように意識が薄れて行く。定まらない思考の中で他の魔法も試すことを誓い、眠りへと落ちていった