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ツンデレ系アサシン、異世界にてパティシエを目指す   作者: こたつ猫
第一章 ツンデレ系アサシン、異世界転移したそうですよ
2/12

オボロ、異世界にアサシンとして立つ

前回から随分遅くなってしまいましたが、続きを投稿します。

楽しんでいただけると幸いです!






「んん~、ここはどこなんだ?こんな森の中に入ったかな?」



…何にも思い出せないな。酒を飲んでいた記憶はないんだが、無意識に酒折を始めたかな?


あの常識ブレイカーな母親に飲まされた可能性もあるが…。


クラクラする頭を抑えながら、周囲を見回してみる。…うん、見たこともない場所だな。


現状を把握するために、いまだにハッキリしない頭で、直前までの自分の行動を思い出してみる。




「──確かじいちゃんの家に行く途中で、疲れたから川原で休憩していたはずだ。間違っても、森の中には入ってないはず…ん? 川で休憩して………あっ!!」




断片的な情報を元に、最後に見た光景を思い出すことができた。


──そうだ。川の中にいたら動けなくなって、ありえないが、川底に飲み込まれたはずだ。そのせいで意識を失ったはずだが、なんで森の中にいるんだ?


…今までのことが全部夢で、今もリアルな夢を見ているにすぎないのか……。これは試してみるしかないか。


古来より夢かどうかを確かめるといったら、頰をつねるしかないよな。ここは、思いっきりやってみるか!


──ムギュウ…!




「……痛ぇぇ! 全然夢なんかじゃない!」




マジで痛い。涙が出るほどには痛いわ!


……はぁ。これで少なくとも夢ではないと分かったが、新たな疑問が生まれたな。


──来ている服が違うのだ。


川に落ちる前は、確かジーパンとTシャツを着ていたはず。それが何でか、全身真っ黒の不審者スタイルに変わっているのだ。


…正確に言えば、厨二病患者が夜な夜な着ていそうなファンタジックな格好だ。


全身を隠す漆黒のコート。両手には不思議な魔法陣が描かれた、これまた漆黒の手袋。そんな感じで上から下まで、真っ黒スタイルなのだ。


要所要所に銀の刺繍が煌めき、控えめに言っても中々センスがいいと思われる。…厨二病患者限定だが。




「…こんな格好じゃ、恥ずかしくて人前になんか行けないぞ……」




脱ごうとしても脱げない服を引っ張り、はぁ。とため息をつく。


…着心地は快適なんだが、コスプレにしては素材がよすぎる。


金を稼ぐことに関しては天才的な母親のせいで、望月家は裕福だった。そのお陰か、小さい頃から高級品に精通していた朧だが、こんな素材は見たことは無かった。


──この服は何でできているんだ。触り心地はしっとりとしていて、吸い付くよう。それでいて薄い布なのに、フワフワなクッションのような沈み込む感触がする。全く未知の素材だ。どうやって加工したかのすら、全く想像できない。


…まぁ、材質のことは置いておくとしてだ。一番不思議なのが──フードとマスクだ。




「…このフードとマスク。どうやっても外れないんだが……」




──そう。どうやっても外れないのだ。


鼻までスッポリと覆い尽くすフードは、被っているはずなのに視界が良好だ。まるで遮るものがないみたいに。


それはマスクも同様みたいだな。マスクといっても忍者がするような、布を口に巻いたような感じで、厨二病感を倍増させている。


問題なのが、マスクをしていても呼吸がしやすいのだ。…寧ろ、スムーズかもしれないくらいに。




「……どうなってんだ、これ? こんな不思議素材開発されてたっけなぁ〜」




むぅ〜と腕を組んで考え込む。


──見たことのない服装に、見たことのない場所。不確定要素が多すぎるな。行動するにしても、情報が足りなさすぎる。これじゃあ、どうしようもないな……


まさに五里霧中といった様子で、途方に暮れてしまう。



…服装が変わったせいで、携帯がなくなっちまったのが痛いな。救難信号すら出せない。


この状況を作り出したのは、全てあの川が原因だろうが、もう跡形も無いからなぁ…調べようが無い。コ〇ン君も真っ青だよ、畜生が!


ケっ!と内心やさぐれて、何かに八つ当たりするように右手をふりまわす。



───フォン



闇雲に振り回していた右手の近くから、聞き覚えのない機械音が響く。恐る恐る音のした場所をみると


──空中にディスプレイが表示されていた。




「──何が起こった。仕掛けなんて見当たらないぞ!」




フィヨフィヨと浮かぶディスプレイだけが、静かな存在感を放っている。


…どういう事だ。さっきまでは、確かに何も無かったはずだ…


蒼白くひっそりと空中に浮かび続けるディスプレイ。これがどこから現れたものか分からないが、情報を得るチャンスかもしれない。



そ〜っと手を伸ばし、ディスプレイに触れると、


──ブゥン


ただ光っているだけの長方形の光版に、さあ〜っと文字がさざ波のように広がった。




「……! こ、これは…!」




──キィィン


澄んだ音と共に画面の動きが止まって、そこには──





名前 望月 朧

性別 男

年齢 19

種族 人 間

レベル 1

職業 アサシン


体力 780/800

魔力 550/600

力 400

速さ 1200

防御 700

精神 800

耐久 300

幸運 1000

魅力 900


スキル

暗殺術(10) 暗器術(10) 剣術(6) 双剣術(8) 縮置(8)

短剣術(10) 体術(10) 投擲(10) 身体強化(10) 気配遮断(10) 隠密(10) 探索・探知(10)鍛冶(5) 錬金術(6) 料理(8)

全属性耐性(10)


固有スキル

インベトリ 鑑定 獲得経験値50倍 全言語マスター 隠蔽


魔法

水 ・雷・闇・回復・土・生活・ 付与


称号

最強のアサシン

暗器を極めしもの

地上最強の天の邪鬼

異世界からの来訪者






「──まさかこれは、俺のステータスなのか!」




どこか懐かしい、ゲームのステータス画面のようなものが映し出されていた。


…どういう事だ?俺の名前が表示されているから、俺のステータスだと思うんだが…いつからアサシンになったんだ?


───それに、気になる事が一番最後に書いてある。




「…異世界からの来訪者か。これを鵜呑みにすると、ここは異世界ってことになるのか」




───ありえないと、切って捨てる事ができないな。


今日は不思議な事が多すぎる。突然川底に引き込まれたら森に放り出される。さらには、ステータス画面が現れるか…。


現実的にはありえないだろうが、今目の前で起きていることだけは受け入れよう。…そうしないと、この先起こることに対応できないだろうし。




「───よし。気持ちを切り替えていこう!できるだけ、柔軟な思考で受け入れていくんだ!」




パァン!両手で顔を叩き、気合いを入れる。まずは、このステータス画面を調べていこう。


… しかしこのステータスの表示の仕方、どこかで見た気がする。それにこの黒ずくめの服も、どうも頭に引っかかるんだよな…


思い出せそうで思い出せずモヤモヤするが、ピキィーン!頭に閃きが走った。



───そうだ!何で気づかなかったんだ!


この格好に、このスキル。そしてステータスの表示の仕方は、




「これって俺が昔やってたゲーム───≪Freedom World Onlien≫のアバターと同じだ」





≪Freedom World Onlien≫

オボロが中学生の時から始め、高校二年生の時までやり込んだネットゲームである。Freedom World Onlien、略してFWOはその名のとおり、自由をテーマにしたゲームだった。



FWOは剣と魔法の世界で、自分の好きなことが追求できることで人気があった。例えば最強の剣士になる為に必死にレベリングしたり、逆に戦闘を一切しないで生産職に打ち込む人。他には総数10万種類以上あるアイテムをコンプするためにゲーム内を飛び回る人や、大きな商会を立ち上げて億万長者になった人など、プレイする人によって楽しみ方が全く違うゲームだった。



オボロは中学生の頃に、暗殺者がかっこいい!と言う理由でアサシンを極め、今の趣味である菓子作りにはまり、この二つを追求した。そしてそこそこやり込んでいたFWOを、ある日を境にプレイできなくなった。──ゲーム会社が倒産したのだ。


それがきっかけでやることがなくなり、受験勉強を始めたのですっかり忘れていた。




「──なるほどな。色々疑問が残るが、ここはゲームに基づいた世界なのか…」




…まだ確定ではないが、選択肢の一つとしては一考の余地があるだろう。とりあえず、情報を集めよう。


まず、ステータスから確認していくか。え~っと、昔と違う所は…うわ、レベルと称号がだいぶ変わってるな。レベルは500近くあったのに1に戻ってるし、称号もほとんど無くなってる。


…だけど能力値はレベル30~40と同じくらいだな。初期能力が高くなって、伸びしろが増えたと喜ぶべきか…。それに、スキルや魔法が、そのまま残っていたっからよしとしよう。



次にアイテムだが…インベントリが使えるかな……っと、良かった。使えるみたいだな。ステータスと同じの画面で表示されるのは、便利でありがたい。




「肝心の中身は如何だろうか──」




…見たところ全部覚えているわけじゃないけど、無くなっているものは無さそうだ。けど、なぜか所持金がゼロになってる…。


これは本当につらいな、五年間ため続けた貯金が消えてるとは…。




「無一文でこの先どうやって生きていこうかな~」




レベルの消失や貯金の蒸発が、何気にS○N値をゴリゴリ削るな。


…まぁ。ゲーム内の貨幣が、この世界で使えるか分からないからな。あまり気にしないようにしよう。


しかし、インベントリを眺めていると、予想外のものを見つけた




「じいちゃんへの土産の菓子が、全部インベントリに乗ってる!」




オボロの前に移っているディスプレイには、確かに川に落ちる前に持っていた菓子類の名前が載っていた。思わぬ食料の確保にテンションが上がるが、逆に新たな疑問がわいてくる。




「消えているものと、増えている物の規則性が分からない」




今更分からないことが一つた二つ増えたって変わらないと開き直り、とりあえず森を抜けて街を目指すために歩き出した。




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