美少女がいるとご飯は百倍美味くなる
テストが終わり、ようやく1話かけました!!
23日に受験があるのでまた投稿が遅れるかもしれませんが、気長に待ってもらえると嬉しいです!!
「オボロさ〜ん。ごはんですよ〜!」
ベットの上で考え事をしていたオボロに、アリンから元気な声で訪ねて来た。どうやら食事の時間になっても現れないオボロを、わざわざ呼びに来てくれたみたいだ。頭の下がる思いである。
部屋の前で待たせるのも気が引けて、思考を中断して立ち上がった。ここから返事をすればいいんだろうが、せっかくなのでこのまま食堂に行こう。と思い立ち、ドアを開けた。
「……手間をかけてしまったみたいだな。忙しい時間帯だろうに」
「そんなことないですよ〜! ピークは過ぎましたし、いまは比較的に空いてますからね」
ニコニコと灰桜色のポニーテールを揺らしてアリンが答える。ふとステータス画面の時計を見ると、どうやらかなりの時間を考え込んでいたみたいで、食堂が閉まるギリギリになっていたみたいだ。
……早く食事を済まさないと、アリン達に迷惑がかかりそうだな。片付けにも時間がかかるだろうし、申し訳ない……。
「……なるほど。俺も早く食べるとする。今日のメニューは何だ?」
「え〜っと、ワイルドダックと野菜の炒め物、それとスープですよ!お客案には好評だったので、味の方は期待しててくださいね!」
「……そうか。昨日の料理も美味かったし、期待させてもらう」
「はい! ずずぅ〜っと期待してくださいね! ほっぺたが落ちるほどなんですから!」
自分の宿の料理に誇りを持っているのか、得意げなアリン。その表情年相応で可愛らしいく、にぱっ!という擬音がつきそうだ。
……妹がたらこんな感じなのかな? 大学にシスコンの友達がいたけど、妹がアリンみたいみ可愛かったら、そりゃ〜甘やかすよね〜。
長いこと見つめ過ぎたせいか、こてん。と首を傾げてアリンが不思議そうにしている。それに『なんでもない』と答えて、2人で食堂に向かった。
先ほどまで大勢の人で賑わっていた食堂は、時間が遅いせいかほとんど人がいない。ほとんどオボロの貸切状態だ。しかし一歩足を踏み入れただけで、鼻孔いっぱいに食欲を刺激する香りが漂っていた。……なるほど、アリンが自信を持っているのも頷ける。
今から出てくるであろうご馳走に胸を膨らませながら、アリンに促されて一番手前の席に座る。ここからだと厨房の中も覗けるみたいで、ふと視線を向けると鍋を持った女性に目が止まった。
──アリンと同じ灰桜の髪をバレッタでまとめ上げ、調理の邪魔にならないようにしている。そのテキパキとした姿は、長年慣れ親しんで来たことをこなすプロフェッショナルのようだ。歳は20〜30歳だろうか。エプロンに包まれたスラリとした体は、出るところは出ていながら、他場所は引き締まっている。
……アリンの母親だろうか。穏やかそうなタレ目に泣きぼくろが優しそうな印象を与える女性だ。見ているだけで癒されるというか、母性を感じさせる。常に悪巧みしているうちに母親とはお大違いだ。
……母さんもあれくらいおしとやかな人だったらな〜。あそこまで穏やかにならなくても、せめて息子を海外に置き忘れて来たり、学校に制服で来ないでほしいよ。 ……割と切実にそう願いたい……。
厨房で忙しそうに働く彼女を眺めていたら、地球にいるであろう母親の事を思いだしてしまった。考えてみればあの母親がオボロをお使いに行かせなかったら、異世界に来ていなかったもしれない。この出来事の根底に不敵に笑い続ける母の姿があると思うと、不思議と納得できるような気がする。それほど破天荒な母親だったのだ。
腕を組んで天井を見上げ、少しの間だけ思い出の中を彷徨う。部屋の中で考えていた時とは違い、明るく前向きにこの状況を楽しむ。
ボ〜ッとリラックスしながら座っていると、トレーを持ったアリンが厨房から出て来て、
「お待たせしました! サービスで大盛りにしたから、おなかいっぱい食べてくださいね!」
どん!と存在を主張するかのように湯気をあげる料理をテーブルに置く。
アリンの気遣いと香ばしい匂いに、もう胸がいっぱいだ。しかしお腹はまだまだ空腹を訴えているので、早速食べさせてもらおう。
「……ありがとうな、アリン。遠慮なく食べさせてもらおう」
「ふふふ。慌てずにゆっくり食べてくださいね。私は厨房で片付けをしているので、食べ終わったら食器はそのままにしておいてください」
「……わかった。時間をかけて味わって食べさせてもらう」
手を振りながら厨房に戻っていくアリンを見送り、待ちに待った晩御飯をいただくとしよう。
「いただきます」
日本人が誰であろうとする挨拶。これをしないと美味しく食べられない気がするんだよね。
「……冗談抜きに旨そうだな。……しかし、原材料が分からないのは少し気になる」
人型の豚──オークを丸焼きにして食べる世界だ。目の前のシチューの肉が生きている時、どんな姿をしているのか想像するとS〇N値がごりごりけずれる。まぁ、これからずっと食べていくことになるからな。いい加減覚悟を決めよう。
「……まずは、シチューから頂こう」
フォークを取り、深皿に山盛りになったシチューに手を伸ばす。そして震える手で肉を掬い上げて口に運ぶと、
「──うまい」
蕩けるように肉が口の中で消え、旨味が泉のように湧き出した。
何これ! あり得ないほどに美味いぞ! ブロック状に切られた大振りな肉は、ほろほろと柔らかく、完璧な火の通し方だ。他の人参っぽい野菜やジャガイモもどきも、よく煮込まれていて文句なしの味付けだ。
しかもシチューにつけながら食べると、あの微妙だった黒パンがご馳走に変わったぞ! 濃厚なシチューでヒタヒタにした黒パンで、野菜や肉をかき込んでいく。アリンが大盛りにしてくれたのにもかかわらず、五分とかからずに完食してしまった。……安らぎ亭、恐るべし。
「……ごちそうさまでした」
カタン。と相棒と化したスプーンをテーブルに置き、しっかり手を合わせて呟く。美味しいものを食べてら、それ相応の礼儀を持って挨拶しなければ、作った人にも食材にも失礼なのだ! ここは日本人として、貫かなくちゃいけないことだろう。ビィーバジャパニーズ!
「あっという間に食べちゃいましたね。それほど美味しかったですか?」
感嘆のため息を零し、口の中に残る旨味の余韻に浸っていると声がかけられた。
……ちなみに、聞き覚えは無い。
「……われを忘れるほどには美味かったが、あんたは誰だ?」
「あ!! すみません、まだ自己紹介をしてなかったですね。私はこの宿の娘で、アリンの姉のマルテと申します。アリンが楽しそうに話しているのを見て、ついつい声をかけてしまいました」
苦笑いしながら話すマルテ。確かに灰桜色の髪はアリンと同じで、彼女達の血の繋がりを感じさせる。マルテは元気一杯のアリンとは対照的に、落ち着いたお姉さんっといた感じだ。実際年齢は高校生くらいだし、ずいぶんしっかりしているように見える。
……アリンも成長したらこうなるのかな。2人のお母さんも胸は大きかったし、マルても平均以上にあるだろう。将来が楽しみだ。
「……俺はオボロだ。今日なったばかりだが、一応冒険者をしている。この宿には1週間おせわになる予定だ」
「オボロさんですね、よろしくお願いします。アリンがまた話しかけてくるかもしれませんが、できれば仲良くしてあげてください」
「……アリンと話すのは嫌では無い。できるなら仲良くしよう」
あんな可愛い子と話せるのは、俺的にもご褒美です! むしろ俺から話しかけたいくらいだ。
「ふふ。そうですか、それは良かったです。オボロさんも優しそうな方ですし、安心してアリンを任せられそうです」
……なるほど。妹が黒ずくめの知らない男と一緒にいるから、心配だったんだな。それで俺の人となりを確認しに来たと。優しいお姉ちゃんだなぁ〜。まさに姉の鏡!
「……マルテに任されるのなら、おかしな事は出来ないな。できる限り配慮はするさ」
「──っぷ。意外と面白い方なんですね。初めて見た時は、もっと怖い人かと思っていました」
そりゃ〜この格好だからな。不審者にしか見えないだろう。
楽しそうにコロコロ笑うマルテに、そう思われていたと想像すると──ヘコんだ。
「……まぁ、この黒ずくめの姿ならしょうがない。俺でも近づきたいとは思わないからな」
街で遭遇したら、目線をそらすだろう。関わったらやばそうなオーラがプンプンするだろうし。
「え〜っと、どうしてその格好をしているのかを聞いてもいいですか? 不躾だとは思うのですが、やっぱり気になっちゃって……」
「……別に問題ないぞ。大した理由なんてないからな」
「──そ、そうなんですか! てっきり深い事情があるのかと……」
愛らしい目を限界まで開いて驚くマルテ。いや、そこまで過剰反応されるとは、全く思わなかったわ。
「……これを着ているのは、ただ性能が良いからだ。それに、俺の戦い方に合ってるしな」
「なるほど。戦闘に関する理由だったんですね。じゃあ、フードを被っているのもそれに関係があるんですね」
「……このフードには、暗視と対閃光防御がついてる。それにこの装備は、全身を覆うことで効果を発揮するんだ。だからなるべく外さないようにしてる」
実際その通りなんだよねー。この【冥府の羽衣】は、すべてが揃うことで意味を成す【古代の秘宝】。その中でも暗殺することに特化した、アサシン専用の装備だ。
身につけたものはどんな異常状態も効かず、あらゆる環境で適応できるようになる。水中だろうがマグマの中だろうが、平気で活動し呼吸ができる。さらに言えば、影の中にすら入ることのできる優れものなのだ!
ターゲットがどんな場所にいようが忍び込み、確実に暗殺するために作られた装備。そのため、恐ろしく軽いのに、あり得ないほどの防御力を有している。さらに身軽にするために、暗器を魔力で自動生成する機能があるのだ。シグルム戦で使っていた十六夜も、【冥府の羽衣】の能力で創り出したものだったりする。
……まだまだあるんだけど、マルテさんに話すわけにはいかないよね〜。
「すごく高性能なんですね。ビックリしちゃいました! それならフードを外すわけにはいきませんね」
「……まっ、そういう事だから、あまり気にしないでくれ」
「わかりました。わざわざ話してくれてありがとうございます! 私は片付けがあるので、そろそろ失礼させてもらいますね」
「……頑張れよ。俺は部屋に戻るとするよ」
ガチャガチャと食器を片付けてくれるマルテと別れ、寝るために部屋に戻る。腹一杯食べたせいか、眠くてしょうがない。さっさと寝るとしよう。
「……お疲れ様、俺。明日も頑張れ」
体にのしかかるような睡魔に身を任せて、ベッドに倒れこむ。するとすぐに意識が沈んでいき、ぷつん。と途切れた。
気づくと週間ユニークユーザーが470人に!! 少ないと思う方も思う方もいるかもしれませんが、私的にはすごくテンションが上がっています!! この調子で呼んでくれる人が増えると良いな、と思っています!