表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツンデレ系アサシン、異世界にてパティシエを目指す   作者: こたつ猫
第一章 ツンデレ系アサシン、異世界転移したそうですよ
1/12

プロローグ

連載初投稿作品です!

皆様に楽しんで貰えたら幸いですm(__)m

 




 照りつける夏の日差しのなか、舗装されていない田舎道を歩く人影があった。


 俺───望月 朧は、山梨県にある祖父の家に1人で向かっている。


 周りは木々が穏やかに風に揺られ、すぐ側には清らかな川が流れている。こんな自然以外なにもない場所に、学生にとって貴重な夏休みを使って来ている理由は、2日前へと遡る───



「朧~。明後日までに、山梨にあるお父さん家に行ってくれない?お父さんが明後日から入院するらしいんだけど、今お母さんが旅行に行ってて、お父さん1人みたいなのよ。だから手伝いに行ってくれない?」




 冷房の効いている部屋で寛いでいると、台所にいた母親が話しかけてきた。


 …このテンションでいるときは、大概ロクでもないことをしでかすんだよなぁ…


 案の定、何かを俺に押し付ける気だったらしく、わざとらしい猫なで声を出している。


 このまま引き受けたら、大切な夏休みを棒に振りそうだ。ここは、毅然とした態度で行こう。




「…なんで俺が行かなきゃ行けないんだ。自分で行ってこいよ」


「んまぁ~、何て冷たい子なのかしらね~。おじいちゃんが心配じゃないの?それにお母さんが、めんどくさがりなのを知っての発言よね?私がそんな事をするわけないじゃない!

 ───だから代わりに朧が行って手伝ってあげて?じゃないとおじいちゃんが死んじゃうかもよ?」




 …自分の父親が入院するっていうのに、なんて薄情な娘なんだよ。おじいちゃんが不憫すぎる。


 ここは断っておきたいが、本当にじいちゃんが死んだら寝覚めが悪いな。はぁ。行くしかないか。




「…。分かったよ、行けばいいんだろ! まったく、よくそんなんで結婚できたな…」


「うふふ。それは母さんがかわいいからよ~。そんなことより、速くいく準備をしなさい。それと10万円あげるから、お父さんにお見舞い買っていってあげてね」




  そうぶりっこポーズを取りながら、ウインクを決める母にため息が出る。今年で40になるが、身内から見ても高校生といっていいほど若く美しかった。


 ───腰まで届く緩くウェーブのかかった茶髪。顔は童顔で身長も低いが、出るところは出ている。いわゆるロリ巨乳だった。


  そんな母の血を継いでいる朧も、身長は160㎝位で童顔である。髪も肩にかかるくらい長いため、19になった今でも女子に間違われることがある程だ。


 さらに目つきが鋭く口調も少し荒っぽいが、趣味がお菓子作りでツンデレなところがあるので、一部の危ない趣味の男子に人気があったりする。


 …本人は不本意であるが、男子に告白すらされたのだ。


 ───おぞましいことを思い出した。精神衛生上よろしくないな。早く忘れよう。



  そして母が簡単に10万円出せるのは、彼女が株で儲かっているからである。しかも金を稼ぐ理由が、家事をしないために家事委託サービスの料金を支払うためだったりする。




「お見舞いって言ったってな、俺は俺はじいちゃんの好みなんて知らんぞ!」


「お父さんは甘いものが好きだから、お菓子を買うか朧が作ればいいのよ~」


「分かったよ、そうすることにする。帰ってきたら報酬を貰うからな!」


「はいはい、了解よ~。だからうだうだ言ってないで、さっさと行ってこい!」


 ───そう半ば追い出されるように家を出て、現在に至る。




「はぁ、どんだけ田舎なんだよここ。駅から一時間歩いているけど、ほとんど人すら見かけねーよ」




  愚痴りながらも祖父へのお見舞いのお菓子と、その材料を担いで歩く。


  しかし容赦なく襲いかかる暑さに、尋常ではない量の汗が流れる。服もベットリと体に張り付き、てで首もとを扇いでも全く改善されない。


 …暑い。全てを忘れて、家に帰りたくなるほど暑い。


 東京もなんだかんだ言って暑いが、盆地の蒸し蒸しとした熱気は、また別の辛さがあるな。冗談じゃなくて、熱中症になりそうだ。




「いい加減この変わらない風景も飽きたし、速くじいちゃん家に行きたい…」




  思わず弱音が零れるほど疲れがたまっていたので、川で涼んで行くことにする。


 先ほどから気になっていたのだが、とうとう限界だ。少し休まないとやってられん。



 ふらふらとゆるい坂道を下る。 サラサラ。と静かに音をたてて流れる川の前に座り、靴下を脱いで足を川の中に入れた。




「ふぅ~、生き返るわ~。こんだけ暑いのに歩き続けるのは、苦行過ぎるっつーの!」




  悪態をつきながらも、都会ではあり得ないほど澄みきった川を見つめる。


 ───綺麗なもんだな。近所の川とは大違いだ。


 サラサラと水が流れる音だけが聞こえる。こういったゆっくりとした時間も、暑さを忘れられて気持ちいいな。これだけでも、山梨に来た甲斐があるぜ。


 バシャバシャ。ひんやりと冷たい水を蹴り上げ、ボンヤリと水面を見つめる。




「…随分と癒されたなぁ。さっきまでのささくれた気持ちが嘘のようだ」




 照りつく太陽の光を、清らかな清流が優しく受け止め、キラキラと反射することで調和していた。


 光の燐光が踊るように水面を滑り、不意に朧を照らした。




「うおっ! 眩しいな!」




 キラッと光る水面を見たせいか、目がしばしばする。


 …なんか裏切られた気分だな。


 微妙な気分で、仕返しとばかりに水面を睨みつける。せっかく和んでいたのに、規制を削がれた気分だな。


 …はぁ。結構時間が経ったし、そろそろ行くか。まだ爺ちゃんの家まで距離があるからな。


 モヤモヤした気持ちのまま、川から上がろうとしたら───




「な、なんだ! 足が動かねぇ…!」




 接着剤でくっつけたように、川底から足が動かなくなっていた。


 ───どういう事だ!こんな透き通った川底で、ヘドロでもあるっていうのか!


 …マジで動かないぞ。両手使っても引き抜けないし、やっぱり川底には何もない。一体どうなってんだ?


 疑問に思いながらも、無理やり動こうと、上半身の勢いをつけて思いっきりジャンプしようとして───




「───なっ!体が沈む!?」




 ズボォ!足が川底に吸い込まれ、感覚がなくなってしまった。


 ───どういう事だ!何が起こっている!?


 混乱する頭で良い考えが浮かばず、がむしゃらに動いてなんとか抜け出そうとする。


 しかし朧の必死な抵抗も虚しく、ズブズブと全身を飲み込まれ意識を失ってしまった




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ