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第4話 子供な私 




目に飛び込んできたもの、それは大きな石造りの建物だった。

なんて神秘的な建物なんだろう。

首を正面に固定したままでは、一目で入りきらないほどの大きさ。

大パノラマレンズの(まなこ)を仮に持ってたとしてもムリだろう。


その建物の手前には、これまた巨大な噴水。

地面には、石造りの建物と巨大噴水を結びつける幅広い石畳がはるか彼方に続く。


さらに石畳の両脇と石造りの建造物前、噴水の周りには等間隔に松明が灯されており、おかげで月明かりのみに頼らずとも、夜目がきく。



「なんじゃこら・・・」私は思わずつぶやいた。



「これ。若い娘がそのような言葉遣いをするでない」とジークが私をたしなめた。



ん?・・・今、なんて言った?若い!?

わっ!私はおばあちゃんではなかったのだ!


勢いに任せて私は聞いた。

「ジーク!私っていくつぐらいに見える?」


「なんだそれは。そなた私を誘っているのか。あいにく私は、子供相手では食指が動かぬ」


 

更にジークは、ため息を吐きながら

「しかもいつの間にやら、私の名を呼び捨てに・・・まぁよいわ」と呆れたようにつぶやいた。


こ、子供?私って子供だったの??

な〜んだ。

それなら別に子供扱いされても怒る必要はなかったのだ。

しっかし、子供相手に食指が動かないとはどういう意味だ!!

このあどけなさ全開の私に、なんて話をするのだっ!

私はジークの後半のつぶやきは無視して、睨んでやった。



「〜〜。その上目遣いは止めよ」



ジークは私の目を、彼のその大きな手のひらで覆い隠した。


「上目遣いって何よ!ジークがいやらしい言い方をするから、睨んでんでしょ!」

「わかった、わかった」とジークは、私の目を覆っていた手のひらを今度は私の頭に置いて、宥めるようにヨシヨシとなでた。

・・なんかその子供扱い、腹立たしいのよね・・・


ムッとしながらも、まぁ子供なんだし仕方ないかと諦めた。




「―――さまぁぁっ!!」




誰かの名前らしきを叫びながら、三人の男がバタバタと走り寄ってきた。


なんと三人とも武器を持っているではないか!先頭を走る男は帯刀にマント姿。

後方の二人は特にヒドい。

全身鎧の上に槍のような長い武器、もちろん帯刀、そして彼らもマントをなびかせ走って来る。

更に三人とも手に松明を持ち、鎧姿の二人などは走る度にガチャガチャいってうるさい。


私はその異様な光景に、二、三歩退いた。

しかし、となりにいたジークが、それ以上私が怯えて下がらなくてもいいよう、肩を抱いてくれた。


三人ともジークの近くまで来ると片膝を付き、(こうべ)を垂れながら、そして先頭のリーダー格の男が声を発した。



「お探しいたしました!どちらにおいでだったのですかっ!!

あれほど単独行動はお止め下さいと申し上げましたのにっ!!へ―――」




「わかった、わかった。すまぬ、グラント」




リーダー格の男の言葉を遮るかのように、ジークは片手をあげて謝った。


ジークが慌てて遮ったのを怪訝に思ったグラントとやらは、そこで初めて私の存在に気付いたようだった。

そしてグラントが、ジークを見上げてハッとしたので、それを不思議に思った私が、今度はジークを見上げた。

ジークは人差し指を立てて口元に持っていき、小さい子にするような「シー」というジェスチャーをしていた。


私の視線を感じたジークは、動じるわけでもなく、「シー」の動作を解いて私に笑顔を向けた。


私は思わずフリーズした。

・・・その笑顔は心臓に悪いよ?ジーク。



何だか、ジークに誤魔化された感を拭いきれなかったが、私はジークのその笑顔に免じて「シー」を見なかったことにした。



「このご令嬢はどちらの?」と気を取り直したグラントが、手のひらを上に向けて、私を指した。


「私のちょっとした知り合いだ、グラント。名をフィオナ嬢という。

彼女は少々事情があってな、行く当てがないのだ。しばらくここに置いてやってくれ」と、とても短く説明した。


私は、そしてグラントもだろう、びっくりした!

当たり前だ!さっき森から出てきたばかりで、そんな話題はひと言も出なかったのだから!

更にグラントに至っては、こんなどこの馬の骨ともわからぬ小娘の世話をさせられるのは、きっと嫌だろう・・・自分で言ってて腹立つけど。


しかしグラントは、私の予想を見事に裏切り、「かしこまりました」とジークに向かってお辞儀した。



大仰な身振りで満足そうに頷いたジークは、私に向かって

「もうすぐ夜が明ける。ゆるりと寝所で眠るがよい。目が覚めたら私とともに朝食でもどうかな?」とからかい半分、目をのぞき込むように言った。


私は、そんなジークに圧倒され、思わず「はぁ」と気のない返事をした。


しかし、まだひと言もお礼を言っていないことに気がついた私は、

「ジーク!いろいろありがとう!!」と首にぶら下がって頭を下げさせ、頬に子供らしくチュッとキスをした。


ジークは一瞬動きを止めたが、すぐに再始動。

ぎこちなく笑って石造りの建物の中に向かった。


残されたグラントと二人の部下は、目と口を最大限に開ききって、アングリと驚いたような顔をした。

どのポイントに驚いているのかわからなかったが、疲れた体には勝てず


「すいませんけど、早速お部屋まで案内してくれませんか?私すごく眠くって・・・ふぁ〜」


と最後はあくび付でグッタリ度合いをアピールした。







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