表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

第1話 記憶喪失の女






気がつけば私はそこに居た。


ここはどこだろう・・・?

鬱蒼とした木立。木には蔦が幾重にも絡まり、上を見上げても木の葉が生い茂って空がほとんど見えない。

が、かろうじて自分に降り注ぐ木漏れ日から、空は晴れて夜でないことがわかった。

足下を見ると、雑草がたくさん生えてる割には歩きやすい。

これは獣道だろうか?人が一人歩くぐらいの幅を残して草が膝丈に生えている。

気温は暑くもなく寒くもなく。

私は今、長袖を着ているが気候はちょうど良い。

耳をすましても鳥の声と自分の足音だけしか聞こえない。

はて?私はどこへ行くつもりでこんなところを歩いているのだろう・・・?




それに・・・私は誰・・・?




 

自分が誰だかわからないことにようやく気付いた私は、段々と不安になってきた。

そしてこの不安な状況を誰かに何とかして欲しくて、私の最初の目標が決まった。

まずは誰でもいい、人を探すことだ。

とてつもなく人としゃべりたい。

この不安を早く誰かにぬぐい取って欲しい。

私はがむしゃらに森の中を歩き出した。



最初は歩きやすいと思っていた道も、自分にとってはそう簡単ではなかったようだ。

息が上がる。

多分、日頃からあまり運動をしないような生活を送っていたのだろう。

自分の足を見ても、決してこんな道を歩くような靴でないことに気付いた。

そして膝丈のスカート。

私は疲れているのに、不意におかしくなって独りでに笑った。


(クククッ・・・私って自分の名前も思い出せないのに、身につけてるものの名前は覚えてるんだ。

‘靴’だって?‘スカート’だって?フフ・・・)



どれくらいの時間歩いたのだろう。

行けども行けども森から出ない。

それとも、自分では森の外に向かって歩いてるつもりでも、実際は同じところをぐるぐると回っているだけなのかもしれない。

・・・お腹が空いてきた。のども渇いてきた。

かろうじて足を前にやり歩を進めるが、何も考えられなくなってきた。

あぁ、頭がぼうっとする。

普通、人が心の中で助けを求めるのは、やっぱり神様だろうか?

いやいや、身近なところでやっぱり親だろう。

しかし私の両親は健在なのだろうか?

兄弟姉妹はいるのだろうか?

・・・とにかく誰でもいい、助けて。




そして私の意識が途切れた―――





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ