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黒いマフラーと家族

 ご主人が帰ってきました。うきうきしたようすなのでミイニャンは二回跳ねました。

「分かるんだねえ」

「ミイニャンはなんでも分かってるんだよ」

 夕方に会った男も一緒です。ミイニャンは男に飛びついていっぱいすりすりしました。

「あーあ、毛まみれだよう。毛まみれ毛まみれ。」

 男の洋服のお腹や胸のあたりにはミイニャンの白と黒の抜け毛がこびりつきました。この日、ミイニャンと男は一緒にお風呂に入りました。男同士で話をするのです。ミイニャンは男の服を毛まみれにしない約束をしました。男は、ミイニャンのご主人をいつも元気にする約束をしました。男が歌うと風呂場はまるで違った雰囲気になるのでした。ミイニャンは沢山の拍手を想像しました。男もそれを感じ取っているようでした。

 買ってきたケーキとチキンを二人は食べていました。ミイニャンも今日のご飯は鶏肉でした。牛乳を温めてもらいます。

 二人は仲良く台所に立って、野菜や果物をミキサーに入れてジュースを作っています。いつも男が一人で飲んでいるらしいのです。今日からは三人で飲みます。ミイニャンはこれが気に入りました。

 ご主人はもう、編み物をしなくなりました。

 男は時々、ご主人を泣かせます。そんなときミイニャンは悲しくなってご主人と一緒に鳴きました。あとで男は歌を唄います。男はミイニャンが遊びあきた黒いやつを手洗いしていつも首に巻いていました。それを見てご主人は泣き止むのでした。

 また冬が来たとき、ミイニャンには妹がいました。男は日本中で歌を唄い、時々うちに帰ってきます。だから妹を守るのはミイニャンの仕事なのです。ご主人がミイニャンの妹におっぱいを飲ませるのをミイニャンは見守ります。妹は人間の赤ちゃん。今はミイニャンのように四つ足で歩きますが、いつかはご主人や男のように二本の足で歩くのでしょう。

 ミイニャンは黒い雪のことを忘れていますが、いまも時々は黒い雪が降っているのです。ミイニャンの大事なご主人が悲しいとき、黒い雪は降ってくるのですが、それには妹が気が付いたり、男が気が付いたりしてご主人を守ってくれようとします。

 黒い雪は悲しみの雪です。黒くてあたたかい。もしミイニャンが黒い雪のことを覚えていたら、男が首に巻いているご主人が編んだ黒いマフラーのようなものだと思うことでしょう。



おわり





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