竹ですか
私たちは山道を急いで駆け上って行った。
…
…
倒された魔物が折り重なるように小山になっている。
走りにくい。
っていうか。
「何か、魔物多くない?満月にしてもさあ」
「俺のせいかもしれない」
「ん?」
「月の花には薬効成分があって、傷薬になったり薬酒になったりするんだ」
「はあ」
「貴重な花だから、濫獲してほしくなくて。月の花が咲く夜に、魔物が活性化する魔術をかけておいた。命をかけてまでは欲しいものじゃないだろ?威嚇だよ。こんなに魔物がいるなら、月の花はやめておこうってなるように」
ルークが、倒れた魔物をひょいっと飛び越しながら、満足そうな顔で話している。
えっと。
「ルーク、その魔術をかけたこと、いつ思い出したの?」
「ん?バンデュラが勝負を持ちかけてきた時」
やっぱり、その時まで忘れてたようです。
ギョエー!ピキー!クエー!
魔物の声が、さっきより近い。
さすがのバンデュラも、魔物の数が多すぎてスピードが落ちているみたい。
お気の毒。
急ぎ足の私たちに、次の罠が降りかかったのはその直後。
「きゃああああ!(ベタな)落とし穴!」
ルークと私が同時に足を踏み出した先の道が、メキメキと崩れ落ちた!
落ちてたまるか!
バサッ
私は羽を開いた。
小悪魔です。飛べますから。
は!ルークは?
「ルーク!?」
「おーい、こっちこっち」
落とし穴の下から声がした。
私は、パタパタ飛びながら落とし穴を見下ろした。
竹やり。
何たる古典的落とし穴。
ナッツ、衝撃。
穴の底から竹やりが上を向いて突き出している。
そして、ルークだけど、開脚して壁に足を突っ張って、突き出た竹やりを一本つかんで、器用に体を支えてる。
なんつー格好だ。
「ナッツ、何とかして」
…
「飛行術、禁止じゃなかったっけ」
「ナッツのは飛行術なのか?」
「術じゃないよ。えっと、特技?」
「ただの飛行だろ?ほら、早く」
…
やるよ。
やるけどさ。
「重っ!」
「がんばれ!ナッツ!」
ひー!
ルークと一緒に竹やりの中に落ちるのだけはイヤ!
ナッツ、人を持って飛ぶの初めてだから、きっつい!
ぜえぜえ…
疲れた。
すっげー、疲れた。
バンデュラ、くっだらねえ罠を次から次へと。
覚悟しとけ。