お花つみだって(トイレ的な意味じゃない方)
「北のガリガリ山の中腹に、年に数回だけ咲く貴重な花がある。知っているか?」
「月の花だ」
「その通り。勝負は簡単。その月の花を先に取った方が勝ちだ」
いかつい山賊が、お花つみで勝負を挑んできたよ。
…
…
ナッツ、余計なお世話かも知れないけど言っとこう。
「バンデュラ、あんた、そんな勝負して、また仲間からバカにされるんじゃないの?」
「ふん。浅はかだな小娘。今時、この程度のことで決闘などする方が笑われる」
「小娘じゃねえよ。ナッツだよ。それにしても、そんなもんなの?」
「無駄に派手な動きをして、警備隊にやる気を出されでもしたら、山賊もやりにくい。それに、月の花は、秘められた栄光という花言葉を持ち、古来から勝負事に持ち出されることが多い花なのだ」
縁起物なのね。
ルークが補足説明をしてくれた。
「満月の夜、それも真夜中のほんの一時しか咲かない花だ。咲いている時に摘み取ると、しばらくその美しい姿を保つ。でも、自然のままだと不思議なことに、すぐに花は散ってしまう」
へー。
おっと、バンデュラがイラついてる。
普通の話じゃん。
私とルークが話すたびにイラつくのやめてくれ。
バンデュラが勝負に話を戻した。
「今宵は満月。月の花が咲く日だ。真夜中の一刻前にガリガリ山の登り口に来い。それから同時に出発し、月の花を先に手に入れた方が勝ち。どうだ?」
「いいよ」
「言っておくが、飛行術は禁止だ。さすがに卑怯だからな」
「チッ」
「てめえ。やるつもりだったな」
「あははは」
「あとは、俺に対して魔術を仕掛けるのもなしだ。だが、魔物が出るから、そいつらには魔術を使ってかまわない。俺も、お前には刃を向けない」
「それでいいよ」
バンデュラは、満足そうにニヤリと笑った。
「せいぜい、準備してくるがいい!さらばだ!」
ドタドタドタドタドタドタ
汚い足音を残し、バンデュラは帰って行った。
「さて、ポーカーの続きしようか」
ルークはのんきにそう言った。
「何言ってんの!今夜の準備しようよ!魔物対策とかバンデュラ対策とか、いろいろあるでしょ!」
ナッツが代わりに焦っちゃう。
勝負って、絶対に負けたくないよね!?
「大丈夫、大丈夫」
ルークは、超日常モード。
ダメだ。この人、やる気ない。
私がバンデュラなら、絶対に正々堂々とは戦わない。
たっぷり罠を仕掛けて待ち伏せるけどな。