初めてだから
「いやー!ルーク、ひどい!」
「あははは!参ったか!」
こんにちは。黒髪天然パーマのショートカットがキュートな、涙目の小悪魔ナッツです。
魔術師ルークに使役され、3日が経ちました。
どれほどヒドい目にあっているか、魔界のみんなが心配していることでしょう。
「ほらほら、フルハウス!」
「どーせ、ワンペアだもん!」
はい。
ポーカーです。
トランプですが何か?
「ちっくしょう!もう一回!」
「ナッツは本当に負けず嫌いだな。よし、かかってこい!」
負けっぱなしだよ。ひどくない?
でも、しょうがないよね。私、トランプなんて知らなかったし。
面白いね、トランプ。
ルークに使役されて、一緒に暮らすことになったわけだけど。(←前回のあらすじ、これにてすべて説明済み)
私は最初、すごく不安だったの。
だって、生まれて初めてのことだから。
魔術師に使役された(小)悪魔は、どんな目に合うんだろう。
こき使われて、ヨレヨレになって、最後ははかなく散るのかな…
それよりも、ナッツなんてかなり可愛いから、アンナコトやコンナコトも要求されたらどうしよう…
あるね。
ナッツくらい可愛いかったら、そういうことありえるね。
ああ、どうしよう、どうしよう。
「ナッツ、ご飯だよ」
リビングで頭ぐるぐるしてる私に、ルークが声をかけてきた。
エプロンしてお玉片手にという姿で。
…
私の頭のぐるぐるが止まった。
止まらざるを得なかった。
「あったかいうちに食べよう」
ダイニングテーブルに連れていかれた。
何、このごちそう。
テーブルからあふれそうなほど、料理が並んでいた。
「何が好きか分かんないから、作り過ぎた」
エプロン姿のルークが、はにかみ笑いをした。
ヤバい。
キュンときた。
トカゲの丸焼きから、野菜スープまで、魔物や人が好きそうな食べ物が、ズラッと。
全部、美味しかった!
好き嫌いしないで、いただきましたよ。
ご飯の後も、ルークはその調子でね。
「ナッツ、シャワー先に浴びる?」
「寝室使っていいよ。俺はカウチでいつも寝てるから」
「おはよう。よく眠れた?」
「今日は、サンドイッチ作るから、森の草原に行こう」
「トランプ知ってる?楽しいから、一緒にやろう」
…
…
何これ。
めっちゃ居心地いいんですけど。
あのー、ルーク?使役された身でアレなのですが、聞いていい?何、考えてるの?
ルークはさらさらの金髪をちょっぴり手で乱しながら、恥ずかしそうに答えた。
「俺、初めてだからさ。使役した(小)悪魔にどうするのが普通なのか、分かんないんだ」
ルークは私に、優しい濃紺の瞳を向けた。
「もし、何か足りないこととか、こうしてほしいとかあったら、遠慮なく言ってよ」
ドキドキドキドキドキドキドキドキ
ちょっと。
どーしてくれんの、この胸の高鳴り。
いや、ナッツもね、使役されるの初めてだから、普通がどうなのか知りませんけど。
ルーク、小悪魔の扱い方について確実に方向性間違ってる。
いや、このままで、私的には問題ないから、言わないけどね。